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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女ほむら☆マギカ Chapter of Sakura その1
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2013.08.18
暁美ほむらが巡ったもう一つの物語。
新たな魔法少女との出会いが、今始まりを告げる。

それは脅威なのか、救いなのか?

※更新速度が遅いので、完了までに時間がかかります。


 ――奇跡。
 
 奇跡がもし本当にあるのならば、人間は一体何を願うのだろうか?
 お金持ちになりたい、足がはやくなりたい。
 夢ならば、数えきれぬほどあるだろう。

 ならば――奇跡とは何なのだろうか。

 それも手を伸ばせば、絶対に叶う――そんな奇跡ならば、手を伸ばすのだろうか。願うのだろうか。突然目の前に現れたよくわかりもしない、奇跡を掴みたいと、願うのだろうか。
 その代償に、人間としての『大切なナニカ』をなくすことになろうとしても、叶えたい奇跡があるのだろうか。
 
 ――あるのだろう。
 
 叶えたい願いがあるから、この世界に悲劇が存在しているのだ。
 奇跡を願った。
 それは純粋無垢な願い事だったのかもしれない。
 けれど、それは新たな奇跡を生む始まりに過ぎない。
 一度落とし穴を回避したとしても、誰かが必ずそこへ落ちる。

 ――それが奇跡。それが代償。

 奇跡を願ったはずの少女――魔法少女たちには、それを知る術はない。知ることも、その理さえも、理解することはない。
 そのことに気づき、抗おうとも悲しみに満ちようとしようとも……。
 全てが、終わりを告げているのだから。

“魔女へといずれ至る少女たち”。

 奇跡は、絶望を生む。
 それは、抗うことのできない運命、逃れられない未来。
 例えそれを万が一知り得たとしても、気づいた時には遅すぎる。
 絶望して、ただ魔女へ至るだけだ。もう全てが、最悪な状態へと陥っているのだ。誰であっても、どうすることもできない。
 それが奇跡。それが魔法少女。
 もうそうなるように、自分で願ってしまっているのだ。
 誰も止められない。誰も覆せない。

 魔法少女、それは悪魔と契約を交わし、魔法の力と奇跡を得て、運命の代償を支払った少女。魔女と戦う使命を課された存在。

 ――契約は、願い。絶対願望。

 契約によって、奇跡は叶い、新たに少女は生まれ落ちる。
 その姿は“宝石”。それは魔法少女の証であり、力の源。
 その宝石の名は、ソウルジェム。
 それは生まれ変わった少女たち“そのモノ”である。
 だが、そのことを少女たちは知らない。
 生まれた奇跡にとっては、意味を持たないのだから。

 ――奇跡の契約。

 奇跡を起こせる生物は何も語らない。それは感情を持たない――インキュベーター。
 そのことを知ったとしたら――鹿目まどか。

 あなたは、一体何を願うのだろうか?

「……もう、私は決めてしまったから」
『もし後戻りができるなら……』 そう考えてしまう私は、すごく弱い。折角の決意の熱をも冷やして、凍てつかせてしまう。
「……」
 巴マミがいなくなれば、必然的に美樹さやかが魔法少女になる。

 ――それはまどかが魔法少女になってしまう原因となった。

 美樹さやかは魔女へ必ず至る。そのことに例外なく。たとえ邪魔をしても必ず起きる運命。何度も何度も、彼女は魔女になって私の前へ現れた。彼女の性格上、私が何を言っても全て無駄。火に油を注ぐものだった。仲良くしようにも一方的に否定されて、断られる。
 だから、やめた。彼女は魔女になるのだと、決めつけた。
 ……美樹さやかが魔女にならない未来なんて、存在しない。知る方法を探すのも諦めた。

 でも、それはまどかが魔法少女になってしまう原因となった。

 杏子に限っていえば、美樹さやかと仲良くしたいと考えているのは、杏子の行動から明らかだった。だからこその少なくとも美樹さやかと違って、対処が取れる。取れていたはずだった。
 だからこそ例外がある。偶然ではなく必然だったのかもしれない。
 杏子が美樹さやかを守ろうとした。まどかを守るためには、それも利用しようとした。

 結果として、それもまたまどかが魔法少女になってしまう原因となった。
 
 全てがまどかを魔法少女にしようとする。そうとしか考えられなくなった。
「……」
 もう、なりふり構ってはいられない。
 誰に頼っても意味はない。もう、誰にも頼らない。全てが私の邪魔をする。
 ――そう。
 だからこそ、私は一人でやると決めた。まどかだけは救ってみせる。他には何もいらない。あの娘が笑ってくれるなら、それだけでいい。……たったそれだけを守らせて欲しい。

