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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ L.o.S その3
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2014.09.07
01表紙 (2)
まどかではなく、さやかがアルティメットになっていたらという世界

※次回以降も修正しだい、随時アップロード予定


 教室に入ると、
「おはよう、暁美さん」
 すぐに声をかけられた。まだ始業開始のチャイムが鳴る約三十分前なのに、既に多くの生徒達がいた。
 ……何かのイベントでも今日あったか記憶を辿ってみても、それらしいのが思い出せない。先週なら、期末テストがあったけれど。
 何にしても挨拶を返さないのは不自然だと思い、
「……おはよう」
 名前も知らない女子生徒に言葉を返し、自分の席へと向かった。
「……」
 いい加減同じクラスの人の名前は覚えないと……。今は昔と違うのだから、
「――というものなのですわ。あら暁美さん、おはようございます」
「……おはよう」
 私の席にはなぜか志筑仁美が腰を下ろしていた。どうやら隣の席の生徒と話すために座っていたみたいだ。
「あっ、暁美さんおはよー」
 その生徒も見覚えがあるだけで、名前が浮かんでこなかった。
 荷物を机の脇にかけ、
「……おはよー」
 少し言葉遣いを真似しつつ教室内を見渡してみたが、
「……」
 まどかを見つけられなかった。荷物は置いてあるから、学校にはいるみたいだけど、どこへいったんだろう?
 仁美が慌てて立とうとしたので、座っていてと目配りした。どうやら私の行動が急かしているのだと、勘違いしたみたいだ。
 教室にまどかがいないなら、ここにいる必要はない。
「あれ、暁美さんどちらに?」
「……ちょっと涼みに」
 そういって足早に教室の外へと出た。
 まどかは――あの場所にいるような気がする。

「……ん!」
 風が吹いているせいなのか、やたら重たい扉を開いて屋上へ出た。
 空は朝起きた時に見たものと変わらない晴天だった。
「……?」
 見渡すよう首を動かそうとした。
「……あっ」
 でも、そんなに動かす必要はなかった。まどかは屋上の中心部にあるベンチに腰掛けていたから。私はゆっくりそのベンチへと近づいて、
「おはよう、まどか」
 声をかけた。
「おはよう、ほむらちゃん」
 まどかはとびきりの笑顔を返してくれた。その笑顔で少し安心した。
「今日は早起きだね」
「起きたくて起きたわけじゃないわ」
 どちらかと言えば眠れなかったという方。
「そう……だよね」
 冷たい言い方になってしまったかもしれない。でも、そうとしか言えない。
「そういえば、さやかちゃんは?」
「美樹さやかは、彼女自身がいっていたように人ではないようね。突然現れては突然消える。ぬらりくらりと消える妖怪みたいね」
「あはは、さやかちゃんは妖怪じゃないよ」
「そうね」
 そう言って、私は美樹さやかと再会した時のことを思い出していた。

「やっぱ、落ち着くもんだね。それが転校生の部屋であっても、人が住んでいる空気がある場所は! 人の温かさってのをさ――」
 笑みをこぼしながら美樹さやかはまるで自分の家のように勝手にくつろぎ始めた。私の部屋の中心に置いてあるテーブルの周りに並べたソファーの一つに座って。
 足は床に届かないのか、ぶらぶらとひっきりなしに動かしている。それを見ながら、美樹さやかの横にまどかは何も言わず座った。そのため私はその正面のソファーへ腰をおろす。
 まどかがとても綺麗な笑顔を美樹さやかへと向けていた。
 その笑顔は私が一番大切にしたい、したかったと思っていたもので、それを他人に向けるのは見たくなかった。
「さやかちゃん、だらしないよ」
 美樹さやかの行動を見ていたまどかがそう言う。美樹さやかはそれで聞き分けよくやめた。顔は少し照れている様子だった。なんとなく苛ついた。だから、
「……それで神さまになったはずのあなたがどうしてここにいるのかしら」
 単刀直入に強く言った。
 苛々する原因は……わかっている。美樹さやかに対する嫉妬と、あの後の行動のせいだ。
 美樹さやかは戦いの後、ただ一度「ここじゃ話せないことだから……」と言って、何も言わず私たちと一緒に私の部屋へやってきた。もとい連れてくる形になった。それは仕方がないこと。

