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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ L.o.S その2
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2014.09.05
01表紙 (2)
まどかではなく、さやかがアルティメットになっていたらという世界

※次回以降も修正しだい、随時アップロード予定

☓ ☓ ☓

 魔法少女に変身した私たちは魔獣の気配がある場所へ向かっていた。
「……」
 その途中にある街路は、薄暗かった。街路脇にあるビル郡はどれも非常灯のみが室内を照らしていて、人の気配はなかった。
 好都合だった。誰も巻き込む可能性がない。
 無論『アレ』がいるなら話は別だけど、その気配は今のところはない。普通の魔獣の気配だけがする。魔獣への対処は魔女と同じで、魔法少女にしか無理だった。
 だから私は、
「どうやら、この先のようね」
 そう言って、魔法で弾のこめられていないリボルバーを出現させた。
 時を止める魔法を失った私は弾を回収する手段がなかった。この銃を入手できたのも偶然の産物。魔獣がたまたまヤクザの縄張りに現れたという偶然だった。そんな偶然は二度も訪れない。
 だから必然的に回収した弾薬も、装備も戦闘を繰り返すたびに消費してなくなった。
 弾のない銃器なんて、まるで意味がない。鈍器になるかもしれないが、素直に野球のバットでも装備した方がまだ強いだろう。
 だから、そうしないためにリボルバーの弾倉を左手で開くとそのまま軽く回し、魔力を開放した。すぐに紫色の魔力光が私を包みこむ。そして右手にその力が集まるようにイメージを開始する。
 この魔法の使い方は巴マミが使用している魔法運用を真似たもの。ただ真似たところで今の私には制御することも、マスケット銃を大量召喚することもできない。仮に同じことをすれば、質量が召喚される前に魔力そのものがなくなってしまう。
 その方法が使えないならと思い浮かんだのがこの戦いだった。
 私は右手に集まった魔力を回転している弾倉に弾薬として一つずつ入れ込んだ。
 回転が停止したリボルバーの回転式弾倉には、鉄の弾丸ではなく八発の紫色の魔力弾が装填された。これが今の私ができる魔法だった。
 リボルバー本体に弾倉をしまうと、魔法でそれ自体をしまった。
「そうだね」
 まどかは私の様子を見てから、一度頷き、弓を出現させ構えた。まどかから薄いピンク色の魔力光が彼女を覆う。そして、街路の右にあるビルの影に隠れた。
 私はそれを見て、反対側のビルの影に隠れ、様子を伺う。左端に私が、右端にまどか。それぞれがお互いの死角をカバーする。
 これが今の私たちのフォーメーション――能力を失ったもの同士の戦い方だった。
 ただまどかは私と違って、まどかの魔法は即発動ができる。魔力を自分の身の回りに持続させ、矢を生成して弓から敵へ放つことができる。魔力量も私に比べると数倍のキャパシティがある。だけど、ワルプルギスの夜と戦っていたような力はもうない。失っていた。
「……」
 私の魔法も持続してくれば、銃がある限りいくらでもストックのしようがあるのだけど、魔法の弾丸は持って数十分しか維持できない。だからその場所につくまでに用意するしかない。軽機関銃のような弾薬を形成できれば本当はいいのだけど、一度にそこまでの魔力を練れないのと、イメージが追いつかない。
 だから、二つめのリボルバーを取り出して同じ動作を繰り返した。警戒しあって進む中での作業なのだけど、慣れていることもあり形成はうまくいった。
 戦っている間はこうはいかない。均等に魔力を弾薬に変換できやしない。
 数が多ければ、必然的にそういう荒業もしなければならないのだけど、魔獣の姿は見えない。気配が強い場所へは、近づいているはずなのに雄叫び一つ聞こえやしない。
「ほむらちゃん……いける?」
 私はその声に頷くと、魔獣の気配が一層強い街路内へと足を踏み入れた。
 ここまで魔獣と遭遇しないのははじめてだった。大体奴らは街を破壊していたり、人に害を及ぼそうと悪意に変異したりとわかりやすい。今回はそんな様子がまるでない。人もいないというのもあるが、魔獣も気配だけあって存在しないように思えてくるくらいだった。