 ――あのときも、そうであった。

☓ ☓ ☓

 薄暗い通路の中で一人、少女が何かを見つめるように立っていた。
 暁美ほむら。黒く、そして長い髪を持つ少女。
 そして、時を止める魔法を持つ魔法少女でもあった。
「……はぁ」
 ほむらは、吐息とともに弾の入っていないサブマシンガンを目の前の壁に、乱暴に投げ捨てた。
 勢いついたサブマシンガンは劈く、そして鋭い音とともに壁に叩きつけられた。地面へとゆっくり落下するサブマシンガンの銃口からは、白い煙をゆらゆら空へと上げていく。それは殺風景なビルの裏道で、少し異様に、アンマッチに見える光景だった。
「……?」
 サブマシンガンを投げ捨てた指先に違和感があるのか、ほむらは自分の手を見つめた。その手はいつもの手と変わりない。ただその手は汚れておらず、とても綺麗な手をしていた。
 ――綺麗。
 ホントウにそれは綺麗といえるものだろうか。ほむらは手を握り締める。何も感じない。違和感などやはりなかった。
「……何回目だろうか」
 赤が蒼に染まりつつある空を見上げると、ふいにほむらはつぶやき、ゆっくりと目を閉じた。
「……」
 思い浮かぶのは、救えなかった生命――後悔の想いと絶望の叫びだった。
 ほむらの手は、何度も人を殺して、何度も見殺していた。見えない朱と墨の粘り強い体液で、ほむらの指一つ一つをしっかり絡めとり、彩っていた。
 それなのに――綺麗。
「……はぁ」
 綺麗なはずの手は救える生命も、救えない生命も、全て投げ捨てていた。
 それは、鹿目まどかを救うという希望を抱く想いのためにであった。
 そのために――障害を全て取り除く。
「……まどか」
 ほむらを突き動かす想いは、もうそれしか残っていなかった。唯一の希望と云ってもいい。そう想うことでほむらは自分を保とうとしていた。
『やっていることは正しい。まどかを助けるにはしかないことなんだ』と。
 希望はあるにはあった、しかし。
 救えるかもしれないそんな淡い希望は、あっという間に壊れた。悲鳴も喝采もなく、絶望がただ訪れた。差し伸べた手は誰にも届かなかった。誰にも触れられなかった。
 ほむらの目の前にあるのは、夢も希望もないインキュベーターの支配する世界だけだった。
「……」
 こんなものを思い出と呼ぶのか、ほむらは一瞬戸惑いを感じたが、あまり深く考えないことにした。考えたところで何も変わらない。何も変わりはしないのだと。
「……ふぅ」
 彼女を救うために、彼女を殺す。彼女を殺すために、彼女を救う。
 それは果たして正解なのか? それとも、不正解なのか?
 誰も回答を知る者はいない。答えてくれる人もいない。
 答えてくれたとしてもそれらは、暁美ほむらが魔法少女になった理由とは、かけ離れていた。そもそも、問いかけすること自体が、ほむらそのものを否定しかねなかった。
「……」
 ほむらは、理由そのものである彼女、“鹿目まどかとの出会い方”を変え、鹿目まどかに守られる自分ではなく、鹿目まどかを守れる自分になりたかった。
 それだけの想いで、キュゥべぇと契約したのだ。
 たったそれだけのことなのに、結果はいずれも失敗だった。
 終わってしまえば、全てそう。
 一体何度過去とも呼べる時間遡行を体験してきただろうか、ほむらは一瞬振り返ろうとした。
「っ……!」
 しかし、すぐに後悔した。
 自分には後悔と、絶望しか、なかった。
 過去を変えるために、何度も、何度も、何度も繰り返した。例え同じ結果になろうとも繰り返した。
 それ以外にほむらの選択肢はない。選ばないことなど出来なかった。

 ――それが暁美ほむらの魔法少女が生まれ、魔法少女としての願いなのだから。

「……私の戦場はここじゃない」
 まどかと『ワルプルギスの夜を超えた未来』へ行く。
 ほむらが繰り返した過去の中に、その未来はない。
 ――だから、今。
「くっ……」
 ほむらは、唇を噛みながら思う。
 どうして、こんなにもうまくいかないのだろうか。
 ――誰か教えて欲しい。
 うまくいくというのは、結局、どういうことなのだろうか。
 ――答えがほしい。
 あいつを引き離そうとすればするほど、あいつはまどかに接近する。
 ――守ってほしい。
 キュゥべぇ――いいえ、インキュベーター。あいつだけは、絶対に許さない。
 ――絶対に許さない。
「まどか……」
 ほむらが思い出すのは、まどかの笑う姿。何度見ても飽きない太陽の笑みを持つ少女の微笑みだった。