 ――そう仕方がないことだった。

 まどかの家には家族がいるし、美樹さやかの家には既に美樹さやかの部屋、美樹さやかがいたという事実はない。
 だから、私の部屋しか話せる場所がない。
 話を聞くだけなら巴マミの部屋でもいいのだけど、今はその部屋の主である二人がいない。ゆまが聞いたところで美樹さやかの話を理解出来るとは思えない。
 彼女は目の前の少女と比べて、子供らしい子供だから、仕方がないのだ。
 私の部屋に連れてくる以外の選択肢は存在しなかった。
「ほむらちゃん……」
 まどかの笑顔が失われ、悲しみの表情を私に見せてくる。心臓を抉られる思いだった。でも、こうしないと空気を変えれない――そんな感じがした。
 それに……こうする以外の術を私は持っていない。
「あははは、転校生は相変わらず直接的だね? まぁ……だからこそ、まどかとマミさん達にこの街を平気に任せられるよ」
 美樹さやかはお腹を両手で抱えて笑うのを抑えているようだった。無理に笑うのを抑えるくらいなら、普通に笑ってくれた方が楽なのに。
 そのことを言わず、収まるのを待っていたら美樹さやかが、
「うーんと……!」
 声を上げてソファーにゆっくり背をつけ身体を伸ばすと、私を少し睨みつけているつもりなのか目を細めた。
 その目は私を見ておらず、どこか遠くを見ているようにも思えた。
「それで一体何がしたいわけ?」
 私の問いに答えるためか、美樹さやかは半目から目を閉じて唸り始めると、
「――よしっと」
 突如としてソファーの上に立ち上がった。
 立ち上がるとちょうど座っている私の目線の高さと同じぐらいの背丈だった。
 しかし……なぜ美樹さやかはこんなにも幼児化しているのだろうか? 元の姿を忘れているような様子はないように見える。
「うん? さやかちゃんどうかしたの?」
 まどかが首を傾げながらさやかを見上げている。
「どうやってさこれからのことを話そうかと思ったんだけど……何も思いつかなかったからこうする――」
 美樹さやかが右手をいきなり前に突き出すと青い光、
「――ことにしたよ」
 魔法を発動した。
「さ、さやかちゃん」「み、美樹さやか?」
 美樹さやかが動くのが一瞬だけ見え、
「くっ!?」
 反射的に立ち上がっていた。だけどできたのはそれだけで――首筋に冷たい感触が私にはあった。
 美樹さやかの表情に先ほどまでの笑みがない。殺意に近いものがある。凍てつくような嫌な空気が部屋の中に生まれた。
「これをどう回避する? それとも、どうこれを予測した?」
 その中で美樹さやかが鋭い眼光を浴びせてくる。
「っ……!?」
 首筋に押し付けられているのは、美樹さやかが先ほどまで振り回していた刀。その刃部分が狂いもなく、下斜めから押し付けられていた。震えてすらいない。
「さ、さやかちゃん! ど、どうしたの!?」
 遅れてまどかが慌てたように立ち上がると、刀を握っている美樹さやかの右手を掴んだ。まどかが美樹さやかの手を引っ張っているけれど、うんともしないようだ。
