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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】嘘と現実
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2014.01.11
「姫糊始め」の意で女が洗濯や洗い張りを始める日とも……というテーマで書いてみました。

 ※Skype上で行われたまどマギSSコンペの参加作品、テーマは『姫始め』です


 あたしは宿泊してるホテルの客室の窓から、街の様子を眺めてた。
「……」
 どこに魔女が、使い魔がいるか少しでも把握したいってのも当然あるけど、少しでも居づらい今の空気をどうにかしたいって気持ちも少なからずあった。
「……」
 というか、こっちを実のところメインに考えてた。っていうのにさ、結局何も浮かばずじまいだ。客室の外を眺めてる内に良い手段がてっきり簡単に浮かぶもんだって思ってたんだけど……そもそも相手はマミだ。あたしの手の内なんて手に取るくらいわかるだろうし、生半可な方法を使ったとしても、こいつはこの客室から出ていきやしないだろう……というか、あたしがこの客室にマミを入れた時点でもうお仕舞いだったかもしれない――招かれざる客をあげるなってさ。
「……」
 窓から街を眺めるのを止めて客室に目を向けると、マミの奴はもう大体の『作業』を終わらせてたみたいだった。
「なぁ、マミ」
 だから、あたしはダブルベッドに腰掛けてるマミの奴に声をかけた。本当はいつまでも外を眺めて、マミの存在を無視し続けても良かったのだろうけど、生憎今は昔みたいな関係じゃない。とはいっても、昔のような関係に戻ったわけでもない。
 ……だけど、そんな小さいことと、声をかけないのは全くの別だ。逆に変な不信感を持たせちまう、と考えてはみてもさ、マミは楽しそうに『それ』をやってるから、もしかするとそうは思わっていねぇのかもしれない……。
 いや……ちょっと待て……? もしかして、あたしはあいつにはめられたのか……? 今のこの状況――魔法少女が五人も見滝原に集まってるこのありえねぇ状況を作ったのはほむらだ。今回の『これ』もひょっとすると、あいつの差金か何かだったりするのか? だとすると、『杏子が困っているわ』なんてことをわざわざマミに吹き込んだってのか?
「何、佐倉さん?」
 いや考えすぎ……か。例え仮にそうだったとして、今のマミの行動にその言葉はあり得ねぇ。説得のかけら一つすらない。
 第一にあたしは絶対しない。頼まれてもしやしない。そもそも考えなんてしもしないだろうさ。だから、ほむらは何もマミには言ってない。言うメリットがそもそもあいつにない。ワルプルギスの夜との関係性が『これ』とそもそもないしな。
「……っ」
 そうだ……言ったのは、むしろあたしの方だ。ここに住んでると言ったのはあたしだ。だからこの事態もあたしが作った。他の誰でもないこのあたしなんだ。
 ……後悔先に立たずってか。
「どうしたのかしら、急に黙りこんだりして? 何か悩みごとでもあるのかしら?」
 考えるだけ考えたし、もう口に出しちまったし、あたしの長い沈黙のせいでマミはこっちを見ながら首を傾げ始めやがったから、もう口に出すしかない。それでも、
「いや……さ」
 あたしはどうすべきか一瞬だけまた迷って、
「別にあたしはそんなこと頼んでないのに、どうしてすんだよ?」
 結局口に出した。この客室にとって――ある意味客人になったマミがなぜ『そんなこと』をしてるのか、あたしには想像がつかない。範疇外だ。
「そうね――、」
 マミがあたしの最後の服を畳み終えると、ダブルベッドの上へ置いた。
「あなたを放っておいたら、いつまで経っても洗濯しないからじゃぁ……ダメかしら? 答えにならない? もしくは、私がしたかったからじゃダメかしら?」
「あのなぁ……」
 それが答えになるとでも本当に思ってるのか……?
 どうして、赤の他人の服を洗濯するのかって答えにさ……。それにその答えが何であれどう考えても、マミの行動は奇怪にしかあたしには思えねぇよ。
「大体……こんなのは魔法でどうにかできるだろ?」
 ダブルベッドの上で綺麗に畳まれたあたしの服に目線を向けた。それもピラミッドみたいに積み重なってやがる。誰もこんなこと頼んでないってのにな。
「それじゃぁ、きちんと汚れは落ちないわ。気持ちが入ってないもの」
 それじゃ魔法は気持ちが入ってないってことか……? 少なくともソウルジェムが曇るくらいには想いは多少の違いがあっても入ってるはずだぜ?
