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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ Chapter of Sakura その3
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2013.08.20
暁美ほむらが巡ったもう一つの物語。
新たな魔法少女との出会いが、今始まりを告げる。

それは脅威なのか、救いなのか?

その2

※更新速度が遅いので、完了までに時間がかかります。


☓ ☓ ☓
 
「――♪」
 わたしの身体は大きく前進していた。それは偽りでも幻想でもなくて、
「ほっ、よっと」
 大きくて偉大な一歩だった。
 例えるなら、人類が月にはじめて一歩踏み入れるのと同じぐらいの偉大さだよ。
 車椅子の上から見えた世界と、立って見える世界が、こんなにも違うとは思いもしなかった。
 だから、歩くことがこんなに楽しいことで、すっごい幸せなことって知らなかった。
 みんなと同じ世界をやっと見れるって思うと、嬉しくてどうしようもなかった。興奮しまくりって感じ。立って見えるこの世界が今の世界だ。遠い先までも見えそうな気分。
 でも――これは限定的な世界には変わらなかった。
 わたしはやっぱりというべきなのか、病院から出られなかった。
 でも、病院内は自由に歩ける許可だけはなんとかもらえた。だから、今日もわたしは病院内を歩いてた。歩けるわたし、それが今のわたし。そもそも車椅子の時も病院内は好きに移動してよかったはずなのだけどなぁ……まぁいっか!
「今日はどこいこうかな。どちらにせよ、行ける範囲は限定的だけど」
 もう退院してもいいとわたしは思うのだけど、担当の先生からは、数週間の精密検査がいるって話を散々聞かされてた。勘弁してほしいのが正直なところだけど、確かに歩けない人が急に歩けるようになるなんて、前例はないとは思うし仕方がないって思うよ。
 そもそも意識不明の重体だったらしいし。そんな状態にわたしがなってたって話だけど、よくわからなかった。起きたら、病院のベッドの上で、側でパパやママが泣いてた。
 足が動いたのも実はよくわからない。徐ろにというのかなんというか、立てる気がしたら、出来てたという……そんな感じ?
 仕方ないってわかっても……。
「はぁ……」
 病院に缶詰ってのは正直どうかと思う。以前は普通に出られたのに、屋上も今じゃなぜか禁止された。敷地内にある公園もそうだ。
 禁止されなくても、わたしは外に逃げたりしないのにね。
 もう逃げる必要なんてどこにもなくなったんだもん。嫌な検査だって、いくらでも好きなだけ受けるよ。そんなちっちゃいことはもうでもいい。はやく元気になって、いろんなところに行ってみたい。もっといろんなモノをみたり、触れたりしたい。
 外にはいろんなものがあるって昔から聞いていた。わくわくする。もしかしたら、友だちができるかもしれない。
「ふふっ」
 憧れの学校も、やっと通えるかもしれない。
 いろんなことを考えながら歩いてると、
「ん?」
 見られない白い生き物が、廊下の中央に陣取ってた。
 見たことはないってことはないのだけど、

 ――どうしてこんなところに猫がいるのだろう?

