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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ Chapter of Sakura その2
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2013.08.19
暁美ほむらが巡ったもう一つの物語。
新たな魔法少女との出会いが、今始まりを告げる。

それは脅威なのか、救いなのか?

その1

※更新速度が遅いので、完了までに時間がかかります。

☓ ☓ ☓

 一人の少女がベッドで静かに眠っていた。
 ――眠る。
 一般的にはそう呼べる状態なのではあるが、少女は眠るように……ただ目を閉じ、人工呼吸器から送られてくる空気を肺にいれて、外に放出する動作をただ繰り返していた。
 少女は、病室にいた。少女専用に改造された病室の壁紙は、全面ピンクで彩られ、ベッドシーツや、枕カバーに至っても、人気アニメ作品に登場するクマさんの絵柄が描かれていた。ベッドの近くにある戸棚の上には、その作品に登場するクマさんによく似た大きなテディベアが少女を見守るようにちょこんと座っていた。
 病室のベッドに眠る少女は、ベッドから微動だにしない。
 聞こえてくるのは、少女の生命の心音を刻むように、ベッドの隣に置いてある心電図モニターがリズムよく鳴り響くのみだ。それは、少女がまだ生きていることを唯一示していた。
「……」
 窓からは風が吹きこみ、優しくカーテンを撫でつける。
 それはこの場の空気を少しでも変えたいと、誰かが願い叫んでいるようであった。
 その場の空気を作り出しているのは、少女の姿を見つめるように男と女だった。
 叫び声も、願いさえも叫べない二人だった。
「ふぅ……」
 その胸には『面会』と書かれたバッジをそれぞれつけている。他には、誰もいない。
「……どうして、どうしてなんだ。なんでいつもこうなんだ! どうしてこの娘ばかり……!」
 そう低い声でつぶやいたのは、ベッドの隣にあるパイプ椅子に腰を据えて、少女を悲しげに見つめる長髪の男だった。その髪の毛は、黒色に若干紫色の髪が混じっていた。ヒゲは剃っていないのか、整いが悪い状態であった。服はTシャツにGパンだけの流行のファッションを着込んでいる。
「……あなた」
 その男の手を握ったのは同じようにパイプ椅子に座る女だった。髪は男と同じように長髪で、服はどこかに出かけるつもりなのか、キャリーウーマンのようにスーツを着こんでいた。胸には赤いネックレスをつけていた。
「くそ……うっ――」
 男が言葉をつまらせ、つばを飲み込む。
「……」
 ベッドで眠る少女は、男の髪の色に似た純粋な紫色で、セミロングに髪を整えていた。その顔は無表情で何も感情を表に出さない。ただ呼吸をする動作を繰り返すだけである。
「代われるなら、代わってやりたかった。どうして、僕たちが無事なのにこの娘だけがこうなってしまったんだ」
 男がベッドのシーツを強くつかむ。その影響で少し少女が揺れた。
「……そうね。お医者様がいうにはさくらは……の可能性もあるみたいだけど……でも、それは……は嫌よ」
 言葉をつまらせながら女が、男の肩を優しく叩いた。
「医者の言うことなんか、あてになるかよ! 奇跡なんて、起きやしないんさ……。そう、この娘は奇跡か魔法がなきゃ、もう笑うことも泣くことも歩くこともできないんだ……! 元々身体は強い娘じゃなかったけど、一生懸命笑っていてくれた。笑っていてくれた! ずっと、その笑顔を見ていけると思ったのに。あのときだって、奇跡、奇跡と……医者はずっと言っていた! でも、そんなのなんて起きやしなかった! 僕達にあるのは、無駄にこの娘に無理をさせて、期待させるだけしかない。今だってそうだ……ここには絶望しかない……」
 男が少し怒鳴り声の混じった声で語る。
「……そうね、そうかもしれないわ」
「奇跡なんて……そんなものがあれば、この娘は最初っから元気な姿で走り回っていたさ……現実は、これなんだよ……」
 女は、下唇をかみながら少女を視界から外した。
「桜の花びらか……」
 女の視線には、窓から桜の花びらがひらひらと、散って病室へ入ってくるのが見えた。
 それがまるで少女の生命が散り始めたかのように見え、涙腺を刺激した。
「くっ……!」
 抑えていた感情を止めることが出来なくなり、女の目から涙が溢れ落ち始める。
「僕が一緒に連れていければ、こんなことには……!」
 男が顔を歪め、その両目からは涙が滲み、こぼれ落ちた涙でベッドシーツに濁点をつけた。
「あなたが悪いわけじゃないわ! 私がこの娘に留守番なんてさせたのがいけないのよ! 折角の一年に一度の帰省できるときだったのに! 特別な日だったのに、私は、私は……!」
 女の怒鳴り声が、病室内を響き聴かせると、一瞬の静寂の後、風が優しく二人の髪を撫でる。
「やめましょう、この話は……」
 冷静になった女がそうつぶやいた。