「……」
 辺りを見回してみれば、魔獣の気配が強いのは街路内にある大きなビル、その中だった。
 まどかが弓を、私がリボルバーを前へと構え、そのビルの入り口の側に移動し、その内部を見た瞬間――。
 何かのうめき声が耳に入るのと同時に目に鋭い光が入った。
「っ!?」
 その光は一瞬ですぐに目は見えるようになった。
「ま、まどか、今のは?」
 まどかも同じよう驚いた様子で私と目が合うと、
「っ!? ほむらちゃん! 危ない!」
 そう言いながら、反射的に弓を引いて放っていた。私の耳元で風を切る音がすると、後ろの方で断末魔が聞こえた。
「……!」
 後ろを振り返ると、その距離約三メートル、そこに魔獣がいた。まどかの弓を受けて、その身体がピンク色の魔力光と共に崩れ落ちていた。

 ――全然気付かなかった。

 もう少し距離が近ければ攻撃を受けていたかもしれない。それも致命的な――。
「大丈夫?」
 まどかが心配そうにこちらを見る。暗い顔をしていたのかもしれない。だから、出来る限り笑顔を見せた。
「ごめん。ありがとう、大丈夫。さっきの光はこいつの?」
「うーん、たぶん違うと思うよ。この魔獣はいつもと同じ。だから、そんな能力はないと思う。キュゥベぇに聞けばすぐわかるんだけど、一度別れてからまだ会ってないんだ……」
 必要な時にいなくて、必要ない時にいる。相変わらず嫌なやつね。
 まどかが苦悩を感じているそんな顔をしている。その顔を見るのが嫌で私は、完全に後ろを向くと魔獣を倒した位置へと移動した。
「わからないのは、まどかのせいじゃないわ」
 魔獣が消えた場所には、魔獣のカケラと言うべきなのか、黒い布のようなものが飛翔していた。それを掴むと霧のように消えた。
 位置的に考えて、このビルの屋上から降りてきたのだろうか? なんにしても、
「これだけじゃ調べようがないわね」
 情報不足だ。
「それじゃぁ奥に進むしかないね。まだ気配はビルにあるよ」
 確かに魔獣を一体倒したけれど、ビルの中にまだ気配がある。もしかすると私を襲ってきた魔獣もこの中にいた魔獣の一匹だったのかもしれない。
「でも、へんね。魔獣の数が減ったり増えたりしている……」
 そう考えながら見上げてみると、何か光が屋上で動いているのが目に入った。
 私が見上げていたせいかまどかも見上げ、
「確かに反応は屋上にもあるけど、中の方が強いみたいだよ。今までこんなことなかったね。もしかしたら、上級の魔獣……なのかな?」
 私と同じ印象をまどかも思ったようだ。『アレ』がここにいるのかどうかと。
 でも、そんな気配はない。魔獣がたくさんいる気配はあるけれど、決してそれは上級の魔獣なんて気配じゃない。
 ただ、不安は拭い切れない。上級の魔獣はエネルギーを確保するために、他の魔獣をエネルギー源として食べているらしい……それが増減している理由かもしれない。それに知能だって、普通の魔獣よりもある。何かの罠があるかもしれない。
「どうする、ほむらちゃん」
 まどかの声色に緊張が走っていた。私も同じ気持ちだった。
 上級の魔獣――そんな存在が仮にビルの中にいるのであれば、私たち二人では倒せるか危うい。今は巴マミも杏子もいない。こちらに呼んだとしても間に合うかわからない……それに魔獣たちがいつまでもここに留まっているとも限らない。
 時間は待ってくれない。だから今はこの気配を信じるしかない。
「……気を引き締めていくしかないようね」
 そう言って、しまっていたリボルバーを再度出現させ左手に持った。
 両手で攻撃する分命中の精度は下がるが、威力、連射性に優れる魔力運用に切り替えた。うまく扱えば巴マミの能力を一時的に再現できる――ただ制限はある。
「それでいくの? 前みたいにならない? 大丈夫?」
 まどかが念を押すよう強く言ってくる。
 両手にリボルバーを装備する分、魔力消費は倍になる。そして放出できる魔力の可能時間も倍に加速する。まどかが心配するのは当然の反応だった。
「大丈夫、無理はしないから」
 ――諸刃の剣。
 これはいざという時にしか使えない。今がその時だ。
「本当に?」
 私だってこれを使った影響がどんなダメージを与えてくるのかはわかっている。