 ――あぁどうして誰も私の言葉を信じてくれないのだろうか。

『本当のことをただ伝えているだけなのに、何がいけないのか。何がだめなのか。本当のことというのは、本当のことなのだろうか? 誰も信じてくれない。だから、私は……もう誰にも頼らないと決めたんだ』
 ほむらは下唇を噛むことしか感情を抑え切れないでいた。
 女神の微笑みと思い出したのは、もう一人の少女だった。
 ……彼女。
 彼女と別の出会いをすれば、友達になれたかもしれない。それは、美樹さやかや佐倉杏子たち、他の魔法少女にも言えることで、もう変えることはできない。
 ほむらにはその出会い方しかしなかった。友達は、鹿目まどか。ほむらはそれを選んだ。もうこの選択肢を選んでしまった。振り返ることはできない。振り返ることも許されない。
「……っ」
 ほむらの頬を一筋の涙が流れた。もう流さないと誓ったのに、それは一度認識してしまうと否応なく流れだす。
「……うぅ」
 空を見上げたほむらを見つめたのは、日が暮れ現れた――星空だった。
 それはほむらにある記憶を呼び起こさせた。

『さようなら、ほむらちゃん。元気でね』

 そんな言葉聞きたくなかった。
 脳裏に彼女との別れ際の言葉が写り込んだ。
――一緒にいたかった。ずっとずっとずっと……いつまでも友達でいたかった。
 絶望を、希望という光に変えて、まどかと一緒に、ただ笑い合いたかった。まどかの笑顔がただ見たかった。悲しむ顔なんて見たくなかった。
 だから、誰であろうと邪魔するものは全て排除する。
 だからこそ、魔法少女になったのだと、ほむらは握りこぶしを作る。
「……!」
 それが例え同じ魔法少女。かつて人間であったとしても、だ。
 涙はもう流れ落ちなかった。
 ほむらは振り返ることをやめた。
 振り返ったところで『彼女』を対処してしまったことに何も変わりないのだから。
「……ふぅ」
『彼女』が魔法少女になる前に、殺さなければならない。それが人間でなくなったほむらの唯一できる、彼女への最後の人間としてのアプローチなのかもしれない。
 まどかを守るために、殺さなければならない最大で、厄介な障害。
「さくら……」
 それが“彼女”の名前だった。
 さくら、そうキュゥべぇが呼んでいたから、ほむらも呼んでいる。苗字はわからない。それは、漢字で桜なのか、ひらがなのさくらなのか、またそれ以外なのかはわからない。
 だからほむらは、勝手にひらがなのさくらとして認識することにした。
 ほむらにとって、本当はそんなことどうでもよかった。

 ――だって、名前なんてただの飾りに過ぎないのだから。

 ほむらは暁美ほむらという人物ではなく、ただの魔法少女と呼ばれるモノ。ソウルジェムという宝石だ。名前は意味を持たない。
「……これでいいんだ」
 ほむらが統計を取った『さくらが魔法少女になる』データは、決して高いものではなかった。それは、キュゥべぇがさくらの生命が終わる前に、間に合わない場合があるからだ。
 そして、彼女が奇跡的に助かる場合。最後に、ほむらが生命を奪った場合だ。
 統計によると、さくらが魔法少女になる場合、最悪な魔法少女となるのは、間違いない。
 さくらが行った行動は、ほむらと違って確かに、これ以上魔法少女が増えるのを、食い止める手のうちの一つかも知れない。誰も考えも実行もしなかった行為だ。
 だけど、そのためにまどかが巻き込まれるのは……、
「許さない――、」
 ほむらは瞳に殺意の波動をまとわせ、言葉を続ける。
「私は絶対に許さない。あなたを殺さなければ、あなたは、まどかを殺す。そんなの私が許さない。だからこそ……これは仕方がないこと、あなたの暴走を止める一つの救済方法よ」
 ほむらの視線の先には、壁に寄りかかって座る少女の姿があった。ぐったりと頭を下にむけて、両手足は無気力に放り出されていた。ほむらが撃ち込んだ弾の傷跡から、その衣服はぼろぼろで、赤く変色させていた。
 血だらけのさくらは何も答えない。
「……まどかは私の全てなのだから」
 ほむらは盾からリボルバーを取り出し、空に向かって放った。
 それを合図に、さくらの肉体は、まるで最初からここにいなかったかのように光る粒子となって、空へと消えていった。
「今度こそ、救ってみせる。あなただけは……!」
 ほむらはさくらがいた場所に落ちていた『グリフシード』を手にし、その場を振り返ることもなく、後にした。


続く
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