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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ Beginning with Charlotte その終
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2014.01.13
魔法少女暁美ほむら。彼女の魔法は鹿目まどかとの出会いをやり直すための魔法であるはずだった。
しかしながら、時間遡行で戻った世界は彼女の知る世界ではなかった。
記憶をなくしたほむらが出会ったのは、シャルロッテと名乗る不思議な金髪少女。
「あいつらの方が魔女だ。罰せられるのはあいつらの方――」
果たして、ほむらは元の世界に戻ることができるのか。シャルロッテの正体とは一体……?

その3

 暁美ほむらが甲冑兵士との戦闘を繰り広げている頃、城からはるか離れた上空では鏡を写しとるかのように、二つの影がただ同じことを繰り返し続けていた。そのたびに、赤い線が空に何度も生まれ続けていく。斜めの直線が何度も生まれ、丸い曲線も何度も生まれた。ゆるい線になったり、すぐ消えてしまったりする線もあった。その度に戦闘機のような風を切り裂く爆音を周囲に響き渡させていく。
 二つの影は赤を象徴とする魔法少女で、同じ魔法の力で作られた服を着こんだ双子の少女が空を彩るように飛び回っていた。月から見える少女たちは、まるで分身。
 
 ――そう双子の少女だったのだ。

 何もかもが同じ。魔法、行動パターン、全てが一緒。完全一致といっても過言ではない。普通の人であれば、双子の少女を見ても、同じ服を着ていて、なおかつ同じ魔法の力を使うので見分けがつかない。
 だから、双子の少女は鏡によって映しだされた虚像にしかみえない。どちらが本物で、どちらが偽物なのかわからない。わかるのは当事者である本人たちだけ――。
「ははははっ!」
 雲が少女たちを隠すかのようにゆっくりと覆い、そして彩る。紅い雲が少女たちのいる場所を表す。雲が縦に割れ、
「リーゼ……!」
 少女たちそれぞれが赤い閃光を放ちながら、ぶつかり合う。空に描かれる光線は、その光によって、生まれたものだった。生命の光。
「だから、シャルロッテだって、わたしは――」
 少女たちの武器と武器の衝撃が雲を散らし、雲ひとつない蒼天へと変えていく。
「シャルロッテだって!」
 わかるはずの本人たちは、お互いをシャルロッテ、お互いがリーゼロッテと認識している。だからこそ、その動きが類似しているというのもあるのかもしれない。
「っ……!」
「あはっ! くふふふふぅ」
 ぶつかり合う際、時折金属音の硬い音が何もない空間を響き聴かせる。それは全てを一閃できる刀に並ぶ切れ味を持つ攻撃。魔法によって、生まれた武器による一撃だった。その武器は刃物であるはずなのに、少女たちが動く度に布のこすれる音を発していく。
 両腕の裾、そして全身の衣服が少女たちの武器だったのだ。
「――ああああああ!」
 少女たちは魔法の力を使い、それぞれの目的のためにただ動いていく。

 ――一人は双子の生命を奪うために。

 ――一人は双子と遊び楽しむために。

 平和を願う魔法と、そんな少女と同じになりたいという魔法。ぶつかり合う魔法の違いは何もなかった。双子は願いごとによって、もはや双子ではなくお互いが同じ存在に近きものとなってしまった。その奇跡が叶ってしまった。
 だから――どちらがリーゼロッテなのか、どちらがシャルロッテなのか誰も証明できない。
「はっ!」
 双子の一人が魔法少女の契約によって、生まれた武器である衣服による斬撃を放つ。手を覆い隠すほど長い右手の裾が、もう一人の双子へと迫る。それに対して、もう一人の双子も衣服の裾、右手をぶつける。続け様に火花が散り、次の攻撃へと移る。
 そして双子の一人が自身を回転させることによって、生まれる魔法をすれば、相殺するように同じ魔法を。距離を取ろうとすれば、同様に距離を取る。
 そのことの繰り返しのためか、何も知らない人にとっては、二人の演舞を見ているようなものだった。数十分もその演目は続いていた。
 この戦いが演舞の演目の一つとすれば、
 前座は、それぞれの両親の死、一人には少女が殺したかのように見え、一人には旅だったように見える――逆上と愉悦だった。
 次曲は、大量虐殺。紫色の魔法少女のために変えられない運命、老人によって定められたものの破壊、そして遊び道具の破壊。