 あれは最悪の形だった。私は敵の目の前で倒れてしまったのだから。その時は四人だった。二人がアタッカー、もう二人が補助の動きを取れていた。だからこそ、私のカバーを巴マミがすぐにはじめ、杏子が無茶をして全ての魔獣を倒してくれた。
 魔獣が消滅して静かになった時、杏子に殴られたのはまだ記憶に新しい。
『無茶するのは勝手だが、こっちの都合も考えろよな』
 そう彼女は言って、倒れた私を泣きながら抱きしめてくれた。その時の私は殴り返すことも、抱きしめ返すこともできなかった。
 同じように涙を流す、それだけしか反応できなかった。
 そして人形のように杏子の背中におんぶされて、悔しさを胸に抱きながら戦場を後にしたのだった。
 その後の私は電池が抜けたオモチャのように、三日間まともに動くことすらできなかった。あのまま魔力を放出し続けていたらどうなっていたかわからない。
 だから、この力はいざって時にしか使わないと皆に約束していた。
「大丈夫、無理は絶対にしないから」
 今は、その二人はいない。まどかと私でどうにかするしか方法はない。リボルバーを強く握りしめた。
 今思い返えせば、あれが最初に出会った上級の魔獣だったかもしれない。
「――行こう」
 そういって私は一人で先にビルの中に入ると、まどかは私の後をしっかり付いてきてくれた。その顔は見えなかったけれど、きっと心配している顔なんだろうなと思うと、なるべく心配させるような行動は、今後控えようと決めた。
 ビル内部を警戒しつつ観察してみると想像よりも広く、なぜか非常灯がついていなかった。配電盤が狂っているのかだろうか? それとも魔獣に壊されたのだろうか。
 ……そういえば、クラスメイトが話していたような気がする。
 大型の何かができると。
 それがデパートなのかは忘れてしまったが……ここがその場所なのかもしれない。

 屋上前の扉に到達するまで、攻撃はなかった。あったのは魔獣の不可解な消滅現象を散々見せられたということだけだ。
 魔獣は姿を見せると唸り声をあげながら消えて、違う場所で唸り声をあげてきた。それはまるで『声のする場所へとおいで』と誰かが囁いているみたいだった。
 この現象が罠という疑いは、消えない。
 けれど、屋上は魔獣の気配が多くある。罠でも行かないわけにはいかなかった。
「いくよ……?」
 右手のリボルバーを魔法で消滅させ、屋上のドアノブをつかんで回した――はずなのに、扉は開かなかった。
 なぜか手が震えてうまく力が入らない。それどころか、背筋から冷たい嫌な感じがしてくる。
「……っ」
 気配はないけれど、本当に上級の魔獣がいないと自分の中で否定しきれていなかった。その不安が露骨に現れ始めていた。落ち着こうと深呼吸しても見えてくるのは、倒れた時の記憶。
 挙句の果てには視界が歪み、私はぐらりと身体のふらつきを感じ、立っていられなくなった。
「――大丈夫、ほむらちゃん?」
 気付けば、まどかが私を支えてくれていた。
 右手はしっかりとドアノブを掴んでいる。手の震えはなかった。何秒間気を失っていたのか、それともただの気の迷いだったのかわからない。
 けれど、まどかと一緒なら大丈夫だと、
「ありがとう、大丈夫」
 一呼吸いれて、まどかと共に臨戦態勢で屋上への扉を開いた。
「っ……!」
 開かれた扉の先……屋上は異様だった。
 魔獣の残骸が空気中に消えず、大量に散っていた。
 その中を発光体が動いている。青い光だった。
 青い発光体は、流れ星のように魔獣と魔獣の間を何度も行き来していた。そのたびに金属音のようなものが耳に入ってくる。
「なに……これ?」
 ドアノブを右手でつかんだまま、私の動きは止まっていた。異質さに心を奪われ、私は石化させられたかのように見ることしかできなかった。
「ほむらちゃん……?」
 唖然としていた私の意識を戻すかのように、まどかが私の隣から声をかけてくれた。
「……っ!?」
 その一言でやっと私はドアノブから手を離すと、まどかと合図をして屋上へ足を進め、扉を閉めた。そしてリボルバーを右手に再度出現させる。
 青い発光体に気付かれていないということはない。
 おそらく……この状況を作った正体がこの青い発光体。
 魔獣を相手にしているから、魔獣ではないとは思う。魔獣の攻撃も青い発光体に向けられている。
