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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ Chapter of Sakura その4
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2013.08.22
暁美ほむらが巡ったもう一つの物語。
新たな魔法少女との出会いが、今始まりを告げる。

それは脅威なのか、救いなのか?

その3

※更新速度が遅いので、完了までに時間がかかります。


☓ ☓ ☓

「はい、はいっと――」
 わたしはキュゥべぇと一緒に外に出てた。
 本当は、先生たちに『病院の外へ出てはいけない』って言われてたんだけど……。
 キュウベぇに魔法少女として、病院の外で魔女と戦わないといけないと言われたから、出ないわけにはいかなかった。それが魔法少女の仕事なんだって。
 でも、わたしは『病院の外に出れないから、どうすればいいんだろう?』って困ってたんだ。そしたらキュゥべぇに『魔法を使えばいいんだよ』って言われたんだ。
 それでキュゥべぇの言った通りにしたら、クマの人形をみんな、わたしだと思って話しかけはじめてた。不思議な光景だった。ドラマをみんなが演じてるみたいで、凄かった。
 そのせいで――これならいつでも外にいけるって感動してたら、思わず、
「すごい……。魔法、これが魔法なんだね」
 って声が漏れちゃったんだけど、誰にも聞こえてないみたいだった。
 これでやっと、わたしもようやくみんなと同じスタート地点に立つことができたんだ。
 キュゥべぇと一緒に歩き始めて、大分病院から離れた場所にきてた。
 もうここがどこだかわからない。
 帰りはキュゥべぇが同じように案内してくれるみたいだけど、ちょっと不安感と疑問感が頭のなかで渦まいてた。
 実は、これはみんなウソで、わたしを元気つけるための演技。そんな風に少しだけ思ってたんだ。だって、歩けるようにはなるかもしれないけど、猫がしゃべることなんて絶対ありえないと思うんだ。
「もうすぐ着くよ」
 わたしたちが歩いてるところは人気がない場所なのか、とても暗かった。周りには縦に長いビルがたくさんあって、その近くの工場現場では何かを作ってるのか、少し油臭かった。
 油ってこんなに臭うもんなんだね。あんまり嗅いだことないな。というかこれって本当は油の匂いじゃないってことはないよね? 家で匂ったこともあるし、多分そうだと思うけど……機械の匂いとは違うようだし、なんだか特別な匂いにも思えてきた。
「うーん」
 こんなに夜遅くだから人がいないのかな。
「うわぁ――」
 思わず空を見上げたら……月が綺麗だった。ビルと、ビルの隙間から見える月はとても神秘的だった。まるで月がかくれんぼでもしてるみたいで、可愛く見えた。
 そういえば、夜空もあんまり見たことなかったな……。
「さぁ扉を開くんだ。手をかざして開けと心に願うんだ」
 視線を下に戻すと、キュゥべぇがある場所で立ち止まってた。
 そこにあるのは、ただの壁だった。ビルの壁。コンクリートの壁。特別な壁にはとてもじゃないけど見えない。
「目的地……?」
 目を凝らしてみると、何か文字みたいのが壁に落書きされてた。
「……読めないなぁ」
 最低限のひらがなと漢字は読めるつもりだったけど、見たことのない文字だった。暗くて読めないわけじゃない。文字は赤く点滅してて、はっきりと形が見えてた。
 これって、蛍光塗料の一種なのかな。それが月に照らされて光ってる?
「手をだしてごらん、そして願うんだ」
「そうなの……?」
『開いて』って願えばいいのかな。それなら簡単だね!
「扉よでろー!」
 声とともに、それっぽく言われた通りに右手をかざしてみた。
「えっ――な、なに!?」
 手をかざした途端に壁が光りだして、丸い扉のようなものが急に現れた。アニメでみたことあるフラループみたいな形だった。
「これが……扉?」
 確かに、念じたけど……これって簡単に出るものなの? 魔法少女なら、当たり前のことなの? どこかにマジックのタネみたいなのがあったりするのかな――そんな色々な思考が走るわたしを置き去りにするように、
「さぁいくよ、さくら。これからが魔法少女としての仕事さ」
 キュゥべぇはそういって、その出現した扉に一人先へ歩いて行ってしまった。
「えっ、キュ、キュゥべぇ!?」
 扉の奥は、暗くて薄気味悪くて、ちょっと遠慮したかったけど、
「ま、待って……」
 慌ててキュゥべぇに遅れないようにその扉の中へ入ると、
「な、なにここ……!?」
