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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】魔法少女ほむら☆マギカ L.o.S その5
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2014.09.27
01表紙 (2)
まどかではなく、さやかがアルティメットになっていたらという世界

※次回以降も修正しだい、随時アップロード予定

 美樹さやかの言葉通り――同じ場所に魔獣は現れなかった。けれど、それは同じ場所というだけで、他の街に現れないという意味じゃない。だから、巴マミはその街に向かった。それを止める理由が私にはどこにもなかった。
 この場所にいるのだって、あの時『美樹さやかと遭遇した場所』というたったそれだけの理由……そもそも美樹さやかは、『ウルドの声』が現れる場所なんて一言も話してない。私が聞いたのは、『来週末に現れる』という幻聴のような言葉だけ。
 対策だけは、何度も思考した……だから、大丈夫だと自分に言い聞かせてみた。でも不安は消えてくれない。面に出ないだけで、今も渦を巻き続けている。
 ウルドの声が現れる今日――この場所には、私とまどか、そして杏子しかいない。いくら考えても現実は変わってくれない。
「嫌な天気になってきやがったな」
 杏子があくび混じりの声で言ってきた。彼女の行動時間は基本的に夜で、夕方まで基本的に寝ていると、巴マミに聞いたことがある。だらけ過ぎじゃないかと思う。
 でも、私にそんなことをいえる資格なんてあるのだろうか?
 私はこんな場所に二人も連れてきて良かったのだろうか?
 他の場所の巡回に行かせるべきだったんじゃないか?
 ただの幻想に巻き込んでいるだけじゃないのか?
 ……ううん、違う。美樹さやかを確かにまどかも見たし、公園のベンチの上にだってその温もりがあった。だから全部が全部いなかったわけじゃ……ないんだ。
 私は不安で濁る思考を巡らせながら、
「そう……だね」
 言葉を返す。
「……」
 確かに杏子がいう空は、薄暗く今にも雨が降りそうだった。時間的にはまだ午後二時ぐらいだというのに。
「なぁ本当に、こんな場所に上級の魔獣が現れるのか?」
 近づいてくる声に振り返れば、杏子がこちらへ歩いてきていた。杏子は私の一メートルくらい前で止まると、反転し歩いてきた道をそのまま戻って行った。そのずっと向こうにはまどかの後ろ姿が見える。
 杏子は両端にいる私と、まどかの間を警戒するために往復していた。臨機応変に動ける彼女にはそうしてもらう以外にいい戦術が浮かばなかった。
「そのはずよ。でも、それを明示した少女はいないけど」
 少しだけ身体を乗り出して地上の方を見下ろしても、何も見つからない。
「はぁ……」
 避難勧告が発令されているせいか、車も人も見えてこない。日中だから、電灯もなく薄気味悪い感じがする……嫌な空気。ワルプルギスの夜が襲って来たあの空気に、よく似ている。
「大丈夫、さやかちゃんは必ず来るよ。絶対にね」
 後ろを振り返るとまどかがこちらを見つめて笑っていた。いつから見ていたのかわからないけど、その顔は信じきっている顔だった。
 まどかは美樹さやかと幼馴染だったからだろうけど、私は信じきれない。
「雨が降らなければいいけど」
 まどかも空を見上げて、杏子と同じことを言ってくる。憂鬱な気分はこの天気のせいなのかもしれないと、私は前を向いて意識を集中し直した。
「……そうね」
 雨が降ってしまえば、準備してきた銃が役に立たなくなる。魔法空間に存在し続ければ、湿気で乾いたり、水気で濡れたりすることはないけれど。
 目を閉じて魔獣が現れた時の戦闘イメージを頭のなかで描いた瞬間、
「しかっしさ、本当にさ!」