 こちらなど、まるで眼中にないようだ。青い発光体が放つ光は、魔法の力に似ていた。それと一瞬だけ見えた服装は、人間が身につけるものに近かった。
「あの子、魔法少女なの?」
 その声に反応して振り向くと、まどかはその場にしゃがみ込み、ピンク色の魔力光を纏いながら――青い発光体に弓を向けていた。そしてそれにあわせ弓の照準を動かしていた。敵ならば撃てばいいし、味方なら攻撃しなければいい。
 敵か味方か判断できない状況ではそれが最善の行動。そのはずなのに、私は何もせずにただ立っているだけだった。
「ふぅ……」
 視線を戻すと大きく息をはいた。
 そしてリボルバーの照準を青い発光体である少女に向けた。落ち着いたこともあって、その発光体が魔法少女であるのが確認できた。
「……よく見なさい、持っている武器を」
 だから、まどかの問いに答えるよう言葉を選んだ。魔法少女の戦い方は見たことがある――居合い。確かそんな技だったはず。
 鞘に戻す、その一瞬にしかそれを確認できないけれど、手に持っているのは刀に間違いない。
「――agerauo!」
 そして原理はわからないけど、あの魔法少女が魔獣を倒すと、その気配が消えないようだ。
 よく見直してみると、空中には一階で見た時と同じ布のようなものが散布している。
 ……これが消えない魔獣の反応原因か。
 一体の魔獣がバラバラになったことにより、まるで増えているように誤認識する。そういうことだったのね。
「……居合い?」
「戦い方はそうだけど、そこじゃないわ。剣先よ」
「剣先……?」
 まどかが凝視するように、その少女を見つめなおした。
「……青い、魔力光?」
 そうつぶやくまどかに、
「そう……」
 と頷いた。
 刀を抜く、その一瞬に魔法を使って剣速を高めている。それが連続で広がることにより、流れ星のような強い光になっている。
「あれを見る限りでは魔法少女だわ……」
 まるで超電磁砲ね。刀を発射する兵器。残りの魔力はおそらく自己の加速か。
「でも、魔法少女の姿じゃないよ」
 まどかがそう指摘した。確かにその通りだった。
 少女はどこかの民族象徴の仮面を着けて、服は黒いワンピース。ゴシックドレスに近い、欧米のゴシック・ファッションを着ていた。髪の色は空のように青い。
 そして極めつけは――とても幼かった。小学生か、幼稚園。それぐらいの背丈に見える。千歳ゆまと比べてもそれ以上に幼い。
 だけど、その格好と魔法少女は何も因果関係がない。仮に幼稚園児の魔法少女がいても何もおかしくないことだ。

挿絵1


「知っているでしょ、私たちはこのソウルジェムだということ」
 そう言いながら、まどかに左手の甲にあるソウルジェムを見せた。
 私たちはこのソウルジェムが無事なら、身体なんてただのパーツに過ぎない。壊れれば修復すればいいだけのハードウェア。だから、魔法少女の姿でなくても問題ない。
 ただそのぶんソウルジェムを危険に晒す可能性はある。
 そのはずなのに青い少女にはその『ソウルジェム』が発見できなかった。
「そうだけどさ……」
 ちょっと落ち込んだようにまどかがため息をはく。
「それにあの戦い方は『あの娘』にどこか似ている気がする」
 癒しの祈りを持った――魔法少女。その戦い方に似ている気がする。でも、彼女がここにいるわけがない。
「あの娘?」
 まどかはそのことに気づいていないようだった。だから、私は言葉を続ける。
「気づかない……?」
 念を押すように繰り返し聞く。
「うーん……?」
 まどかの方を見てみれば、頭を左右に振っていた。
「それはそう……『美樹さやか』に――、」
 その言葉を言う前に少女は私たちの目の前へ、瞬間的に距離を詰めてきていた。
「なっ!?」「えっ!?」
 それは一瞬の出来事だった。美樹さやかの話をしようと口に出した。たったその秒数のうちに、少女は私とまどかの三メートルほど前にきていた。
 ただ少女は近づくだけ近づいたのに何もしてこなかった。それどころか、無防備にも私たちに背を向けている。だから、
「――ぅう!」
 直感的にまずいと感じて私はリボルバーを敵意と共に少女へと向けた。
 少女は怯むことはなかった。周りを見渡してみるが、屋上にはもう魔獣らしい物体は見つからなかった。あるのは残骸、そして目の前にいる謎の魔法少女だけだ。