 そしてこの――いつまでも続くかと思われた舞踏演目の中、ある変化が起きはじめていた。

「っ――」
 空を舞うのが四つに増えたのだ。双子の少女ではない、二つの浮遊物が別に飛んでいたのだ。
 四つの浮遊物が、まるでネオンの光のように赤い光を灯し、それぞれが空を舞う。舞踏会を包み込むように、そこに生まれた液状の粒子が周囲に拡散し、月明かりに照らされ光り続ける。
 これがまるで終幕だと――、観客に告げるように。
 二つが四つに増えたのは、双子の少女たちそれぞれの右腕だった。それはまだ意志を持っているかのように――、布越しでもわかるぐらいに指先が動いて、空中でそれぞれの少女たちへ戻ろうと軌道をかえようとする。
 そして赤い光がその腕を覆うかのようにして包みあげていた。
「「――こいっ!」」
 少女たちの右腕は、その想いに答えるかのように弧を描く。その動きはブーメランのように軌道を徐々に変え始めていた。少女たちが宙で態勢を変え、それを向かい受けるかのようになくなっていない腕を伸ばす。
 赤い光は双子の少女たちから溢れ出す生命の光だった。右腕がちぎれた場所からそれは流れているだけでなく、顔や足といった場所から生まれた小さな傷口からも溢れ出していた。その状態で空を舞ったために、空へ拡散していたのだ。
 赤い血――人間だったという証の光。
 その影響か、一人は呼吸を乱し、一人は演舞が始まる前と変わりない笑い声をあげていた。
「くふふふふ」
 と気味の悪い子供の声を出す。何もない空を上ではその声だけが無性に聞こえる。
「リーゼ!」「リーゼロッテ!」
 お互いの名前を呼び、自分の元へ帰ってきた右腕を取る。
 お互いに左手の一刀両断できる一撃で、斬りとった右腕を――。
 右腕があった場所にそれぞれが右腕を持っていくと、今まで以上の赤く強い光を放ち、元に戻っていく。はじめから、切り取られていないように違和感なく。
 そして新しく生まれた、治った右腕を即座にぶつけていく。
 お互いにその証拠として、続けて衝撃波が空に響いた。致命傷といわずとも、衝撃による風圧によって、二人の頬に切り傷が生じていく。それほどまでに凄まじい斬撃による反動のため、お互いに必然として距離を取る結果となった。 そして空中でその崩れた姿勢を戻すと共に、お互いを直視する。距離にして、数メートル。
 高速に移動する双子の少女にとっては、あってない距離であった。
「くっ……!」
「くふふふふ」
 深手になるほどの一撃であったのに、双子の一人は赤い光が生じて頬の生まれたばかりの傷が治り、もう一人は傷が治ることがなかった。ただ赤い血が流れる。