 見たこともない、へんな空間に出たんだ。
 なにこれ……やっぱ外から見えた通り、どこもかしこも気持ち悪い景色が広がってた。歪んでるというのか、とにかく普通らしさはどこにもなかった。でも、なんだろうか、
「うーん」
 隔離病室にいた時に、何度か見たことがあるような気もするけど……。
「うぇぇぇ……」
 何か変なのが頭を過ぎって、思わず戻しそうになった。気にはなるけど、あまり気にしないようにしよ。うん、大丈夫……大丈夫。
「そうだ、君はこれから魔女と戦うことになるんだ。そのために変身するんだ」
「変……身?」
『変身』っていわゆる、あの変身なのかな? かわいいフリルのスカートだとか、魔法のスティック等などがもしかして出るやつ!? それとバトルコスチュームですか! バトルコスチュームは基本中の基本って、アニメで見た。それがあるとなしじゃ、力が出せないらしい。
 キュゥべぇのいう魔法少女もそういうものなのかな? わたしの解釈だけではわからなかった。
「そう、自分の中にあるイメージを念じるんだ。そして、ソウルジェムを出すといい。とはいっても、ソウルジェムを外に出す必要性は全くないんだけどね。まぁ、そっちの方がイメージしやすいんじゃないかな、はじめての君にとってはね」
 キュゥべぇがいうのは、いわゆる定番でお決まりの変身シーンの、アレのこと?
「……むむむむ」
 うーん、こういうことなのかな。
 言われるがまま、ポケットから出した黒く紫色をしたソウルジェムを、それらしく右手に持って、突きだして念じてみる。
 超変身だよ、わたし!
「おぉ――、」
 するとすぐにソウルジェムが光りだして、わたしを包み込んだ。
「な、なんじゃこれ!?」
 その光自体は最初だけ凄かったけど、次々に服へ吸収されて、
「あ、あれ?」
 光がなくなると、服が変わってた。
「お、おぉ……?」
 それは、頭に思い浮かべたイメージの服だった。
 小さい帽子に、短パンと、縞々の靴下と、ブーツ。フリルがついた上着は、はじめてマジックを見た時にマジシャンが着てた服に似てた。
 違う……身につけてる全てが、昔、本やテレビで見て、良いなぁって思ってたものだった。
「へぇ――」
 それもかわいいというより、かっこいいって思ったやつ!
「うーん?」
 それにしても――いつの間に帽子を被ってたんだろう? 一度手に持ってかぶり直せば、かぶる感覚はあるんだけどなぁ。
 でも、そんな些細な事はどうでもよく思えた。
 だって――可愛いのは卒業したいなって、嬉しかったから。
 やっとやっと、わたし通りが実現できるんだって、思えたんだ。
「額があつ……な、なんじゃこれ」
 手を当ててみると、額のちょうど中心に何か硬いものがあった。つるつるしててビー玉みたいな感触。
「それは、ソウルジェムだよ」
 ソウルジェム……? 確かによく見てみると、先程まで持ってたソウルジェムはどこにもなかった。
「えっ」
 わたしと合体した……の? 確かに変身アイテムといえば、バトルコスチュームにくっついたりしてたけど、もしかしてそういう感じのものなの?
 でも、
「これが、今のわたし……か」
 その場でくるくると回転してみる。何だか妙にしっくり感がある。もう何年間も『この服を着てた』そんな気がするよ。
 こういう服を着る事自体が初めてなんだけどなぁ。
 病院では常にパジャマだったし、たまにお出かけ用にワンピースなんかも着たことがあったけれど、それは結局ママのセンスで、わたしのとは全然違う。
 病院の外に出るために着てた服なんかは、ただのボーイッシュ感あふれる短パンと、Tシャツだけだった。ただこれもママのセンス。でも――この服は、わたしのセンスだけ。
 そう思うと、嬉しくて堪らなくなりそうだった。
「それが君の魔法少女としての衣装だよ」
「……」
 もう、キュゥべぇの言葉を疑えなかった。
 魔法も、魔法少女もあった。わたしに起こった奇跡も、奇跡なんだと信じれた。
「そして、君はこれから魔女と戦わなければならない。それが魔法少女としての使命なんだ」
 よくわからない通路を歩きながら、キュゥベぇが話しはじめた。
「戦うって、わたし運動苦手だし、勉強もできないし、何もできないただの病人だよ? それにその魔女って一体なんなの? どんな生き物なの?」
 そう、わたしはサイアクでしかない。歩けなかったし、運動なんてルールすらわからない。
「大丈夫さ。手をかざしてご覧」
「こう?」
 その場に立ち止まると、また、言われた通りに手をかざしてみる。
「何か……温かい感じがするよ」
「そのまま目を閉じて、その感覚を研ぎ澄ますんだ」
 目を閉じて、感覚を研ぎ澄ます……?
「ん……?」