 まどかは私と同じように少女へ弓を向けているが、私の余計だったかもしれない一言のせいか手元が震えていた。
 ……当然か、目の前にいるのはかつての友だちなのかもしれないのだから。
「……」
 敵意を感じているはずの少女は、私たちの行動を無視して、刀をゆっくりと天に向けた。その刀身が月明かりでうっすら光り、
「――ふぅ」
 少女がゆっくり吐息をはくと、刀を鞘にしまい始めた。完全に刀が鞘に収まると、空中に浮かんでいた魔獣の残骸が爆ぜた。そして存在していた魔獣の気配が全て消えていった。
 まるで爆弾のスイッチを鞘で入れたかのようだった。
「きれい……」
 まどかが言うようにそれは確かに綺麗だった。桜のように魔獣のカケラが青く照らされ反射して落ちていく。そんな感じだった。
 あっけに取られて少女がそこにいるのを忘れてしまいそうになったが、少女がこちらに敵意を向けてきたのを感じて、
「……っ!」
 我に返った。
 少女は振り返らず敵意のみを私たちに放っていた。それは後ろを向いてでも斬れる意思表示……なのかもしれない。
「……あなたは一体誰なの? 何をここでしていたの!」
 リボルバーを持つ手に力が入る。回答によっては目の前の少女が『彼女』であっても撃たなければならない。そんなことはまどかには絶対にできない。
 だから、私しかいない。
「……」
 少女がこちらを向いても仮面で表情を読み取れない。だけど、私たちへの敵意。それだけはわかる。
「答えなさい!」
 答えの代わりのつもりか、
「くっ!?」
 少女はその場で刀を振るっていた。それが見えた瞬間には剣風が私とまどかを襲っていた。
「何、この風!?」
 今まで、手を抜いていたってこと!? 鞘から刀を抜くのがまるで見えなかった。
「くっ……!」
 刀を鞘に入れずこちらへ向けているだけなのに、明らかに魔獣と戦っていた時以上の魔力を感じる。それだけに手が少し震えた――戦って、倒せるのだろうかと。
「やめて! あなたもわたしと同じ魔法少女なんでしょ? なら、わたしたちが戦う理由なんてどこにもないよねっ?」
 まどかが諭すように少女に声をかける。その言葉に少女は動きを見せない。その代わりにまた剣風が襲ってきた。今度は鞘を使用しないただの横振りの一撃だった。
 右足に力を込めてその衝撃に耐えると、
「……そんなんじゃ、これから来るのに勝てないし、生き残りすらしない。圧倒的な力の差に敗北するだけ、惨めに死ぬだけ。自分の力を過信しすぎるのもよくないよ」
 少女が声を発した。仮面によって、多少変質していたが確かに少女の声を持っていた。だけど、その声は『美樹さやか』。その人の声ではなかった。
「はぁ……」
 少女は吐息と同時に、刀を鞘に戻した。
「試してあげるよ。暁美ほむら、鹿目まどか。遠慮はいらないよ、二人一斉にかかってきなよ。そう、これは練習。来たるべき時にちゃんと戦えるように。うーん、そうだね、そんな感じだ。そういうことにしよう」
 わ、私たちの名前を!?
「――知ってるよ。忘れるわけないじゃない。あれを忘れられるほど、あたしは落ちぶれていないし、変わっちゃいない」
 少女は私の心情がまるでわかっているような口調で続けた。
 この少女は……やっぱり!
 少女は左手を鞘に右手を刀へと移動させた。そして先ほどまで以上の敵意を向けてくる。
「――まどかはそこでチャンスを」
 まどかが何かを言おうと息を呑むのを感じて、私は足をそれよりも先に動かしていた。ただやられるのを待っているつもりはない。試すつもりなら、存分に試せばいい。
 目の前にいるのは敵だ。美樹さやかはもうこの世には存在しない! それに相手が誰だろうとまどかに仇なすものを私は容赦しない。
 人を偽る上級の魔獣――そう判断した私はたった三メートルしかなかった間合いを屋上の端を走るようにして、距離を増やす。
 それに対して妨害がくると覚悟していたが、少女は動かなかった。
 変わらずまどかに背を向けた状態で静止している。
「――!」
 なぜ動かないのかわからないけれど、好都合だった。
 近距離戦闘を行うことは今の私たちにとって、とてもやりにくいことだ。それでも、その対処方法を私たちは決めていて、やってきた。そのための間合い。
 自分の間合いを簡単に手放すなんて理解できない。余裕がそれだけあるの?