 ――ここでついに見分けることができる違いが生まれたのだ。

 ただ、お互いに羽織っているマントは、もはやマントと呼べるものではなく、穴だらけでただの布切れになりかかっていた。その破れ方もそれぞれ異なるため、見分けがつくのかもしれない。しかしながら、双子の少女たちは見分ける時間を与えるほど遅く移動せず、直線の光と錯覚させるまでのスピードでぶつかり合っていた。
「楽しいね、シャル!」
「……それは本当の気持ちじゃないんだよ、リーゼロッテ。お前の感情はもうお前のじゃなくて、わたしの感情によって割り込まれた壊れた感情なんだよ。だから、思い出して? リーゼロッテ……。お前がわたしの妹として、車椅子を押してくれていた時のことを……! お城の外を一緒に歩いたことだって――」
「車椅子? そんなの乗った人も乗ったこともないよ! それにシャルロッテって……。まだ、そんなこと言ってるの? わたしがシャルロッテだって、言ってるでしょ?」
 双子の一人は、笑い顔を隠すように右手の衣服で口元を隠す。
 対して、もう一人は苦渋を強いられているかのように、息を乱し、
「うっ……!」
 乾いた声と共に、口元から血が溢れ落ちていく。
「大分つらそうだね? ほら、嘘つくからだよ。わたしがシャルロッテなんだから」
「はぁ……はぁ……、お前も……昔みたいにずっと戦っていられない。もう……魔力を癒してくれるものはなくなってしまったのだから。あの場所にあった……女神像はお前が壊し、そしてこのお城にあった女神像は……わたしが壊してしまったのだから――」
 笑っていた双子の一人が耳を疑う表情を見て、もう一人の双子が一度深呼吸すると言葉を続ける。
「それに覚えていない? 車椅子を押すお前はいつも凄く楽しそうで、わたしはだから……歩くことができなくても楽しんでいられた。お母様たちも喜んでいたよ」
「そうだとしても…………そっかなぁ、例えそんなことをしてもさ、またいつかみたいにずっと遊んでいられる――」
 ごほっと咳き込むように双子の一人が息をはくと、それを止めるかのように手で塞いだ。
「――!?」
 双子の一人はそれを見て、笑うことをやめ虚をつかれた表情を見せた。口元を抑えた布が赤く染まっていたのだった。
「ほらね……? もう時間切れなんだ」
 それは傷によってあふれたものではなく、つい先程咳払いした時に溢れ出たものであった。
「なんで……、なんでなんでなんでなんでなんでなんで――」
「そういう運命だから……だよ。決まっていたんだよ、最初から、あの時わたしたちの国が火に焼かれ、家臣たちが死んでいくのを……目にしてから」
 不安な表情を見せ始めた双子の一人に、今まで辛い表情を見せていたもう一人の双子が優しく笑いかける。それは諦めにも見え、双子の一人の表情が強張る。そして、
「そんなの嘘だよ! 嘘に決まってるよ!」
 驚きが、怒りに変わる。楽しいと感じていた気持ちが既に双子の一人から失われようとしていた。対して、もう一人の双子は最初から何も変わらない。ただ、呼吸を乱すばかりで、
「魔法はね……、いつか解けてしまうんだよ。わたしもはじめて知った時は怒り、悲しみ。いろんな感情が生まれたよ――」
 と言葉をはく。少女たちの高度は徐々に下がりつつあった。
「何でこんなものがわかるんだろうとも思ったよ。でも……事実が事実として定着していくにつれて、これでやっと終わるんだとも思ったかな。そしてあの娘が現れたんだよ。黒髪の少女がね。そしたら、もう終幕に向かうしかないんだよ、わたしとリーゼロッテの物語はここで終わるの。誰でもない、わたしが呼んでしまったあの少女にね。わたしたちの国と一緒に消え去るの。わかるでしょ? リーゼロッテ……!」
 真剣な表情を見せると、責めるかのように名前を呼ぶ。
「そんなのいやだよっ! もっともっと遊んでいたい! 玩具をもっと壊していたいよ! つまらないのなんて嫌だよ、やっと面白くなったのに……。なんでリーゼロッテはそんなことをいうの?」
「それはね……」
 右手と左手を前に少女は構えると、
「わたしとあなたがたった二人の――双子だから……だよ!」
 言葉とともに、残り香のような赤い光が空に一瞬少女の後ろからはじけ飛ぶと、一気に少女との距離を詰めていく。
 
 ――もう一人の双子は思う。

 わたしだって、遊んでいたかった。リーゼロッテと笑い合いたかった。ずっとずっと子供たちと過ごす毎日もしていたかった。ほむらとももう少しいろんな話がしたかった。怒ったり、笑ったりとしたことに偽りなんてない。
 それが自分の運命だとしても、今までの感情までが……運命だとは感じない、と。
「う……うぁぁぁ……、い、いやだぁ……、いやだよっ!」
「っあ!」
 接近したもう一人の双子は、瞬間的に二回ずつ左右の布による斬撃を放った。
 骨が砕ける音もせず、風を切る突風の音が周囲を襲う。
「ぐぁう……!?」
 次いで双子の一人の両腕が空を舞い、両足も続いて空を舞った。放物線を描きながら、赤い生命の源が切り取られた付け根から溢れだしていく。
 魔法の制御を失ったためなのか、空からゆっくりと墜落するように急降下を始めていく。
「やっと、抱きしめられるよ、リーゼロッテ……ずっと、ずっとこうしたかった」
 それを態勢を崩しながら抱きしめるように掴み取ると、
「――シャル……お姉ちゃん……?」
 双子の一人は、怒った顔も、笑った顔でもなく、穏やかな顔をしていた。
 シャルロッテは目をとじると、言葉を告げる。
「……ほむら――今だよ」
 
