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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】紅茶の秘め事
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2013.07.20
魔法少女という設定ではなく、天涯孤独の身に杏子がなっていたとしたら、そういう時間軸設定で書いてみました。   
最近書けなくなってたので、リハビリ中です。
少しずつ、戻ってければいいなぁと。


「さやかちゃん、それ本当に美味し、いの……?」
「美味しいに決まってるじゃん。まどかにはまだはやいかぁ。そっか、そっかぁー残念だなぁ」
「……なんだよそれ」
 さやかがマシュマロにマヨネーズをまんべんなく塗って、次々に口へ運んでく。
「美味しいのに、なんでかなぁ?」
 見た目的に、とてもじゃないが……うまそうには到底思えなかった。そりゃ、マヨネーズ自体は何にでも合うけどさ、どう考えてもアンマッチ過ぎるだろう、それは。
「そうかなぁ? ほら、試してみなよ、二人ともさ」
 わざわざそのために新品のマヨネーズを買ってたらしいのだが、
「いやぁ、あたしはいいかなぁ……ほら、まどか、あんたが食べてみなよ。嫌いなもん――何もないんだろ?」
 えぇ!? となぜか驚いた表情を見せるまどかは、あたしとさやかの顔を交互に見ると、恐る恐るさやかが用意したマヨネーズのせのマシュマロに手をつけようと、手を動かし始めた。相変わらずこいつ……、躊躇がねぇな。
「……っ!」
 うわぁ、こいつ本当に食う気かよと、煽ったのはあたしなのだが、ちょっと鳥肌がたちそうだった。よくそんな得体の知れないものを口に運べるな、と。
 とはいえ――マミが帰ってくるまであと三十分ぐらいか。時計はもうちょっとで六時になりそうだった。
「さ、さやかちゃん?」
「んっ? 何々? まどか食べないの?」
「ほ、ほら、あーんってして?」
「へ? あーん!? って、まどか! アタシに食べさせて逃げるつもりですか、こいつぅ!」
「ち、違うよ!?」
「は、はは……は」
 二人の様子がいつもと何も変わらなくて、思わず笑みがこぼれた。
 ――昔は嫌気が差したものだったんだけどなぁ。
 今なら昔を思い出しても、笑ってられる。どうしてかな……。こいつらの……おかげなのかな?
「……」
 あの時のあたしにとって、こいつらはただの侵略者にしか見えなかった。あたしから、マミを、幸せを奪いに来た魔女たち。親父たちを奪った、あの黒い影をした化け物にしか見えなかった。とてつもない恐怖の塊がまた襲いかかってきたんだとしか、思えなかった。
 だけど、そいつはただの過去だ。今は違う。
 こいつらはむしろその逆かもしれない。天使とか、神様だとは思わないが、いい奴ら。
 ――信用できるダチ。
 そもそも誰だって、天涯孤独の身になれば不安だし、誰を信じればいいのかもわからねぇ。そんなときに優しくなんかされちゃぁなおさらだ。
 そういっちゃ――あたしは幸せな方だったのだろう。今こうして幸せな時間をくれた。
 全てはマミのおかげ。そんなのは思い出すまでもなかった。そう。いくら悪態つこうがそれだけは変わらないし、忘れることもない。
 あの時あたしを拾ってくれなきゃ――ここにあたしはいないんだから。
「まどかがこんなだし、やっぱここは杏子食べなよ。食べ物好きでしょ? ほらほら、遠慮しなくてもまだまだたくさんあるよ」
 微笑みながら、さやかがそう尋ねてきた。悪魔の笑みかよ……。
「美味しいって、ほら、杏子?」
「さ、さやかさ、本当にそんなこと思ってるわけ? ば、馬鹿じゃないのか」
 いくら数があったって、うまいかどうかもわからないものをそう安々と……、
「杏子はあれですかなぁ、ほら食わず嫌いっていうの? ほら、見てよ。こんなふぃ、ほいしいのさ」
 ……食いながらしゃべるんじゃねーよ。聞き取れないことはねぇが、せめて飲み込んでからにしろよ。
「はぁ、それは違うだろ、さやか。あんたが思ってる以上に複雑なんだよ、食べ物ってのはな――」
「何よそれ、あははは」
「さやかちゃん、笑っちゃだめだよ」