 ――この温かいってイメージを強く持つのかな。

 目を閉じてそのイメージを強く、念じ始めると、
「……」
 右手が熱を持ってく感じがした。
 その勢いが、少しずつ、少しずつわたし全身を包みこんでくる。
「っ!?」
 その熱が外に出てしまう錯覚に驚いて、目を開けた。
「お、おお? なんだこれ……!?」
 するとわたしのまわりには、いくつもの短剣が現れていた。数は数えきれないくらいあった。もしかして、わたしが召喚したの?
「……?」
 短剣に触ってみた。短剣を握る、放す。何をしても、短剣は空中に浮いた。
「お、おぉ?」
 これもわたしの魔法? 魔法なのか?
「……」
 短剣を持つ感触に違和感がなかった。ないのが違和感なのかもしれない。さっきと同じように空中の短剣を握ったり、放したりしてみた。
 ――やっぱり。
 短剣を持つのが自然な気がした。身体の一部みたいなそんな感じ。果物ナイフですら、触ったことないのに。何か変な感じで、気持ち悪かった。
「これが大丈夫な理由?」
「そうだね。魔法少女は魔女と戦う手段を持っているんだ。そうすることで、対応できるはずだよ。その違和感もすぐになくなるよ。そんなものないって思えば、大丈夫だよ。ボクを信じてくれないかい?」
「わかったよ、キュゥべぇ」
 仮にもキュゥべぇがいうことなのだから、きっとそうすれば大丈夫に違いない。
 でも、こんなものを使わないといけないのか。じゃぁ魔女は、絵本やアニメに出てくる、不思議な形をした化物か何かなの……かな?
「さぁ、いこう。もう近くだよ」
 キュゥべぇが先に進んだ。
 その先――通路の奥には、今までに見たことないくらい大きな扉が見えた。巨人でも通れそうなくらいだった。
「ん……!?」
 それが勝手にゆっくり開いた。キュウべぇの後に続くようにその扉に入ろうとしたら、
「あそこにいるのが魔女さ」
 キュゥべぇがわたしの肩に登った。何度も抱きしめたことがあるけど、全く重みのない重量だった。パパやママが知らない色んなことを知ってる本当に不思議な白猫。
「魔女……?」
 扉を超えた先には、広い空間があった。それも円形に広い場所。それはある一点を中心に円を作ってあるみたいだ。
 その中心点には、
「な、なにあれ……!?」
 見たこともない黒い塊が脈をうつように動いてた。

 ――気持ち悪い。

 それは最初からわかってたことかもしれない。入る前もそう、入ってからもそう。気持ち悪くないと思わないことなんて少なかった。
 予想してたことなのに――どうしてだか手足が震えてた。
「あ、ぁ……」
 目の前にはよくわからない生物。
 それはナメクジみたいな細長い胴体と、先端にある触覚で、ただでさえ昆虫が嫌いなのに、もう気分は最悪だった。
「ぅ、うぅ……」
 でも――わたしは魔法少女になったんだ。だったら、あの気持ち悪いのをやっつけるしかない……!
 わたしの周りにはたくさんの短剣。これを使えば……!
「ふぅ……」
 意気込みをかけると、震えが少しずつ止まってきた。大丈夫、いける。ここまでやってきたんだ、やるしかないんだ。
 やらなきゃ、わたしは魔法少女じゃなくなってしまう。

 ――あんなわたしに戻るのも、あんな生活に戻るのは嫌だ。もう嫌なんだ……嫌だ!