「……っ」
 少女の正面姿が見える位置までぐるりと回ってこれた。少女の表情は仮面で塞がれていて、何を考えているのか読めない。
「……ふぅ」
 それは魔獣も同じかと、心を落ち着かせた。
 回り込めた利点を生かすようにリボルバーを構え動く。
 走りながら一発、二発と左右のリボルバーの引き金を引く。四発の魔法弾が少女へと飛んでいく。紫色の魔力光が空を劈き、ただ真っ直ぐに進む。狙いは少女の右足と、右手。
 それは少女の居合いによって、当然のように斬り裂かれ散った。やはりというべきなのか、少女が刀を振ったその一瞬は正面でも見ることができなかった。青い魔力光だけはなんとか確認できた程度か……。
 前右下斜め、前右上斜めダメ……と頭に刻むよう覚え、少女の本当の間合いと死角を探す。おそらくさっきまでの距離は少女の間合いじゃない。だから、剣風のみの攻撃に留まっている……それならばと、さらに攻撃を加える。
 死角と間合いさえわかれば、魔法少女として弱くなった私たちでも十分戦える。
 まどかの攻撃はそのためのもの。一撃で大きなダメージを与える。そのために私が死角を探し、その対象の動きを止め、まどかが最後に矢で撃ち抜く。今までそうやって戦ってきた。今回も同じことをするだけ。
 だから、私は攻撃の手を緩めない。狙いは最初に撃ったのと逆の場所――右後。
「……」
 少女は無言でそれを同じように防いだ。
「くぅ……、次っ!」
 構わず次を撃ちこんだ。必ずあるはずだ。無意識的に苦手とする部分。生物であれば必ずある場所、それは魔獣であっても変わらない。
 私は少女を撹乱しながら撃ち、少女は撃ち落とす以外動かない。
「……? っ!」
 それを弾が残り一発ずつになるまで繰り返したおかげで――やっと見つけた。
 少女の死角は、左手に持つ鞘のちょうど腿らへん。その部分に攻撃した時のみ、居合いをせず普通に斬り裂いていた。
「これで決めるっ!」
 そう言いながら、警戒しつつ私はまどかの近くまで走り始めていた。少女の背後からその死角を狙う。この少女にその意味があるのかわからないけど、体勢が少しでも崩れてくれればいい。居合ができなければ、攻撃が通る!
 私が最初にいた位置で、反転して少女へ飛び込んだ。
「……っ!」
 相手が居合いをするのであれば、刀を抜けない間合いで攻撃すればいい! それも死角に向かって撃てば必ず隙ができる。
 リボルバーの残弾は残り一発ずつ!
「――まどか!」
 仮に私の攻撃が失敗しても、直前まで近づいた私でまどかの攻撃は見えないから、避けれない! こちらの勝利は崩れない!
「う、うん!」
 振り向かなくてもわかる。まどかはその位置を的確に撃ちぬいてくれるはず。まどかの姿を隠すように念の為その前を走る。
 これで終わり!
「――ふぅ!」
 しかし私の行動を阻止しようと、少女は私に向けて刀を振るってきた。だけど、そう何度も連続して居合いを放つことはできない! だから、
「――それでも!」
 私はなんとか剣風に耐え、ひたすら前へ前へと少女の元へ近づいていく。
 少女が死角に迫っていることに気づいたのか、右足を軸に動き始めていた。鞘に刀を仕舞わずこちらにゆっくり振り向いてくる。
 ――もう遅い。
 少女の身体がこちらに向いた瞬間――左肩、鞘の隣に位置する腿へと左右ニ発の弾を発射した。
「――見える!」
 その魔法弾を私共々斬ろうと放たれた縦一線による軌道。
「やる行動がわかっているなら回避できなくないわ!」
 その動きをしゃがみ込んで避け、少女の右側へとステップする。鞘を抑えこんでしまえば居合いを放つことはできない。でも普通の刀による追撃があるかもしれない。
 だけど、それは一人でいる場合だ。
 今は二人。まどかが攻撃すれば私たちの勝ちだ。
「ほむらちゃん! 避けて!」
 タイミング通りにその声が届く。
「――っ!」
 左耳に魔法がぶつかった衝撃音と、ピンクの魔力光がはるか遠くへ突き抜けていくのが見えた。
 これで終わり、そう思い私は少女がどうなったのかを見ようと振り返ると、
「……それで終わりだと本当に思ってるの?」
 倒したと思っていた少女の声が耳に入ってきた。
「えっ!?」
 ――振り返った先に立っていたのは、何事もなかったかのようにこちらを見下している少女の姿だった。少しだけ違うのは仮面にヒビがうっすらと入っているだけ。
 確かにまどかの魔法は当たっていた。急所と思われる頭に。でも、攻撃は通っていなかった。
「そんな……!?」
 さすがにこれ以上魔力を消費すれば……と、手に力が篭る。
 ――後ろに魔力の反応がある。まどかの第二射目……、でもこの状況もう間に合わない! 少女が動く方が圧倒的に早い!