 暁美ほむらが駆けつけたのは、その時だった。

 風と風がぶつかり合う場所へとかけつけた私は、二人の姿のうちどちらがシャルロッテで、どちらがリーゼロッテなのか判断できなかった。同じ姿だった。
「っ……!?」
 リーゼロッテはシャルロッテと同じように、明るい赤の光を放つのが特徴な魔法少女になっていた。扱う攻撃方法も全く同じ。本当に双子だったと納得するぐらいに動き方――戦い方まで一緒だから。遠くから見える限りだと、どちらに攻撃したらいいかわからなかった。
 攻撃で生じる金属音だけが耳の中に響いていく。
「シャル……」
 攻撃するのが仮にリーゼロッテであれば、シャルの勝利で彼女の戦いは終わるかもしれない。だけど、逆にシャルの場合は、どうなるかわからない。もしかすると、それで元の時間軸へ帰れるかもしれない。帰れなくなってしまうかもしれない。
 そんな不安要素が強い中、攻撃することができなかった。ただ、音を聞いて目の前の閃光を見るしかなかった。だから、その瞬間を待っていた。確実にシャルと、リーゼロッテがわかるその瞬間を――。

『……ほむら、今だよ』

 その瞬間が訪れ――私はシャルの声に導かれるまま、矢を放った。紫色の光を放つ魔法の矢はまっすぐシャルたちのいる上空へ飛んでいく。狂うことなくただ真っ直ぐにその場所へ向かう。
 それが弓矢であり、それが魔法でもある。
 確かにこうして、いつでも攻撃できるようにまどかを見習った魔法の弓矢を用意して、狙いをつけていた。だけど、いつ私がこうしていると気付いたのだろうか? 
 音もなく近づいたとは言えないけど、警戒しつつシャルたちの戦闘エリアに入ったつもりだった。
 私は地上、シャルたちは空中。目に入っても、気付かない程度だと思う。月明かりがあるとはいっても、夜は夜。視界に入る情報は陽の光がないぶん、悪化していく。
『シャル……避けて!』
 背中越しに撃ったとわかるように声をかける。シャルは気付いているのか、いないのかわからない。リーゼロッテと思われる魔法少女を抱いて、ゆっくりと落下してくる。
 私の魔法の反応は確かにしたはず……それなのに、
「シャル……?」
 もしかして、気付いていないのだろうか? そんなはずはないと思う。声をかけてきたということはこちらの存在に気付いたってこと。
 でもシャルの言ったタイミングは、シャルがこちらに背中を向けている時だった。
「まさか――」
 攻撃に当たるつもりなのだろうか……。私が攻撃できなかったからなの? シャルを殺すことが戻れる方法なのだろうか……? 撃てない私に気を使ってくれたというのか?
『大丈夫だよ、ほむら。これでいいんだ』
 紫色の光が拡散し、
「――あっ!」
 鈴の音が二度鳴ると、私の放った矢は二人の魔法少女を貫いていた。
「どういうことなの……? シャル……!」
 空中でゆっくりとこちらに振り返ったシャルは、口元から血を流し、
『ふふふ』
 どうしてあなたは――笑っていられるの? 
「……っ!」
 魔法力がきれたのか先ほどまで以上に、そのまま落下スピードを上げこちらへと落下運動を始めた。そして、
「っ……!」
 勢い良く落下したために、土埃と大きな落下音が上がった。
「シャル……!」
 激突したシャルの元へと近づいていく。鈴がなったということは、ソウルジェムが破壊されていないのかもしれない。土埃が風によって流されると、大きなクレーターの中心点で金髪の少女が、同じ姿をした金髪の少女を抱きしめていた。うめき声と小さな話声が耳に入ってくる。
「リーゼ……おかえりなさい」
「ただ……いま、お、お姉……ちゃ……ん」
 それも魔法少女ではない、ただの双子の少女の姿で。鈴が穢れ切ったために変身が解けたのか、単に変身を解いたのかはわからない。ソウルジェムとはどうやら違うようだし。
 ただ抱きしめられている少女は、巻き毛の子供の時と同じで手足はなかった。シャルが削り取っていたのを目にしていたから当然なのかもしれない。反撃できないように武器を削ぐという点で、自分が攻撃できないのと同じ状況にしたのだと思う。
 いくらこの身体が外付けのハードウェアといっても、結局は同じ身体なのだから、破損した箇所はそのまま、魔法少女でない身体にも影響するのだろう。
 そんなリーゼロッテの身体をいたわるかのように、
「ごめんなさ……い、お姉ちゃ……ん……」
「……」
 シャルはその声に何も言わず、頭を撫でていた。最愛の人を殺すという気持ちがわかる私には、直視することができなかった。ただ、リーゼロッテから放たれる光を見ることしかできなかった。
 明るい赤の粒子が、まるでホタルのように周りを輝かせている。
「ありが……とう、お……姉ちゃん」
 リーゼロッテの身体が下半身部分から、赤い粒子へ少しずつ変化を始め、消滅しようとしていた。魔力がなくなった魔法少女は魔女になるはずなのだけど、この娘は例外なのだろうか……。光は空へ向かっているようだった。どこにいくのだろうかと見上げれば、
「えっ――」
 