「……っ!」
 でもどうすれば、この短剣を使うことができるのだろうか。魔法少女は魔法を唱えたりするもんじゃないの? そう……呪文だ。だけど、この短剣たちはそんなことせず、わたしが念じたら出てきてくれてた。
 何かが『わたしの知ってる魔法少女』とは違う気がした。
 キュゥべぇは正しいんだよね?
「さぁ、魔女を倒そうよ」
 肩に乗るキュゥべぇがいつもの抑揚のない声でそういった。簡単に言ってくれるなぁ、もう。こっちはまだ魔法少女がわからないのに。少しぐらい教えてくれてもいいのに、もしかしたら聞いたら答えてくれるのかな?
 でも、魔法少女って自分で勝手に出来ちゃうもんだよね?
「ふぅ……」
 深呼吸したら……震えが止まってきた。いける! いくしかない。魔法少女のイメージはまだ浮かんでこないけど、ここに一杯あるなら!
「……にゃろう!」
 短剣に念じたのは、『わたしの手元に来て』と、『魔女に飛んでけ』だった。
 近づいてくる短剣をつかんで投げて、つかんでは投げた。
「うりゃっ! うらら!」
 一直線に魔女へ、投げ込んだ数多くの短剣が次々に突き刺さってく。投げても、投げてもわたしのまわりにある短剣はなくなることはなかった。逆に増えてるようにも見えた。
「○△!」
 魔女が雄叫びをあげた。何を言ってるのかはわからないけど、この攻撃はどうやら効果があるみたいだった。
 短剣は消えない。投げたら、投げた分だけ出現する。やることは一つしかなかった。
「よしっ!」
 さらに投げること!
「えっ?」
 だけど、今度はうまくいかなかった。いつの間に現れてた魔女の触手が短剣を弾いてた。最初は油断してからとか、そういうこと!? そうだよね。あれが生き物なら、思考回路みたいのがあるかもしれない。
 ……生き物か。でも、魔法少女の敵で、キュウべぇの敵なんだよね?
「あっ」
 攻撃の手をやめてたら、魔女がその形を変えはじめた。黒い塊の中から、触手のような棒状のものが生えてきた。それと一緒にわたしが投げこんだ短剣が外に排出されてた。
 もしかして、最初の攻撃も本当は効果なし?
「えいっ!」
 とりあえず、その触手に向けて短剣を投げてみる。
「危ないよ、さくら!」
 キュウべぇの一言に、
「えっ?」
 身体が反応して、足を一歩引かせてた。足があった場所を見てみれば、投げたはずの短剣が、その場所には突き刺さってた。キュウべぇの声に気づかなかったら足に刺さっていたかも……。
 魔法少女には、こんな力もあるんだね。こんなにも身体を早く動かせるんだ……。
「……」
 再び魔女を見てみると、短剣を弾いた時と同じように、棒状の触手をゆらゆらと揺らしながら、こちらを見てるみたいだった。
「うーん」
 その様子から察すると、あの触手が高速に動いて短剣を弾いたんだよね。あれがある限り邪魔で、
「あれがある限り、短剣は投げても当たらない……か」
 短剣なら、やっぱり直接斬ったほうがいいのかな? 元々そういうものだと思うし。
 でも、それをするにはあの触手を避けないといけない。早く走らないといけない。
……わたしはうまく走ることができるだろうか。