「そういうまどかも笑ってるわけですが! このっこの!」
「や、やめてよ、さやかちゃん! わ、脇は弱いんだってっば!」
「相変わらずお前らはなぁ……はぁ」
 さやかや、まどかたちと一緒にいるだけでこんなにも幸せな気分になるんだなんて、思いもしなかった。
 そいつを思い出させてくれたのは、先輩面したマミで――。
 さやか達と出会わせてくれたのも、憎たらしいほどの笑顔面したマミだった。
 今更『ありがとう』だなんて言うような仲には戻れるとも、戻りたいとも思わない。
「……」
 でも、お気に入りの紅茶を勝手に増やすくらいなら、あたしにでも出来る。あいつのコレクションくらい、理解の範疇だ。何年あいつと一緒に暮らしてると思ってるんだ。傾向も味の趣味も把握済みだ。
 ――とはいってみてもさ。
「杏子ちゃん、探してた紅茶見つかってよかったね。それに残り少しだけだったから危なかったね。売り切れちゃうところだったよ」
 さやかに開放されたせいなのか、ホッとした顔でまどかが言ってきた。
「あ、あぁ、そうだな」
 あたし一人だけだったら、名前どころか紅茶のパッケージを発見できなかったかもしれねぇ。トランプでの神経衰弱並に宝探しするところだった。
「なにそれ、あんた……『ありがとう』ぐらいまともに言えないの?」
「うるふぁいなぁ、はやかは!」
「何いってんだかわかんないっつーの! あはははは」
「おい、お前のせいだろ! ほっぺを引っ張んじゃねーよ!」
 あたしは乱暴にさやかを振り切ると、ビニール袋の中から紅茶のパッケージを取り出すと、台所へ向かった。
 あっれー、もしかして怒っちゃいましたぁ? と、気の抜ける声が後ろから聞こえてきたけど、無視だ。
 マミが帰ってくるまでにこいつは終わらせなきゃなんねぇし。本当だったら、帰ってきてすぐに仕舞えばよかったんだけど。
 ――さやかが悪い。
 あいつが部屋に辿り着くなり、おもむろに変な食べ物を作り始めたのが原因だ。そうあいつが悪い。あたしはやろうとはしたんだ、少しくらいはな!
 居間と併存した台所に入る手前で肩越しに振り返ってみれば、
「……」
 こっちを指さして何か話してるけど、小さくて聞こえやしない。どうせくだらない事を言ってるんだろうな、とため息をはきつつも目的を果たすことにした。
 そのためにわざわざ買ってきたんだからな。
「えっと……」
 紅茶のパッケージ束が締まってあるはず一番右端の戸棚を開けると、
「んっ?」
 そこには違った。なぜか包丁が大量に入ってた。しかも未開封のパッケージのものだ。よく切れるタイプ、錆びないタイプ、プラスチックタイプ、色んな種類が綺麗に並べられてた。こんなん初めて見るぞ?
 水栓のすぐ上にある棚だから、もしかすると壊れたらすぐに取り出すためなのだろうが……それにしては数が多すぎるだろ。あれか……マミのやつ、包丁でも集める趣味が出来たのか。
「……」
 マミの特殊性癖のような趣味のことはまぁいいかと、記憶の中を絞りだすように辿ってみると、……確か水栓の直上の戸棚だった気がした。
 となると、
「あぁ」
 一つ隣……だったか。包丁のあった隣の棚をスライドしてみたら、目的の紅茶の大群が転がってた。水栓の直上といえば、直上なんだけど、ガスコンロのほうが近くないかこれ……。曖昧に記憶してた自分の記憶力を恨みたくなった。
「はぁ……」
 見つかったからいいものの、最終的には全部開けることにもしかするとなってたんじゃないか?
「……よし」
 少なくなってきてた紅茶のパッケージを気づかれないようにいくつか追加した。簡単にいうと、ごちゃまぜにして判別つかないようにした。増えてるのか減ってるのか、よく見なくてもわからないだろう。
『佐倉さん! また、台所散らかして!』とあいつは怒鳴るかもしれないけど、気づかれないなら、怒号の一つでも受けてやるさ。バレても面倒臭し。
 残りはあたしの部屋にでも隠しておくか……賞味期限はまだ大分先出し、忘れてなければ、あとでまた追加もできるな。
「おーい、杏子。お菓子食べちゃうぞ!」
「あ、あぁ! ってかあたしが買ったやつだぞそれ!」
 戸棚と水栓の間に存在する空洞から、さやかがあたしの買ったチョコのお菓子をビニール袋から取り出してたのが見えた。むしろ、中身がもう見えてた。なんてやつだ!
