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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】時間遡行の力
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2013.05.21
時間遡行の力を外から見たとしたらという仮説みたいなもの。


 ――そのことに気が付いたのは、一体何時頃のことだったろうか?

 ……ニ週間前、昨日のこと?
 それとも、一分前のことだっただろうか。
 はっきりと言えるのは、気が付いたら――その物体は既にあったってこと。
 そのことになぜ、今の今まで気が付かなかったのか。
 記憶の齟齬、記憶の断裂、記憶の圧縮。
 そのような何らかの影響が私の身に起こっていたのなら?
 確かに気が付こうにも忘れているだろうし、そのことに対して干渉することもできなくなってしまっているだろう。
 でも、魔法少女にそんな事態が起こるのかなんてわからない。
 私が知る魔法少女は、たとえ目が刳り貫かれようと、身体が弾丸によって穴だらけになろうと、首が吹き飛んだとしても、生き残る存在であるから。そのことを自らの身体と、傷ついた仲間の姿で嫌ってほど……思い知らされた。
 ただソウルジェムが無事であれば、負傷なんてあってもないこと。
 そうはいっても、美樹さやかの治癒能力は気持ち悪いほどに異常だった。桁外れの修復速度。どんな状態でも蘇るあの肉体はゾンビ――魔法少女がもう人間ではないってことを、誰だって実感するはずだ。
 だけど、私には彼女のような異常な治癒能力はない。出来るのは、時間遡行と、時間停止のみ。
 だからといっても、記憶に影響が出るとは到底思えない。
「……?」
 目をこすっても、細めても、見開いてもやっぱりそこにその物体はある。
 よくわからない物体が、部屋の円卓上に配置した椅子の中心に陣取っていた。しかも何も干渉を受けず、宙に浮いていた。
 半径15cmほどの――黒い球体。
「……」
 ぐるりと椅子の上を飛び移りながら、確認してみると、球体の周りを薄い灰色の靄が、芋虫のようにくねらせながら、動いているようだった。
 ――何かが中で蠢いている……のか?
 その薄い灰色の靄は生物のように見えなくもないが、その可能性は低いと思う。
 それは、
「……」
 耳をすましてみても、何も音がしなかったから。
 確かに防音魔法を発動しているし、音が出るものなんて動かしていない。無音が当然の部屋なのだから、音がするのはおかしい。
 でも、直前にある灰色の靄は関係なしに、動いている。空気のこすれる音がするのかはわからないけど、そんなのも聞こえてこない。
 私の意志関係なしに動き続けている。
「……」
 そういえば、雲が動く音なんて聞いたことも本で読んだこともない。
 そもそもそれは音を発生させるものなのか――空飛ぶ人間がいるなら、聞いたことがあるかもしれないけど、ありえない。
 ひょっとすると、この靄は水蒸気のようなものなのだろうか。
 そうだとしても――この部屋の気温は体感で変わった様子なんてどこにもない。魔法で制御しているのだから、変わること自体がおかしいのだけど。
「……はぁ」
 ため息が自然と漏れた。
 こんなことに頭を使っている場合じゃないっていうのに。
 でも――目の前の問題は解決しないと、後々厄介なことになりそうな予感がした。
 それは……これがインキュベーターの企みかもわからないから。
 そうだったのだとしたら、出来る限り素早く問題解決をしてあいつの企みを一つでも壊さないといけない。
 そうじゃないとまどかたち……まどかが危ない。
 音が出るほどに深呼吸して、息を整えた。
 ――落ち着こう。
 一つずつ考えていけば、きっと何かがわかるはず。
 そもそもこの球体に気が付かなかったのは……なぜか。これは幻覚なのか。それとも、私が魔法で作り出したものなのか。忘れてしまった何かなのか。
「……」
 憶測はかなりの数が頭に浮かびつつあった。
 でもどれも的を得ないのはどうしたものかと、首をかしげ始めて、
「……っ!」
 頭を使い過ぎると、忘れやすくなると聞いたことがあるのを思い出した。
「……」
 でも、それはありえない。仮にも過ぎた時間は、まどかと出会う以前の状態の脳に戻る。それが負担といえば、負担なのかもしれないが――私は魔法少女だ。
 脳神経の破壊なんて、それこそありえないこと。
「……ぇ?」
 だんだんと見つめている内に、何だか別のものに見えてきた。
 ――黒い綿飴。
 杏子辺りにそんなことを言ったら、もしかしたらこれに齧り付くかもしれないわね。
 綿菓子の甘い匂いなんて当然しないのだけど、
「……はぁ」
 脳裏に杏子が美味しそうに食べるイメージが簡単に思い浮かんでしまうのは、果たしていいのだろうかと思いつつ、凝視し直した。
「……?」
 一度余計なことを考えたせいなのか、当たり前のことだけど、生き物ではないように思えてきた。そもそも、生き物なら何かを食べたり、排泄物を放出したりと色々すべきことがあるはずだ。
 この物体にそんなのがあった記憶はない。そうであったなら、もっと早く気が付いていただろうし……そのことを覚えていないのだから、確かなはずだ。
 でも段々と自分の記憶が怪しく思えてきた。忘れているのなら、全ての考えが変わってしまうのだから。
――していたのかもしれないし、していないのかもしれない、と。
「……っ」
 考えていても拉致があかないと私は、左手に装着した盾から魔法を発動させた。
 盾の周囲が歪み、紫色の薄い霧がかかった。私はその霧に右手を差し込むと、自分に必要なものを思い浮かべ引きぬいた。
「……」
 取り出したのは、二丁のデザートイーグル。
 それを右手と左手でしっかりとグリップを握りしめ、サイトを謎の球体に合わせた。考えても拉致があかないならば、直接排除すればいい。
 それが現状で出来る対処法だと思った。
 果たして破壊できるのかどうかはさておき、
「……んっ」
 トリガーを絞ると、合計一六回の発砲音がなり、薬莢が床へと散らばった。
「……効果なしね」
 終わってから気が付いたことだが一見するとまるでおかしな人ね、私。
 部屋の中で銃を発砲するなんて……ね。
 防音にしてなかったら、騒ぎになっているだろうし、そういった意味でいえば……魔法少女でよかったということか。
「……」
 そもそも誰も居ないのに、言葉を発する必要なんてないのに、
「はぁ……」
 寂しさがまだ残っているということなのだろうか。
 人の温もりなんて、まどかを救うのに必要ないし、諦めたことなのに。
「効果なし」
 言葉がまた――出た。
 出るものは仕方ないと、再び口を閉じた。誰に聞かれるようなこともないし、気にする必要もない。ここは仮にも私の部屋なのだから。
 さて――この後どうしよう。