 杏子の声と空を劈く何かの音が聞こえた。後ろを振り返えれば、
「ま、魔獣!?」
 杏子の槍が空にいる魔獣の頭を貫いていた。それに加えて、杏子の後ろから四体の魔獣が触手のような手を伸ばそうとしているのが見えた。
 杏子は、まどかと私が魔獣に応戦するよりも早く、
「っあ!」
 魔獣を槍で無理押し返すと、吹き飛ばした。そして跳躍すると、頭上から槍を魔獣たちへ連続で突きつけた。
「ふーん。魔獣が集まってきやがったな。どうやらほむらが言ってた話は、嘘じゃなさそうだな!」
 魔獣の消滅を見せつけながら、杏子が笑みをこぼした。
 上級の魔獣は、下級の魔獣をエサとして吸収すると魔法少女の中で伝わっている。
 だから、これから上級の魔獣が現れる可能性はある。
「えぇ、そのようね……」
 あるだけで、必ずとはいえない。
「にしても、すっげぇ数だな。やっぱマミのやつがこっちに残ったほうが良かったんじゃねぇか?」
 杏子が言うようにいつの間にか魔獣が私たちを包囲していた。
 ステルス型の魔獣……?
 でも、それにしては出現があまりにも早過ぎるし、数も膨大過ぎる……まるでここから生まれたみたい。
「……?」
 今のこの感覚が正しいなら、上級の魔獣が現れる場所はここに間違いない。
 幻聴を二人に押し付けてなかったと少し安心したこともあり、
「でも、残りたいといったのはあなただったような気がするわよ、杏子」
 憎まれ口のような言葉が思わず漏れてしまった。
「まぁ、そうなんだけどな。どうせあっちもこんな感じなんだろうしさ!」
 杏子が槍を構え直した余波が、風として魔獣へ伝わっていった。
「あとは上級の魔獣を待つだけだね!」
 出し惜しみは必要ないから、用意していた銃を魔法で取り出した。
「――ほむらちゃん、それって?」
 まどかの魔法の矢が杏子のリーチ外の魔獣を撃ち抜いていく。
「お前、もう普通の銃は使えなくなったんじゃないか?」
 杏子が怒鳴り声をあげながら魔獣を貫いている。そんな声なのに、どこか安心できるような暖かさを感じた。きっと心配してくれているからだろう。
 二人共、こちらに意識を集中しながら、魔獣を次々に蹴散らしている。いつも召喚しているリボルバーじゃないから、余計に気になるんだろう。
 二人の大事な意識をこちらに散らしてはいけないと、
「この銃が『普通の銃』なら……ね!」
 言葉と同時に狙いを決め、その引き金を引いた。発射した音が周囲に木霊する。私が用意した銃はきちんと動作した。
 そして火薬の匂いと、プラスチック製の嫌な匂いがしてきた。
「……よし」
 改造エアガンの威力は一目瞭然だった。着弾した魔獣が穿かれていた。
 ただ銃自体は想像通りに、銃口が耐え切れずに破裂している。所詮エアガンを改造したに過ぎないから、本物と同じようにはいかないものね。撃てるだけマシと思ったほうがいいかもしれない。
「へぇなるほどな、自分で作ったのか?」
 発射したのは、自作した火縄銃の弾丸。この威力なら魔獣相手でも、問題なさそう。ただ魔獣の数が数だから、こちらが用意した数が持つかわからない。雨って不安要素もある。
「えぇ、そうよ」
 杏子が魔獣を踏みつけ空を昇っていく。
「でも、これには限りがあるわ」
 そう言って、私は撃って壊れた銃を魔法でしまうと、次の銃を取り出す。
「……ほむらちゃん。もう倒れる心配はないんだね?」
 クイックターンをしながら背後にいた魔獣を貫いたまどかがこちらを振り返った。まどかは杏子が空で戦えるように周辺の敵を牽制しつつ、倒していた。
「まどかは、杏子の周りをお願い。それ以外は私が担当するわ」
 銃が連射できなくても、カバーぐらいはできる。杏子が倒せない魔獣を狙い、余裕があるなら、他の魔獣を倒す。それが今できること。
「うん、お願いね」
 私は飛び上がり、まどかの側へ着地するのと同時に周辺の魔獣を見渡した。
 そこは――かつて美樹さやかが陣取っていた場所だった。