 首輪はつけてないみたいだし、もしかすると野良猫……? でもどこから?
 そもそもここの病院って、ペットの持ち込みは禁止のはず。ちょうどわたしが行けない公園の場所だけは確か大丈夫だったはずなのだけど……、病院内は違うよね? 可能な病院も中にはあるかもしれないけど……。
 そういえば、カウンセリングに動物が必要ってパパに聞いたことがある。あまりはっきり覚えてないけど、わたしもそういうのを体験したような気もする。あのときは、犬だったかな?
 ゴールデンレトリバー、確かそんな犬の名前だったような……? あのワンちゃんの名前は思い出しそうで……思い出せない。
 首を傾げて、猫を凝視してると、
「……?」
 赤い目をしたその白猫は、わたしに丁寧にお辞儀をしたように見えた。
「お辞儀……?」
 猫って、社交的なのかな? 紳士的でかっこいいかも。
 その一動作が終わる頃には、こちらを見ながら廊下の奥へと、音もなく歩いて行った。
「ついてこいってことかな?」
 ちょっと、白猫に興味がわいた。
 だって、お辞儀をする猫なんて。聞いたことも見たこともない。不思議感で一杯だった。
「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」
 言葉が外に出ていたせいか、花柄のパジャマ姿を着込んだおばあちゃんが話しかけてきた。髪は白く染まっていて短髪、右手で木製の杖を使っていた。点滴はつけていないようだ。
 点滴は、何度かつけたことがある。いいものじゃない――拘束具のようなものだ。
 おばあちゃんの顔色はいいから、きっとそんな重い病気じゃないんだろう。わたしみたいに病院から出れなくなる病気じゃないんだろうなって考えると、ちょっとだけ嫉妬心が湧いた。
「……白猫がいたんです」
 口から出た言葉は自分でも分かるぐらい冷めたものだった。
 わたしは人と話すのはあまり好きじゃない。それはわたしが昔あの状態だったからだったからと、今なら思える。もっとも、もうあの状態に戻ることはないと思いたいし、社交的になった方が今後はいいかもしれない。
 生まれた嫉妬心を、頭を振ってかき消すと、決意を抱いた。
 今度から歩きと会話をすることにしようかなって。
「……猫かい? 見間違いじゃないのかい? 動物がここにいたら騒ぎになるよ。アレルギーのお友達もいることだしね」
 よくよく思い出してみれば、話すのが嫌いな理由は妙に相手に気を使わなければいけないからだった。面倒くさいし、自分の思い通りになってくれない。
 たぶん今までわたしがそうされてきたから……悪いのはわたしなだけだ。
 可哀想だから、不憫そうだから、そんなわたしを見る視線が嫌だったんだ。
 でも、今は違う。
「さっきまでそこの道の真中にいたの」
 できるだけ明るい声で、白猫がいた方をおばあちゃんにわかるように指さした。今はいないけど、廊下の中央に堂々たる様子で立っていたはず。
 ――わたしの見間違えじゃない限りは……。
「うーん、お嬢ちゃんの方をさっきから見ていたけどね、そんなの見た覚えはないわね。ごめんなさいね、もう歳かもしれないわ、おほほ」
 わたしは、おばあちゃんに軽くお辞儀をするとその場を離れた。
 話し足りない表情を見せたおばあちゃんには申し訳ないけど、わたしはやっぱり気になったので、白猫の後を追うことにした。誰も知らないものを探す宝探しみたいで少し興奮した。
 わたしは今まで動物の世話をしたことがないし、動物と触れる機会はほとんどなかった。
 猫はかわいいと思う。こうやって近くで見るのは、実は初めてなのかもしれない。図鑑やテレビでしか見たことなかった。
「んっ……」
 確か、こっちに歩いて行ったはずだ。方向は間違っていないはず。
 廊下の先はT字路だった。右の通路も左の通路も、同じような作り。
「…………?」
 気づいてみれば、人が誰もいなかった。
 音すらも聞こえなくなったと、錯覚しちゃうぐらいに、静か。
「……はぁ」
 ここらへんの通路はそういえば、こういう場所だった。看護師も、先生も、患者もここには近寄らない。
 ――ここらへんの施設は、よく覚えてる。
 それは、別に覚えたくて覚えたわけじゃない。必然的にただ覚えてしまったことだった。
 わたしは無意識的にT字路を右に曲がり、右の通路をまっすぐ進んだ。
「……」
 壁の掲示板に貼ってあるチラシ、トイレの場所、何も変わってない。
 できることなら、忘れてしまいたい……だというのに、まだ記憶が鮮明にここの通路を覚えてる。
 やがて、思い出したくもない原因そのものが目に入ってきた。
『特別病室』のプレート。
「……まだあったんだ」
 なくなるはずはないのだけど、もしかしたらもうそんな病室、封鎖でもされたのかなって思ってたけど、それは依然として存在し続けてた。
 ――特別病室。悪い意味でいえば、そこは監禁所だった。良い意味でいえば、特別待遇の病室なのだけど。どちらにしても、いい思い出なんて一欠片もなかった。
 結局は、わたしを拘束するだけの部屋で、自由も何もなかった。地獄の場所。
「……ぅっ!」
 頭に昔のことが少しフラッシュバックした。そのせいか、頭痛がした。いやな思い出ばかりが頭に過ぎる。薬のこと、注射のこと、何かの言葉、たくさんのこと。
「ふぅ……はぁ……ふぅ……」
 頭を左右に振って、考えを改めることにした。わたしはもう地獄から飛びだったんだって、思い直した。
 ――あれ?
「開いてる……?」
 プレートばかりに目がいって、今まで気がついてなかったのだけど、扉が半空きになってるのが見えた。誰か扉を閉じ忘れたのかな?
「……?」
 今どんな人がこの地獄にいるのか――入り口にあるネームプレートを再度よく見ると、