 空にはあの人形があった。それも人形だとわかるようにまで修復されているものが――。

 リーゼロッテの赤い光がそれを修復しているのだろうか? 穴だらけであったはずの人形に骨格のようなものができ上がっていき、
「どういうことなの……?」
 そして消えていくリーゼロッテの姿に比例するかのように、肉体が生まれていく。
「わたし……これから……独りぼっちになっちゃうのか……な」
「そんなことないよ――」
 視線を下げれば、シャルの顔からもリーゼロッテの顔も涙であふれていた。
「リーゼロッテ……、お前はわたしと一緒になるの……。だから、ずっとずっと一緒に遊べるよ。だから、今はもうお休みだよ。またすぐに会えるから――」
「うん、お姉ちゃ――一緒――」
 リーゼロッテの身体は言い終わる前に完全に消滅した。残されたのは白かったものが血によって、赤く染まったドレスを着込んだシャルだけだった。リーゼロッテの後を追うように、
「うっ……!」
 シャルが崩れ落ち、その場に倒れた。
「シャル……!」
 倒れたシャルの身体を抱きかかえるとシャルの足は、リーゼロッテの時と同じように、次々と光の粒子に変わり始めていた。そして、見上げれば先ほどと同じように空に浮かぶ、小さな人形へ粒子が飛んでいく。赤い光を放つ部分を補填するかのように次々と埋められていく。
 左手、右足、左目と次々に“あの魔女”と同じ姿へと変わっていく。
「この……力を……使って……して、ほむらは……元の場所へ変えることができる……よ」
 人形に吸い込まれていく粒子はなぜか、私の盾の中にも吸い込まれていた。そのたびに砂の重さを感じる。時を超える魔法の砂の重さを――。リーゼロッテが消える時にも違和感はあった。
 何かの重さが増えていく感じがあるのをずっと否定していた。痛みを感じたあの時でさえ、少しずつ力は戻りつつあったんだ。それらを肯定するということはつまり、
「――わたしを殺せば」
 自分を撃てとシャルはいう。違和感は現実になった。
「な、んでなの……」
 嗚咽する声が私の口から漏れた。

 ――お菓子の魔女が生まれる瞬間に、私は元の世界に戻れる。

 それが私の本来の時間遡行の力。その力が戻りつつあるのを感じ取っているのだから……。
 盾の中の何もなかった砂時計は、もうすぐ元の砂の量に戻ろうとしている。空には穴だらけの人形ではなく、完全に人形の形を保った状態のものがそこには生まれつつもある。
「シャル……でも……」
「ほむらが救いたいのは違う人物でしょ?」
「どうして――」
 それを知っているのだろうか……? 自分の物語以外のことなのに……。
 神託というのはそこまで教えてくれるものなのだろうか……?
「最後は、やっぱ笑顔でしょ? それにようやく眠ることができるよ。ゆっくりと、ゆっくりとね……。好きなものだってきっと食べれるようになれるさ。天国ってそういうところなんだよね?」
 
 ――天国なんていけないよ。なんて言葉はかけられなかった。
 
 私のために犠牲に、魔女となってしまうシャルに……。私は――。
「だから、殺してほむら。あなたが救う少女のためにも、わたしのためにも……さ」
 シャルという魔法少女は消えて――魔女が生まれる。
「うぅ……」
 赤い光で満たされた人形が魔女となった瞬間、砂で満たされた砂時計が静かに動き、私と魔女が本来の時へと戻り始めていた……。

 ――お菓子の魔女シャルロッテ。彼女は肉体を二つ持っているわけではない。
 
 ……双子で一つの魔女の姿なだけ。
 でも、そのことを知るのは誰もいない。過去へと戻った私以外誰も知らない。
「さようなら――シャル」
 私は静かにその元から、消える。もう二度と会うこともない、ずっと未来の場所へと――。

 ……あぁ、あなたの好物を聞くのを忘れてしまったわ――。
「シャル……、ごめんね」
 彼女の最後の言葉を思い出し、笑おうとした私の口は、一ミリも動かなかった。
 
 ただ――数滴の水の流れを感じるだけだった。

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