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R.U.K.A.R.I.R.I | 【シンフォギアSS】レセプターチルドレン
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2013.09.24
9話を見て、設定を読んでいた時に思い浮かんだことです。解説というか、考察に近いもの。


「……っ!」
「……こんなことがマリアの望んでいることなの……? 弱い人たちを守るために本当に必要なことなの?」
「……くっ!」
 言葉は返ってこなかった。
 でも……マリアの表情を見れば、十分だった。静かに震える肩が全てを物語っていた。
「……ん」
 私にはその苦しみ自体はわからない……だけど、
「し、調!?」
 マリアが苦しんでいるのだけはわかる。
 だから――私は行かなきゃいけないんだ。
「……」
 狭い通路を抜けて、搭乗ハッチを開けた瞬間――、
「何やってるデスか?」
 切ちゃんが追いかけてきてくれた。
 切ちゃんも同じ気持ちなんだよね?
「……」
 振り返って、その顔を見てもよくわからなかった。
 けど、切ちゃんならきっとわかってくれる。
「マリアが苦しんでいるのなら――」
 あの時、マリアと切ちゃんが私を助けてくれたみたいに、
「私が助けてあげるんだ」
 私はノイズに襲われている船の甲板目指して、飛び降りた。

 あれはまだ施設にいた頃――それもレセプターチルドレンの一人として、米国政府施設内で、毎日のように非合法な実験が行われていた時のこと。
 フィーネの刻印を引き継ぐ可能性のある器を探して集めるに集めた施設。そこは子供がいつの間にか増えて、子供がいつの間にか消えるのが日常だった。籠の中の鳥。まさにそんな場所だった。
 その施設では、何度も何度も痛みつけられた。痛みを感じない日なんてないくらいになかった。誰も『助けて』って声を聞いてくれなかった。どんなに傷ついても誰も助けてくれない。大人は私たちに文句を言うばかりで、こっちのことには何一つも答えてくれない。
 救世主も、英雄も私たちの周りにはいなかった。
 だから――私は何も感じないことにしたんだ。感情をアンインストールした。この世界で生き残るには、ココロなんていらない。少なくとも、あの場所ではそう思わずにはいられなかった。

 悲鳴が毎日どこからか聞こえてきた。今日も誰かが実験を受けている。その事実に震えながら、死んだような目をほとんどの子供たちはしていた。頭に包帯を巻いた少女、ずっと泣いている少女、大人に反抗して打たれ続けている少女、色んな子供たちがいた。
 そんな子供たちの中でも、一人だけは雰囲気が違っていた。
 ――マリア。
 マリアだけは、実験から帰ってくる子供たちを優しく抱きしめていた。子供たちはマリアに抱きしめられながら、泣いていた。
 でも、私はその中に自ら入ろうとはしなかった。ただその姿を眺めているだけだった。実験から帰っても、マリアを抜けて、私はいつも同じ灰色の床で体育座りして、何回繰り返しているのかわからない次をただ待つだけだった。

 実験は日を追うごとに、数を増していった。
 その結果、一人、また一人と子供が消えても誰も口にしなかった。
 誰がいなくなろうと私には関係なかった。ココロを忘れれば、何も辛い気持ちなんてない。誰とも話さなくても、触れ合わなくてもよかった。
 そんな勘違いを、その時はまだしていた。

 実験はある程度完了したのか、一定の期間が経過すると、後天的なシンフォギア適合者での模擬戦以外行われなくなった。
 そのせいか、適正のない子供の扱いが変わった。まるで腫れものを扱うように全く干渉しなくなった。そのせいか、やせ細っていく子供が増えていた。
 そんな子供たちに唯一干渉していたのはマムだけだった。いつも食べ物や飲み物を配っていた。
 マムとその側にいる若干の大人たちだけは、私たちに優しかった。
 LiNKERによる後天的なシンフォギア適合者はマリア、切ちゃん、私の三人以外に奏者の条件を満たしている子供はいなかった。

 模擬戦では……いつも私は失敗していた。
「あなたと切歌、二人で一人なのですよ。それが女神ザババのシンフォギアを纏うものの力となります」
 いつもそうやってマムに注意されていた。
 あの時は、
「……なら無理」
『どうして、こんな口うるさい娘に合わせないといけないんだろう。大人に反攻しかできないただの子供なのに』って、そんな風に切ちゃんのことを思っていた。
 私がそう口走れば、
「調、どうしてデスか!?」
 案の定、切ちゃんは騒ぎ立てた。
「……どうしたもない」
 その声を無視して、私は模擬戦に参加し続けた。

 そうして繰り返す模擬戦の成果はいつも変わらなかった。
 悪くもなく、良くもなく。でも……それは大人には都合が悪いらしく、私は度々叩かれた。何度も叩かれているうちに、頬の痛覚がよくわからなくなった。元々ココロを消した私にとっては好都合だった。
 これで痛みも感じなくなる、そう思えた。
 制裁をされたすぐ後にも、模擬戦は続けられた。
 なくなって良かった、これでもう失敗は増やさないと思っていたはずなのに、
「えっ――、」
 どうしてなのかいつもと違って、手元が狂った。手が震えていた。そのせいで切ちゃんの攻撃に合わせることができず、機械を壊してしまった。
 そして気がついた時には、
「……っ!」
 壁に投げ飛ばされていた。
「――もうやめて!」
 痛みで思うように動けない私に見えたのは、
「マ……リア?」
 再度制裁を加えようとした大人の前に立ち塞がっているマリアと、
「……調は悪くないデス! わたしが合わせられなかっただけデス! だから、叩くならわたしを叩くデスよ!」
 切ちゃんの後ろ姿だった。
 大人たちがその言葉に切ちゃんに手をあげようとしたところで、マムが実験場に入ってきて、その大人たちを止めた。
「……別にあなたたちに助けて欲しいだなんて思っていない」
 私は痛みに耐えながら、身体を無理やりおこして、そう言い放った。
 誰も助けてくれない、正義の味方なんて存在しない。優しさなんてどこにもないんだって思っていたから。
 でも、
「わたしたちは――血は繋がっていなくとも姉妹と同じなのよ。だから……もう二度とそんなこと言わないで……」
 マリアはそんな私のことを抱きしめてくれた。
「えっ――し、まい?」
 あの時の言葉とマリアの身体は、暖かったのに凄く痛かった。
 今まで注射も薬も暴力も、何も感じなかったのに、
「ぅ……」
 ちくって胸が痛んだ。
「ごめんね、調」
 切ちゃんが泣いている姿を見て、私もなぜだか涙が零れた。

 私の今ここにある痛みは、あの時感じたものに似ていた。
 マリアを見ていると、ちくって痛んだ。だから、私は行くんだ。
「プリオール シュルシャガナ トローン」

 マリアが私を助けてくれたみたいに――今度は私が助けてあげるんだ。
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