「いいじゃん、別に減るもんじゃないし」
「食べたらなくなっちゃうでしょ? ……さやかちゃん」
「そ、そうかぁ! これは一本取られちゃいましたな。ははは」
 またさやかは変なこと言ってるなぁ、とため息を吐いて、あたしは戸棚を閉めた。
「はぁ……」
 あいつは――マミは気づかないかもしれないし、気づくかもしれない。感謝するかもしれないし、しないかもしれない。
 どっちでも、なんでもあたしにはよかった。
 あいつとまた仲良くしたいのか、違うのか――その境界線を超える自分が想像できないし、出来る自信なんてない。
 今はもうあたしにはさやかがいるし、他の連中もいる。境界線を無理やり超えて、とてつもないおかしなことが怒ってしまうんじゃないかって恐怖すらあるぐらいだ。
 でも、一つだけわかってることはある。
 あたしにとって――あの時のマミは女神様だった。
 あたしのだけのために舞い降りた神様。
 でも、それは違った。
 あいつは普通の人間で、あたしもただの人間。
 それに気がついたから、あたしはマミを拒絶した。さやかを拒絶した。すべてを拒絶したかったんだ。
 違うか……あたしは許せなかったのかもしれない。
 ――あたしだけのマミだったのが、他の連中に取られるようで嫌だったんだ。
 だから、あたしはそれからさやか達に嫌がらせをするようになった。
 今思えば、ただ子供のわがままだな。マミはもうその時にはわかってたのかもしれねぇ。だから、あたしがすることに何も言わなかった。ただ笑って見てくるだけだった。
 それがマミの優しさの一つなのだろうけど……、あの時のあたしにとっては憎しみが増えるだけの――要因の一つなだけだった。
 それから、あたしは孤立した。当然の事だった。折角マミが手を差し伸べてくれたのに、あたしはそれを一方的に拒否したんだ。
 でも、最終的に自分で気づいたんだ。これはただのわがままだって、子供の理不尽な身勝手だって。
 だから、あたしはさやかたちとの距離を詰めた。マミとの関係は戻ったようで、戻ってない。ただ話せるぐらいにはなった。
「あれ、みんな来ているのね? 何か今日素敵なイベントでもあったのかしら? 言ってくれれば、もう少し早く帰ってきたのに――」
 居間に戻ろうとしたら、そんな声が聞こえてきた。
 ――マミの声だ!
 あたしは急いで居間に戻ると、さやかからビニール袋をひったくって、紅茶のパッケージの残りを投げ入れた。
「んっ、どうかしたのみんな? 変な顔して? 何か顔に付いていたりするのかしら?」
 マミが自分の顔に何度も触れて調べようとしてるが、そんなことしても無駄だ! 何もないんだから、
「ふぃ、な、な、なん、でも、ねぇよ、」
 乱れた呼吸を整えようと、何回も深呼吸して、
「マミ。お前こそ何かおかしなこと考えてるんじゃねーのか? なぁ、さやか」
「え、えっと――、」
 視線で言うなよと、睨めつけた。
「ず、ずいぶんとはやい帰りですね。あれですか、あまり楽しくなかったんですか?」
「んっ? そんなことないよー。わたしにとっては十分過ぎるくらい勉強になったわ」
 そういって、マミは荷物を下ろしていった。やけに出かけた時より荷物が多い気がしたが、それは当然でお土産といって、さやかたちに何かの包みを渡し始めた。
 そういえば、どこかの工場見学とかって言ってたしなぁ。
「どうしたの、佐倉さん? 大丈夫よ、あなたのもちゃんとあるから、冷蔵庫に締まっておくから好きな時に食べていいのよ」
「あ、あぁ。って、そういう意味で見てたんじゃねーよ!」
 まるであたしが食い意地はってるみたいじゃんか!
「じゃぁ、どういう意味なのかしら?」
 くっ! また忌々しいぐらい笑顔を魅せつけやがって!
「ふふふ、じゃぁ締まっておくわね」
 そういって、マミの奴は台所へ向かった。
『ねぇ、本当にそれでいいの?』とまどかが下目遣いで見てくるもんだから、さやかと一緒に睨めつけた。
 そしたら、二人になぜか笑われた。
「――佐倉さん」
 マミの声に振り返ると、台所からこちらをマミが見てた。
「いつも紅茶買っておいてくれてありがとう」
 ――えっ、どうして知ってんだ?
「はぁ? 何を突然言い出すかと思えば……そんなことかよ! あたしはそんなの知らないね。大体あたしはこいつのほうが好きなんだ」
 さやかが開封してたポッキーを口に咥え、噛み砕いた。
「ふふふ、そうね。あなたはそのお菓子をこの家にきて、すぐに食べたものね」
 身体が火照ってく気がした。
「ち、ちげぇよ。そんなの関係ねーよ」
「でもね、」
 マミがあたしの買った紅茶のパッケージをこちらへと向けた。
「これはね……種類が違うのよ」
「えっ――」
 そんなはずはなかった。匂いだって、味だって、違うはずないのに……、それにさやかやまどかにだって、確かめてもらったはずなのに、どうして?
「なーんてね、あってるわよ。ふふふ、やっぱり、佐倉さんだったのね」
「マ、ママママママ……」
 や、やばい、し、舌が回んねぇ!
「――ありがとう」
 その言葉であたしの耳から煙が出るくらいに、頭の中が沸騰した。
 だから、
「う、うるせぇよ――マミ」
 あたしはまた嫌味を吐いた。
 そんなあたしのことを、またマミは憎たらしく微笑んでた。
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