 魔獣が群がりながら絶えず襲いかかってくる。それを私たちは次々に倒していった。
 その繰り返しを数十分続けているとついに、
「雨か……。めんどうだな」
 雨が降り始めた。気温低下、湿度変化。雨が降るには十分だった。
 雨は粒から始まって、天気予報通りのまさに季節外れの台風に変わった。
「そうだね、降ってきちゃったね。台風だったね」
 杏子の声に反応したまどかが笑って答えた。
「……台風」
 この台風を起こしているのはウルドの声なのだろうか?
 一体どんな魔獣なのだろうか? 神の名、そう美樹さやかは言っていた。
「これで終わりか?」
 空にいた最後の魔獣を倒し終えると杏子が屋上へ足をつけた。
「……そのようね」
 魔獣の気配を感じない。姿も見えない。
 私たちは屋上の中心に一旦確認のために合流してみると、二人の表情に疲労の色があるのが見えた。
「魔獣を倒し終えたってわりに……嫌な感じはまだするな」
 魔法少女が使える魔法力には限界がある。使えば使うほど、なくなっていくのは当たり前だった。
「……そうね、私も同感よ」
 見落としがないか、よく見渡してみた。
 ……何か違和感があった。
「消えるのはないんじゃない? ほら、休憩時間みたいな」
 でもそれがいったい何なのか、検討がつかない。見えてもこない。
「はは、そういう考えは相変わらずだな。でもよ、逆に考えてみろよ。この静けさは上級がくる前ってさ。人の心の隙間をついてくるようなもんだろ、あいつらは」
「それはそれで嫌なもんだね」
『あはは』とまどかがにやけた。
 わからない以上は、警戒する以外に対処法がない。
「この間に緊張感を高めていましょう」
 釘を刺すように私は言うと、二人と距離を取り始めた。警戒するなら、三人固まらないほうが効果的だから、屋上の端へと。
 杏子が、
「そうだけどさ――」
 声を上げた瞬間、
「KOROSU,SUBETEWO,WATASHIGAKATERUHAZUDATTANONI」
 奇怪な叫びが地響きのように宙を響きかせた。
「えっ」
 その声の発信源と思われる方を向くと、空中にそいつはいた。浮いていたというべきなのだろうか、立っているようにも見える。
 その姿はまるで人間のようだった。でも、目のようなものはなくて、足に見える部分は刃物のように鋭く、腕に見えているのも同じような物体に見えた。その表面は硬い殻に覆われているようで、昔の武将の鎧にも思えた。
挿絵2