「はぁ……やらせるだけ、やらせてこんなこというのもアレなんだけどさ――、」
 大体何で洗濯なんだよ。他にもやることあるだろう? ケーキ食べたり、紅茶飲んだりさ……そういう何かがさ……どうしてよりにもよって洗濯なんだ?
「洗濯なんて、それこそ今じゃコインランドリーってのがあるだろ? アレで十分だろ」
 思い出して見てもやっぱ奇怪にしか思えない。
 マミのやつは……突然あたしの客室にくるなり、『もう! こんなに散らかして、女の子なんだからもっと気を使わなきゃダメよ?』そんなことをつぶやきながら、あたしが脱ぎ散らかしてた服を全部拾ってどっかに行ったかと思うとすぐに戻ってきて、今みたいに服を畳み始めやがったんだ。それも石鹸の香りを舞き散らしながらな。
「大体洗濯なんてしなくても平気だろ?」
「そうかしら?」
 また首を傾げられた。
「あぁ、あたしたちがやるべきなのは、ソウルジェムが穢れないようにグリーフシードを集めることで、洗濯じゃない。今はまぁほむらの言う通り、ワルプルギスの夜を倒すために――」
「そうね。ソウルジェムの穢れを保つことももちろん大事だわ。でも佐倉さん、私たちは魔法少女である前に、ただの女の子なのよ。私もあなたも同じ。暁美さんも同じだわ」
 マミはそういって真剣な表情へ一変させると、
「ここもそうだけど、そもそも食べ物をいつもどうしているのか、そもそもどうやっていつも泊まっているのか、わからないことを教えてくれないかしら?」
 そんな言葉を続けた。やっぱり奇怪なことをしていようがいなくても、マミはマミだ。生半可なことを言って納得しちゃくれない――あたしの知ってるマミだ。
 だからといって、素直にこっちが答えないのも知ってるだろう?
「おいおい、聞いてたのはこっちが先だろ?」
「でも、私は答えたわ。次は佐倉さんの番」
 真剣な声色でマミは話してきた。ほんと……何も変わってない。
「はぁ……わかった、わかったよ。言えばいいんだろ? それでマミが納得するなら、それでいいんだけど……」
 絶対に認めないだろうな。少なくともあたしのよく知る巴マミは絶対に認めない。
「何? 言いづらい原因でもあるの?」
 マミは一旦首をまた傾げると、何かを思いついたように表情を変えた。
「まさか――、」
 だから、先読みして言葉を作った。
「人殺しなんてしてねぇよ。少なくとも今も昔もな」
「……私そんなの考えてもみなかったわ」
 途端に驚愕の事実を知ったみたいな顔をされた。
「ちっ……」
 墓穴を掘った。
「佐倉さん、まさかそんなこと考えながら、生活しているんじゃないでしょうね? もしそうなら――、」
 あぁ……また長いマミの説教が始まちった。まぁ……墓穴を掘ったのはあたしなんだから、文句一つ言えやしないな。素直に聞くつもりもさらさらねぇんだけどな。
「私絶対にゆるさないわよ」
「じゃぁ、どうするっていうんだよ?」
「そうね……」
 そういって、マミは俯き顎に右手人差し指を当てながら何やら考え始めた。
「もし私の家がそんなに嫌なら――、」
「さやかの家か?」
 面を上げて思いっきりこっちの顔を見てきた。マミが考えることなんて、あたしだって大体わかるんだよ。さっきは少し間違っちまったけどな。
「……そう美樹さんの家に下宿させてもらうのはどうかしら? 美樹さんの方は別に構わないって話をこないだしたのよ」
 だからといって、『はい』って簡単にはいかねぇんだよ。ってか、本人がいないところで勝手に話を進めんなってんだ。あたしはマミの持ち物か……? それともさやかの持ち物か……? どっちでもねぇ、あたしはあたしだけのものだ。
「ふーん、それで……?」
「それでって……あ、あなたね?」
『話聞いていたの?』マミの怒鳴り声が客室を響きわたせた。さやかがお気に入りなあの坊やのヴィオリンの方がまだ聞こえがいいってもんだ。
「……はぁ」
 声がもれない程度のため息をあたしはついた。なんであたしはマミの説教を拡大拡張することばかりさっきから、言ってるんだ? 馬鹿みたいだな、本当……。
「いい、わかっているの? それはね――」