『――特別病室406室  “☓☓☓さくら”』

 そこには――いないはずのわたしの名前があった。
「えっ……!? ど、どうして……?」
 わたしの病室は、一般病室に移動したはず! 前の病室はもうない、ないはずなんだ!
「あぁ……」
 片付け忘れたのかな。そうに違いない。そう思うしかない。
 わたしは普通、普通なのだ。普通、普通、普通、普通、普通、普通、普通、普通、普通、普通、普通。普通……普通なんだ。
 そもそも――特別病室になぜ普通のわたしがいたのかわからない。
『……さくら』
「えっ――誰?」
 その問いに思わず、後ろを振り返ったけど誰もいなかった。
 気のせい……?
「……?」
 再度確認してみて、誰もいない。ここに来るときに誰とも遭遇しなかったのだから、いないのは当然といえば当然だよね。いないものはいない。いない――、
『さくら、こっちだよ。入ってきなよ』
「にっ!?」
 否定したのに、またどこからか声がした。でも、近くに声の主は見つからない。
「うぅ……」
 まさか、幽霊とかじゃないよね? 最近見えなくなってしまったけど、おばあちゃんの幽霊でもなさそうだ。あれも今思うと、ただの幻覚だったのかもしれない。
『大丈夫さ、ボクは幽霊じゃないよ』
「えっ!?」
 何も言ってないはずなのに、その声は依然としてわたしに声をかけてきた。
「この……中からかな?」
 特別病室に入るのに少し躊躇したけど、思い切って扉を開けた。
「えっ――? なにこれ……」
 それが扉を開けて、感じたことだった。驚かないわけがなかった。