COS2

 そして女はかばんからハンカチを取り出すと涙を拭った。そのハンカチには、黄色い刺繍で不出来な文字でありながら『ママいつもありがとう』と書かれていた。
「っ――、」
 それを見た男の瞳が大きく開いていく。
「でもそれでも僕は! 僕は……!」
 テディベアが置かれた棚の隣の机には新聞がおいてあった。
 そこには、『――少女が血だらけの床に倒れていた。原因は不明。現在意識不明の重体。回復見込みは皆無……』と、大きく記事に書かれている。
 そう――その被害者である少女が、まさにここで静かに眠る少女であった。
「くそ……! どうして、うちの娘ばかりがこうも不幸な目ばかり合わなきゃいけないんだ……! 本当なら、年齢が近い娘たちと、外で遊んだり、しゃべったり、買い物に行ったり、学校で勉強したりしているはずなのに……!」
 男は乱暴に何も出来ない自分自身に敵意を向け、自分の足を叩いた。静寂にかえったはずの部屋中に、絶望を響きかせていく。
「あなた、やめて!」
「くそ、くそ、くそが……くっ……」
 その様子をじっと、部屋の角から見ているモノがいた。
 ――そのモノは、いつからそこに座っていたのか。
 それも無表情で、何か特別の一瞬を待っているかのようであった。全身は純白、そして猫のような尾を持ち、猫のような耳を持つ。
 その目は赤く光り、その尾をくるりと回す姿は、絶望が満ちる部屋の中では異質にみえた。
「――――」
 異質であるはずなのに、男と女の二人には、そのモノは見えなかった。その存在は地球上に存在する猫では決してない。霊的に近い存在だ。
 そのため、部屋にいる三人は誰もが気付かず、そのモノにただ一方的に見られていた。
 しかし、そのモノの視線はその二人に興味は一切なかった。ただ一点、ベッドで静かに眠る少女に向けられている。
「さくら……どうして……こんなことになったんだ」
 男がさくらと呼ばれ、眠っている少女の頭を優しくなでる。
「……神様は、残酷な未来しかこの娘にくれない」
 そう言葉を零すと、止めたはずの涙がまた女の目から溢れ落ちた。
「神様なんてのはいないんだよ、そうだよ、うちの母さんの時だってそうさ。もうだめなんだ、僕はだめだ……っ」
 男が両手で頭を抑え、音のない声で泣いた。
「――、」
 その『何か』がきたのか、ふいにそのモノは立ち上がると、
「――」
 窓のふちへとのぼり、少女へと振り返っていた。
 すると、間もなくして、
「……んっ」
 少女が、呼吸とは別の言葉を発した。
 それは、呼吸器の音ではなく、少女の口から直接生まれた音。
 そして、
「……ぁ」
 音もなく少女がうっすらと目を開け始めたのだ。
「あ、あなた――、」
 少女のために泣くのをやめる決意をし、ハンカチをかばんにしまおうとしていた女が、
「さ、さくらの目が!」
 それを発見し、うれしそうに男の肩を揺さぶる。
「おぉ……!?」
 男は、女の手をとり、少女を見つめる。二人の視線の先にある少女の目は完全に開いており、それは意識不明からの復帰を表していた。
 女の目からは決意したはずの涙が、また溢れかえようとしていた。
「き、奇跡は、ほ、本当にあるんだな! よかった! よかったよ……さくら、さくら!」
 男は名を呼ぶ一声とともに、少女の身体を勢いよく抱きしめた。
「えっ……?」
 少女は一体何が起きているのかわからない様子で、少し困った表情で男を見た。
「っ!?」
 男は、その反応がよほどうれしかったのか、さらに少し強く抱き寄せる。
「パ、パ……、い、たいよ……?」
「あぁ、あぁ……!」

 ――奇跡は起きた。

 確かに少女は意識不明から、帰還した。
 それは果たして――帰還と呼べるものなのか。その証拠に少女の小さい手の中には、真っ黒に染まり、紫色に反射するソウルジェムがあった。
「”   ”」
 何かをつぶやいて、その様子を見つめていたモノは満足したのか、その場を何事もなかったように、窓から去っていった。

続く
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