「あれが、上級の魔獣か? 確かウルドの声だっけか」
 杏子が思い出すように唸り声を出した。
 これが……たぶん違和感の正体だったのかもしれない。
 不自然な魔獣の消失、それはある意味現れるための舞台が整ったということ。
「そう」
『上級の魔獣は、下級の魔獣をエサとして吸収する』
 その話が本当なら、今は弱っている可能性が高い。エサとなる下級の魔獣はここにはいない。エネルギー不足と同じ状態だ。
 エネルギーは肉体を動かすために必要な要素で、かけてはならないもの。
 上級の魔獣にもそれは当てはまると考え、
「なら、先制して――」
 引き金を引いた。
「えっ……?」
 だけど、私の意に反して、なぜか銃は不発した。撃鉄部分から白い煙だけが見える。
「bakanano,omaeha,mouowaridakarasokodesindeirebaiinosa」
 ウルドの声は叫び声をあげ、両手を素早く振りかざしてきた。それは突風となって、
「うぅっ!」
 次の瞬間には、私たちを襲ってきていた。体勢を崩した私は、身体を屋上の硬いコンクリートの床に叩きつけられた。
「ぐっ」
 ――迂闊だった。
 私が足手まといなんてことは、最初からわかっていた。こんなおもちゃみたいな武器で戦うなんて愚かな行為だった。神に抗うものが、おもちゃで戦おうだなんていけなかったんだ。
 だから、この状況を招いてしまった。先制の攻撃の機会を逃した。
 私じゃなく――杏子が斬り込むべきだった。
 私じゃなく――まどかが矢を放つべきだった。
 私は何もすべきじゃなかった! 私は……、私は……!
「危ねぇなぁ!」
 杏子の叫び声に振り向くと、ウルドの声の腕に似ているものを槍で弾いて、押し返しているその姿が見えた。
 ゆっくり体勢を整え立ちながら、
「杏子……ごめん――」
 謝りつつ――再びウルドの声の方を振り向くと、
「えっ?」
『それ』が目に入った。
 杏子を襲っていた銀色の刃物、しかも肥大しているそれが近づきつつあった。
 杏子に攻撃した後こちらへと飛ばしてきたのだろうか……それとも同時に攻撃してきたのだろうか。
 わからない……わからない――わからないけど、
「く、うああああ!」
 がむしゃらに銃を投げつけると、すぐに違う銃を魔法で取り出し引き金を引いた。
「っ!」
 これが発射できないかなんて考える時間はない。できなければ、死ぬだけ。
「ほむら!?」「ほむらちゃん!?」
 二人の声が聞こえてくる。二人の魔力の反応も感じるけど――間に合わない!
 結局迷惑をかけてしまった。準備をしたのにこれで、全部無駄にしてしまった。
「お願い……いって!」
 私の感情が通じたのか、弾丸は発射されていた。発射された弾丸が宙に投げ出した銃に当たり新たな爆発を生んだ。
 それと同時に何かの金属音が響いてきた。
「当たった……?」
 私は急いで爆発で空に生まれた煙の中から、それを探した。爆発があの刃物に当たったのならどこからか、飛び出してくるはずだ。
「バカ野郎、ほむら! 横に避けろ! どっちでもいい! はやく!」
「えっ!」
 杏子の怒鳴り声が聞こえた時には、それが私の目の前に映り込んできだ。
 煙を切り裂き、こちらへとまっすぐ落ち続ける刃物の姿が。
 ただ、それは最初よりはいくらか速度が落ちていた。だから、ただ感じるままに身体を必死に動かしていた。攻撃を避けるために、ただ右へ急いだ。
 一歩二歩、三歩と進んでいるはずなのに、現実に思えなかった。スローモーションのある世界に私はいるみたいだった。
「bakanano」
 ウルドの声のかすれた声が、風を切る音が同時に聞こえてきた。
 それは私の動きを封じる一撃、そして落ちたスピードを元に戻す咆哮だった。
「いっ、うう」
 突風の一撃をもろに受け、私は足を取られ真正面に倒れた。受け身を取り、振り返るだけはできたけれど、刃物はすぐそこまで迫っていた。
「うあ、あぁ……」

 ――回避はもう不可能だった。

「――」
 口元が緩んだ。
 私の戦いは終わっている。あの娘が苦しむ世界はない。それなのに、頬に冷たいものが流れているのを感じた。
 ……私の涙だった。
 そのことを知ってしまった瞬間、止められなくなって私は、
「――ごめんね、まどか」
 目を閉じて死を覚悟した。
 ……魔法少女としての死。それは巴マミに聞いたことがあった。
 円環の理に導かれて、新しい世界に行くのだと。なら私もそういう世界に旅立つのだろう……まどかがいない世界。そんな世界に行くのだ。
 後悔がないわけじゃない。むしろ、後悔の方がずっと多い。
 まだ、まどかと結び合っていたい。ずっとずっと触れあっていたい。ずっと話していたい。

 ――あの娘の叫び声と、杏子の怒鳴り声が聞こえてきた。
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