 でも、こうしてマミの言葉を聞いてるとどうしてだか――まだまだ魔法少女としても、人間としても弱かったあたし……、マミと一緒だった昔を思い出しちまう。
「……」
 本当にこいつはあの時から何も変わってない。変わったのはあたし……か。
「――ってこともあるじゃない? だから、絶対近くにいたほうがいいと思うの」
 マミの奴はある程度怒り終えて満足したのか、一度咳払いをすると、
「じゃぁ、暁美さんの部屋は……? 私はあまりお勧めしないけど、少なくとも今は私たちの仲間なのでしょう?」
 口直しみたいにそんな言葉を続けてきた。
「あいつか――、」
 あいつが仲間か……確かにそうなんだけどさ、
「それはもっと嫌だね」
 ほむらは別だ。あいつの部屋で寝たこともあるけど、なんだろうな。ここじゃないどこか別の場所。魔女結界でもない、何か嫌な感じがあいつの部屋からした。
 素直にいえば、きな臭え。手の内が読めないってのも当然あるっちゃあるけど、ほむらの奴が一体何を考えてるかわからない。
 それは魔女結界で見ようが、ベッドの隣で見ようが、どこから見てもあいつの表情がわからない。まだ、さやかの方があたしにはわかるってもんだ。
 だから、あいつの部屋に下宿なんて、もとより眼中にない。その辺の路地裏で寝転がってる方がまだマシなくらいなもんだ。
「あぁそれとな……まどかの家もダメだぜ。なんていうか、弟が可愛くてダメだ」
 マミもダメ、さやかもダメとくれば、ほむらもダメだとくれば、もうまどかしか残ってないからな。先に言葉に出しちまえばこちらの勝ちだ。
 まぁ……何に勝つのかなんてわかんねぇけどさ。
「何それ? 理由になっていないわよ」
 浮かない顔をしながら、マミが言葉を返してきた。
「いいんだよ、そんな理由で」
 意味なんてないんだよ、マミ。そんなもん考えたら、あたしはダメになるかもしれない――だから、大人しく諦めてくれって口を開こうとしたら、
「じゃぁ、やっぱり私の部屋に昔みたいに下宿することにしましょう」
 満面の笑みで先に答えられた。
「……だから、それは――、」
 最初に断っただろう? こいつは人の話をとか言う割に、自分が聞いてなかった口か?
「断ったわね? でも、いい?」
 マミがそう言いつつ急に立ち上がって、こっちに歩いてきた。
「んっ、あぁ――、」
 窓を背にしてたせいで、逃げ場がない。というか、予想外のことで反応が遅れたこともあったけど、
「私たち今はまた仲間なのよ。だから――、」
 マミの勢いが速すぎて逃げる前に、
「また……頼ってくれてもいいのよ、佐倉さん」
 あたしの両手はマミの手でがっしりと掴まれてた。
「……暖かいな」
「そうよ……今はもう一人じゃない。私たち二人っきりでもない。あの時と違って、たくさん仲間がいるわ。みんなと一緒にいれば、ずっと暖かいわ」
 あの時……みたいにか。何かが頭のなかをすっと横切った気がする。暖かったマミとの思い出とか、あたしの家族の思い出とかそんな色々が見えた気がした。
「ねぇ、ダメかしら? 別に今すぐってわけじゃないわ。いつでもいいの。佐倉さんの心が変わった時でも構わないわ。ううん、それじゃぁ、ダメね」
「そうか?」
「そうよ、早いほうがいいわ」
 人の温もりがこんなに暖かいんでって、いつから忘れてたんだろう。いつから考えねぇようにしてたんだろう。
 色んなことを考えてたはずなのに、
「……それも……そうかもしれない……な」
「だから――、」
 あたしは
「今から私の部屋に行きましょう」
 マミに抱きしめられて、
「……しかたねぇな」
 いつの間にか頷いてしまってた。ほんのり洗濯物と同じ匂いがするマミの温もりに包まれて、あたしは気づいたら泣いてた。
 そんなあたしをマミは泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。

 本当は……ずっと前からわかってた。
 ほむらのやつが現れた時からずっと、嘘をつき続けてた――自分の心に。
 だから、待ってたのかもしれない。
 いつか、もう一度マミに受け入れられてもられるタイミングってやつを――。
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