 ――はじき飛ばされた短剣を回避できたのだから……大丈夫。

 そう、わたしは魔法少女なんだからいける。どこまでも歩いて、行けるはずだよね?
 走る決意は出来た。あとはタイミング次第……か。
「キュゥべぇはここにいてね」
 肩に乗っていたキュゥべぇをその場に下ろす。少しでも速く動くには軽いほうがいいと思った。それにキュゥべぇに何かあったら非常に困る。病院に戻れなくなっちゃう。
「……」
 魔女の触手は一定のリズムで動いてるみたいだった。
 つまりは、そのリズムに合わせるように、一瞬で避けて攻撃すればいいってことかな。
 なら、
「っ――」
 行けると感じた時には、もう目の前には魔女の姿があった。
 近くで見ると余計に気持ち悪い。でも、これなら……! 動けると思ってた以上に身体は軽くて、速く動かせてた。
「遅いよ!」
 わたしを妨害するために、触手が迫ってきた。その動きははっきりと見える。
 触手のなぎ払いをしゃがみこみ、続く攻撃も、
「ふぃ、へやっ!」
 うまいこと全てかわして、触手の根元に向けて短剣を振りかざした。
「や、やった!」
 台所で聞いたことのあるニブイ音ともに、触手が何本も空中へと飛んでいった。
 これで大丈夫!
「危ない、さくら!」
 キュゥベぇの叫び声で我に返ると、
「えっ!?」
 空に飛んでいったはずの触手がわたしの頭上で、垂直に陳列して並んでた。
「え、えぇええ!?」
 そして、それがわたしへと降り注いできた。
「ぐぅぅぅ!?」
 回避できなかった。
 足が動いた時には、その足にしっかりと魔女本体からの触手を絡まされて、少しも動かせなかった。その触手は、足を伝って、
「く、苦し、い……い、たい」
 わたしの首を締め付けてきた。
 なんとか……しないと! この触手、斬っても動くなんて聞いてないよ!
「うぅ、う……!?」
 だんだんと目の前がくらくらしてきた。早く何とかしないとこれは危ないってことだよね!?
「あっ、う……」
 突破口はあった。短剣を出現さえて、また斬ればいい。
「うっ――」
 新しく短剣を出現させても大体は飛ばされてしまう。
 でもその中で唯一――生き残ってた短剣があった。
 それも手が届く範囲に。
「く、う」
 右手がもう少しで短剣に届く。
「……!」
 と、届いた!
「らぁ」
 気の抜けた声と共に締め付けてた魔女の触手を全部斬りつけた。
「□△☆!?」
「よし、これで!」
 再度斬りつけようとしたその瞬間を狙われて、
「えぁっ!?」
 魔女の触手に突き飛ばされてしまった。
「くぅぅぅ……!」
 壁にぶつかって痛かった。
「あは、ははははは!」
 でも、痛さが『何だか』嬉しかった。
 魔女の触手は、空中をさっきとは違う動きでくるくると回転してた。
 あれで攻撃をするつもりなのかもしれない。
「……?」
 後ろを振り返ってみると、短剣がいくつか突き刺さっていた。多少これがクッションみたいな役割をしてくれたみたい。
「……ありがとう」
 あの触手と同じようなものなのかな? あれに対抗するにはどうすればいいんだろうか。
「倒したいと、願ってみるんだ。そうすれば、君は魔女に対抗出来る。例えどんな魔女であったとしてもね」
 キュゥべぇが足元に近づいてきてそういった。
「……倒したいか」
 倒したい、うん倒したいんだ!
「う……!?」
 急に立ちくらみがして、おもむろにソウルジェムがある額を右手でおさえたら、痛みがなぜかすぐに消えた。
「えっ……」
 もしかして、額にあるソウルジェムが痛みを消した? 『痛いのなんてなくなって』は確かに念じたけど、そんなこともできるの……?
「えっ」
 痛みがなくなったのとは――別の変化に気づいた。
「黒い、炎?」
 黒い炎が、わたしの短剣の全てを包み込んでいた。
 うっすらだけど、それはわたしの身体にも見える。
「そうだよ、それが君の力だ。“魔女を倒す”ね」

 ――キュゥベぇが笑ってた気がした。

 無表情の白猫だって知ってるのに、わたしには一瞬そう思えた。
「今は――、」
 短剣を両手に掴むと、
「そんなのどうでもいい!」
 前に構えて魔女との距離をつめた。
「……っ!?」
 移動速度がさっきと比べられないくらい、速かった。
 魔女はわたしに攻撃させないように、さっきと同じように触手攻撃をしてくる。魔女の攻撃はどれもわたしに当たらない。それに対処するためか、空中の触手もついに落ちてきた。
「……ん!」

COS3


 あれもそれも、さっきと違う。どこか止まって見えた。
 止まってる触手を回避するのは、すごく簡単なことだった。病院で人を避けるより、ずっとずっと簡単なことだった!
 それに回避しなくても大丈夫だった。わたしが纏う黒い炎は襲ってくる触手を次々と燃やしてた。黒い炎は、攻撃と共にわたしを守るように包んでくれてた。負ける気なんてどこにもなかった!
「これでっ!」
 両手で一つ短剣を握り締めると、魔女に体当たりをしようとした、はずだった。
「あ、あれっ?」
 それは一瞬のことだった。
 目の前に魔女がいたと思った時には、既に目の前に魔女がいなかった。まさかすり抜けた?
 肩越しに振り返ると、
「やったの……?」
 わたしが貫いたと思われる大穴の空いた魔女が、紙吹雪のように散ってた。
 そして気持ち悪かった景色が元の世界の景色に変わり、何かが地面へと落ちた。

 それが、わたしの魔法少女としての、最初の戦いだった。

続く
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