「……これには、ちゃんとした答えがあるの?」
 首筋の冷たさを感じながら私は考えていた――美樹さやかの問いの意味を。
「ある。少なくともこの現状を回避できないのであれば、必ずと言ってもいいくらいある。それくらい重要なことだよ」
 あるの……か。でも、私にその重要な何かはわからない。
「……ないわ。少なくとも今の私にはね。そして、まどかも同じことよ」
 私に時を止める魔法があれば、まどかに低下していない頃の力があれば、違ったのかもしれない。
「そっか、そうだよね。あたしがこうしてる時点でそれはわかってたよ。ははは、確認する必要なんてなかったね。あの時にもそういえば見えてたんだから」
 美樹さやかが一度目を閉じて笑うと、場の空気が変わった。
「この力を返しに来た」
 あの屋上で最後に聞いた一言と共に、
「ふぅ――」
 首筋の冷たさがなくなり、剣風が私を襲った。
「い、一体何を……!?」
 私の後ろの窓が唸るような音を放ったのが聞こえてくる。
 それなのに、私は普通に立っていることができた……加減されたのか。
 もっともそのことがわかっても、『斬られていたとしたら?』と身体を調べてみてもわからない。刀があった首筋に触れても問題がない。
「ちょ、ちょっとさやかちゃん!? あ、危ないよ! ここは室内なんだよ! 物が壊れちゃうよ!」
 振るときにソファーへ美樹さやかに弾かれていたまどかがそう叫んでいた。
 そういえば……幸いなのか、壊れた音は聞こえなかった。念のため見渡すが、変わっているところはなかった。窓も食器棚も、どれもみな無事だった。
 弾かれて乱れた服装を元へ戻しながら、
「力を返すって……、さっきもそれを言ってたけど、具体的にどういうことなの? わたしは別に力なんて元々ないよ」
 まどかが美樹さやかに手を伸ばすと、
「それは違うでしょ。あたしがまどかの力を奪うことで、まどかはこうやって戻れたんだから。だけどまぁ結局それはまどかたちを苦しめることになった。それが今」
 その手を美樹さやかが右手で掴み、まどかの身体を起こし一緒にソファーに座った。その左手にはいつの間にか、鞘に刀がおさまっていた。部屋に入る時点ではそれはなかったはずだ。
 そう考えながら、私も腰を下ろした。
「まぁ、あたしにしてはこれでも頑張った方……ホントだったら元の姿なのに、この現状。幼稚園くらいかな、これは……? はは、懐かしいって言葉しかでないね!」
 美樹さやかが笑うと、まどかも思い出したかのように釣られて笑った。
「それでその力ってのは、一体何なの?」
 魔法少女以上の力があるのだろうか?
「ウルドの声」
 美樹さやかがはっきりとした口調でそういった。
「……それが力の名前?」
 聞いたことがなかった。
 そもそも魔法少女の力に名前があるなんて聞いたことがない。身近にやたらと魔法に名前を付けたがる先輩はいるけれど、あくまでもあの人は例外であって、魔法に名前はない。付ける意味も、付けられる意味もない。
「いや、違うよ。魔獣の名前だよ」