 だって、病室の中が“わたしが居たころ”と何一つも変わってなかった。

 病室を移動して、一ヶ月も日時が経過したのに、ここは昔と同じ時が流れてた。
 病室がファンシーグッズに飾られる場所なんて、数多く存在しないはずだ。だから、勘違いでも何でもない。誰かがわたしと同じ趣味をしてるなんて確率は低いだろうし。
「……」
 今更ながら、よくもまぁこんな悪趣味な部屋にいたのだと呆れそうになった。でも、こうすることでしか、地獄を変えられなかった。こうする以外に何も出来なかったんだ。
 こうしてわたしが生活してて少しでも辛くないようにしてくれたパパとママには感謝したい。
 ――ありがとう。
 でも、それを心の奥底から二人にいう日は、退院する時。もしかすると、二人とも泣いちゃうかもしれない。
 口元が緩んだ。
「驚いたかい?」
 ちょっと考え込んでいたわたしに声をかけた主は、ベッドの上に座っていた。
「ね、猫がしゃべった!?」
 そこにいたのは、猫。わたしが先ほどから追いかけてた、あの赤い目をした白猫だった。
 ただ普通の猫と違う所があった。それは耳。耳の中にまた耳のような長いしっぽのようなものが生えてるよ。そんなものどこでも見たことない。他の動物に例えてみてもいない。
 未知の生物が目の前にいた。これって、もしかすると新種の発見者ということになるのかな?
「君は、奇跡を信じるかい?」
 無表情な顔をした白猫がそういった。
「ふぇ?」
 猫の表情なんてよくわからないけど、そう直感的に思った。
「奇跡……? 猫ちゃんがしゃべってるのも奇跡?」
 猫はしゃべったりしない。しゃべるのは人間だけ。でも、理解だけは他の動物でもできるって聞いたことがある。イルカが特にすごいとかさ。
「ボクは、その奇跡を起こせる。とはいっても、願うのはボクじゃないけどね。君は第一にもう奇跡を願っているはずだよ。思い出してごらん」
 猫の言葉の意味がよくわからなかった。でも、
「あっ――」
 同時にどうしてわたしが『今歩いてるのか』が頭を過ぎった。
「え、えぇ……」
 それは、奇跡が起きなければ起こりえなかった。
 わたしはあの事件が例え起きていてもいなくても、本当の居場所は、ここだった。
 再び歩けるようになる可能性はゼロに等しいと、ママと先生が話してるのを盗み聞いた。聞かなければよかった。未来は否定されてた。病院にいても、わたしは何も変わらないって。
 だからこそ、この猫がいう奇跡はこの現状のことだろうと思う。
 先生にもパパにも、ママにもできないことを、このしゃべる猫がした。おそらく、そういうことなんだろう。
「わたしが生きて歩いてる。これがあなたのいう奇跡なの? わたしがそれを望んだの?」
 特別病室の中に入り、扉を閉めた。
「そうだね。君は生きたい。歩きたいと強く願った。それがエントロピーを凌駕して、形となってあらわれたわけだ」
 エントロピー……? 新しい流行語の一つ?
 テレビはあまりみないし、新聞もわからない。アニメはよく見てたけど、アニメだし。なんだろう。えんどろぴーだっけ? 不思議な響きがする。
「君は魔法少女になったんだよ」
「魔法少女……?」
 わたしには、そんな記憶はなかった。しゃべる猫だなんて、そのときまでずっと本や、映画の空想上の生き物だと思ってた。
 何を言っているのか正直わからない。これは学校で教えてくれることなのだろうか? 学校では当たり前のことなのだろうか。わからない。
「……ん?」
 つい最近まで、わたしは意識不明の重体で寝てたから、実は歴史がすごく動いて猫がしゃべるようになったのか。
 それならよくわかるけど、そんなのやっぱり聞いたことない。
「でも、どうしてここは昔のままなの?」
 仮に奇跡でわたしが歩いてるのだとしても、なぜここは以前のままの状態で変わっていないのか。それだけは理解できない。こんな場所なんて嫌。すぐに消したい。なくしたいのに。
「それは、君が無意識にこの空間を止めているからさ。何か特別な想いがあるんじゃないかな」
 ――無意識……?
 そんなことをわたしは考えてるの? 歩けるようになって、嬉しいって感じてるけど、残しておきたいなんてこれっぽっちも考えていない……と思う、たぶん。
 でも、これはきっと違う特別な意味なのかもしれない。嫌だって気持ちは、弱くない。強い感情だと思う。
「消すことはできないの?」
「君次第さ」
「わたしとあなたは会ったことあるの?」
「そうだね、会ったといえば会ったといえるし、会ってないといえば会ってないかな」
 ……? 意味がわからない。
「それって、結局どういう意味?」
「契約はされたってことだよ」
 この白猫が何を言ってるかわからないけど。
 わたしは、どうやら意識不明の時に、無意識に『ただ生きて歩きたい』と、願ったのかもしれない。無意識の中でも、この白猫がいうエントロピーというのは実現可能なのだろうか。可能か不可能でいえば、現実がこうなっているからきっと可能なんだろうけどさ。
「これって、魔法少女ってやめれないの?」
「うーん、無理だね。一度魔法少女になった娘は、ずっと魔法少女だよ」
 気にはなったので、聞いてみた。やはり、無理みたいだった。
 魔法少女ってなんなのだろうか。アニメでいう悪いヤツと戦う女の子のことなのだろうか?
 それと奇跡がどんな関係があるっていうの?
 でも、結果としてわたしが歩けるようになったのだから、きっと魔法少女をやめてしまえば昔の自分に戻ってしまう。だから、やめれてもやめることはしたくない。
「あなたは誰なの?」
「ボクは、キュゥベぇ。君たち少女と契約するものさ」

 わたしは、みんなと同じように自由に動かせる身体が欲しかった。
 だから、魔法少女になったことを後悔しない。
 これが、わたしとキュゥベぇと出会い。
 それが、これから始まる地獄のはじまりだと、知る由もなかった。

~少女の母親の日記~

○月▲日
 日記を書き始めてこんなにうれしく思う日はない。
 さくらが目を覚まして、一ヶ月ぐらいになるだろうか。
 さくらは、自分の力で動けるようになったせいなのか、私たちに笑顔をたくさん見せてくれるようになった。昔は、笑顔をほとんど見せてくれなかったというのに……。
 ずっと、窓を見つめていて、どこか心をここにおいていなかった。
 車椅子に座って外に出ても、帽子を深くかぶり他人から距離をとっていた。
 だから、さくらが笑顔で外を歩いているのをみるのがとてもうれしい。
 神様ありがとう。本当にありがとう。
 ……ただ、ひとつだけ気になることがある。
 それは独り言が多くなった気がすることだ。
 独り言は別に悪いことではないと思う。今まで何も言わなかった分、おそらくその影響なのだろう。
 でも、その独り言は何か楽しそうに話している。
 それは、私たちがいても“誰か”と会話をしているようにもみえた。
 誰かいるのだろうか? 幽霊なのだろうか? もしかして、お母さんなのだろうか。大分さくらを可愛がってくれていたし、守護してくれているのだろうか。
 でも、私には見えない。
 ……きっと、あの人にも見えていないのだろう
 これがずっと続くなら、あの娘の将来が少し心配になった。
 たぶん、大丈夫と信じている。

続く
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