「やっぱだめだね。わかってたけど……ごめんね、後でどうにかするから」
 少女の動きは一瞬だった。右手の刀を構え直し持ち上げていく。
 居合というのは、鞘から刀を抜いて納刀する技。だから、その準備動作を封じるために死角を攻撃するのと同時に、少女の左肩を動かせないように魔法弾を放った。封じたつもりだった。
 だから、目の前にいる少女に左腕はない。私の攻撃は確かに届いていた。加えてまどかによって弓で急所である頭を撃ち抜いてもらった。
 ――それで終わりだと勘違いしていた。
「くっ!」
 誘い込まれたのはこちらだった。わざと少女は左肩……、鞘の近くだけまるで死角があるかのようにしたのだ……この位置に私をおびき出すように!
 刀からの一撃を避けるために左足に力を入れ、地面を強く蹴った。後ろに飛び上がりながら少女へと身体を向ける。
 そして少女の勢いを止めるべくそのままの姿勢で、魔力を乱れ撃つようリボルバーの引き金を引いた。統一性のない魔力弾が連続で少女へと飛んで行く。
 その影響で少女の動きが変化を遂げる――刀の軌道が少しずつだか確実に変わっていく。
「っ……!」
 それを確認して更に続けた。身体の力が抜けていく感覚がする。目の前が暗闇に落ちるそんな錯覚さえしてくる。続ければ倒れることになる。
 でも攻撃を受けてしまえば、それこそ本当終わってしまう! だからやめるわけにはいかない。
 着地した場所から見えたのは、少女が刀を振り切り終わったところだった。攻撃ずらしがなければ斬られていたかもしれない。
「ほむらちゃん――」
 着地した場所にはまどかが防御魔法を展開していた。私の負担を抑えていてくれたようだ。そのおかげで、銃を素早く少女へ構え直すことができた。
「大丈夫……?」
「大丈……!」
 言葉を口に含んでいる間に少女がこちらに距離を詰め、私へ縦に刀を振るってきた。
「なっ!?」
 その一撃は当たることはなかった。その動きは単調で回避できたから。でもその代わりに追撃が私を襲っていた。
 私は『なかった少女の左手』で殴られていた。
 刀に意識を集中させ他に目を配らせない攻撃――それにまんまと引っかかった私は冷たい地面の床へと叩きつけられた。
「くぅは!」
 その衝撃により、全身がしびれを感じ始めている。魔力低下の代償も少なからず私を縛り付け始めた。指の感覚がなくなりつつある。
「……ぅ」
 痛みの感覚を削ると、ゆっくりリボルバーを少女へと向けようとしたけれど、
「やめておきなよ、よく周りを見ることだよ」
 少女が吐き捨てるよう言葉を作り、私を踏んづけた。
「な、何を!」
 少女の足はうまく身体の点を押さえつけているのか、起き上がることができない。手元をうまく動かせば、少女にリボルバーの照準を向けることができるかもしれない。そんなことを考えていると、
「ほ、ほむらちゃん上!」
 まどかの叫び声が耳に入った。
「えっ……」
 それを見た私を待っていたのは絶望だった。月明かりに乱反射する鋼色の物体。

 ――幾千以上の金属物体が空に浮かんでいた。

「今のあたしなら、転校生……お前がやりたいことが一瞬考えるだけでわかる。お前にはその魔力も素質さえもない。上級の魔獣と相見えてもひねり潰されて殺されるだけだよ」
「あなた……、まさか本当に?」
 転校生と私を呼ぶのは一人しかいない。
「そうか――、やっぱりだめだね」
 少女は刀を床に投げ捨てると、おもむろに両手で仮面を外した。
「……力を返しに来た」
 そこで笑っていたのは、幼い『美樹さやか』だった。
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