 ――魔獣の名前……?

 それに『ウルドの声』……? 聞いたことがない。
 魔女と違って、魔獣の具体的な知識はない。美樹さやかは私たちを交互に見ると、
「まどかたちは魔獣に上級……、下級種がいるのは知ってると思うけど――、」
 と言葉を選ぶように真剣に続けたので、まどかと同じように頷いた。
「その存在は強い。魔法少女が一人で立ち向かえる相手じゃない」
 私たちはその発言にまた頷いた。
 まどか、巴マミ、杏子、私が力をあわせて、やっと倒せた存在だ。苦戦しないことなんてなかった。だけど、倒せないわけじゃない。
「じゃぁ質問を変えるよ。ウルズって聞けば、転校生は何か分かるんじゃない?」
『そうなの?』と言いたそうな顔をしながらまどかがこちらを見た。
 それに答えるため、私は口を開けると、
「……ウルズ。北欧神話に出てくる女神のうちの一つだったかしら?」
 正確には運命の女神だった覚えがある。入院していた頃に読んだ程度だから、曖昧。
「ん? そうだね。いわゆる神さまみたいなもんだよ。お話の中のね。それとさ、今までどれくらいの上級の魔獣を倒してきたか覚えてる?」
「うーん、覚えてないかなぁ……。魔獣自体は結構倒してきたかな? 最初の頃にすっごく苦戦して倒したのがたくさんいた気がする」
 まどかが右手の人差し指を口に当てるとそう言う。
「それはたぶん新しい秩序が構築される前に駆除されていないという認識で、この世界がスタートしたせいだと思う」
 そういって、美樹さやかは、困ったような表情を見せる。
「だからね、その半分位は上級だったと思う。言ってみちゃえば、ワルプルギスの夜を倒していないから、たくさんワルプルギスの夜がいるって感じかなぁ。でも、その時点では少なくとも魔獣に名前はないはずだけどね。変態途中の生物って言い方が正しいかな? だから、そんなには強くなかったはずだ」
 美樹さやかが『ふぅ』と息を吐き出すと刀をテーブルに置いた。
「魔獣にはそれぞれ名前があるの。魔女と同じようにね」
「うん、それで?」
「そして、名前があるもののほとんどが上級種の存在」
「……使い魔に名前がないように、魔獣にとっての使い魔である下級種にはないってことね?」
 確かめるようそう問うと、美樹さやかが縦に頭を振った。
「それでその中で厄介なのが、その神さまの名前を持った存在ってことだよ」
「神さまかぁ。そういう本は読んだことないなぁ」
 まどかが頬を掻いた。
「……それって、つまりはノルンの三姉妹がいるということ? それに他の名をもつ魔獣も――」
「そういう意味で言ってる。他にもいるってね」
 私の声を遮り、美樹さやかが言った。
 美樹さやかは神さまの名を持つものが一体どれくらいいると、思っているのだろうか。それこそ辞書にも収まり切らないほどに神さまのお話はあるというのに。
「でも、それって連続的に現れたりするの? 魔女の時は出現の条件があったけど」
 まどかが疑問を述べた。確かにワルプルギスの夜に限っていえば、あいつはいつも同じ日、同じ時間に現れていた。だからこその疑問なのだろう。
「まどか、いい指摘だね。率直にいえば関係ある。一度にそいつらは現れない」
「複数?」
「そうだね。現れた場所の近くには違うのが現れないって意味かな。この場合は」
「それはどうしてなの? 魔獣が現れるのがよくわからないよ。魔女は魔法少女の絶望の気持ちから生まれた存在だったよね?」
 まどかがうつむいた。それに『大丈夫』と肩を美樹さやかが叩く。
「魔女はそうだね。魔獣は――」
 美樹さやかが一度、ぺろりと口元を舐める。
「人の絶望や、無念が詰まった想いから生まれる。それで現れない理由はよくある縄張り意識が強いからで、敵ではないけど味方とも思ってないんだよ」
 ……絶望と、無念か。なるほど、それが魔女化の代わりなのね。魔獣は魔法少女の苦しみだけから、生まれるわけじゃないと。
「それでね、もし仮にさやかちゃんが返してくれる力がなかったら、わたしたち魔法少女は、神さまの名前を持ってる魔獣に勝てないの? ワルプルギスの夜のように何人かが束になって、協力すれば勝てるんじゃないの?」
 まどかが一言一言真剣な口調で美樹さやかに問う。
「無理だね……。戦う前からそれは明らかだよ。まどか達が最初に倒せてたのは蛹。ワルプルギスの朝なんていないとは思うけど、そういう感じの魔獣だよ」
 美樹さやかの声には友だちにいつも語っていた口調はなく、ふざけた感じがない。
「……だからこそ、力が必要?」
「そういうこと。そうすれば、少なくとも倒すことはできるはずだよ。そこからは、まどかたち次第ってことになっちゃうけどね」
 神の名を持つ魔獣を倒せる……力か。
「マミさんたちに協力してもらって四人でも――」
 まどかが問い終わる前に、静かに美樹さやかは目を閉じると頭を左右に振った。
「さっき言ったはずだよ、例え魔法少女が束になったとしても、勝てないって。仮に今までのがまぐれで勝てたと仮定しよう」
「まぐれって――」
「仮にって言ったでしょ。それに苦戦したのに変わりないんでしょ? だったら、それはまぐれかもしれない。つまりそういう現実が今あるの。だからこそ神の名前をもつ魔獣がいるんだ。それとは相対したことがない――」
 まどかの言葉を上書きするように美樹さやかは言葉を続けていく。
 だからこそ、気づいたことがある。美樹さやかが言いたいそれは、
「つまり、あなたが言いたいことはそいつが来るのね。『ウルドの声』がこの街に」
 美樹さやかは答える代わりに、口元を緩ませていた。
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