 そう思考が再び動き出して、私は方法を変えてみることにした。

実験1 生き物だと仮定した場合、嫌がることをしてみよう。
 そう思い――ものは試しとして、巴マミに貰った絶対開封しない、絶対飲まない、何が起ころうと口にしないペッドボトルの飲み物をぶっかけてみることにした。
 近づいてみても、敵対されるようなことはなかった。何も変わらないのが自然という錯覚さえ感じてしまうほどだった。
 だから、遠慮なく私は上から中身をこぼし始めた。
「……えっ?」
 一秒もたたずに、面白い結果が生まれた。
 明らかにペットボトルの中身、500ミリリットル分の水を流し込んだというのに一向に止まる気配がなかった。
 あの人はこんな怪しいものを私に飲ませようとしたのかと不審に思い、ペットボトルを確認してみると、
「……」
 何も変わっていなかった。
 文字通り、零したはずの水量が何も変化していなかった。
 疑問がさらに強くなった。

実験2 減らないということと仮定した場合、得をすることをしてみる。
 杏子用のポッキーを開封すると、チョコレートの甘い匂いが漂ってきた。
「……んっ」
 食べる必要はないのだけど、適当に何本か口にした。美味しいとは思うのだけど、よくもこんなものを飽きずにずっと杏子は食べていられるものね。
 それはまぁいいとして、残りを別の容器に移し替える。
 中身がなくなったことを確認して、ポッキーの空袋を謎の球体に投げ込んだ。
「……へぇ」
 眉根が寄る事態が起こった。
 ――空にしていたはずのポッキーの中身が元に戻っていた。
 元のパッケージ、ただパッケージを開けた状態といったところか。
 何だかこの球体が少しわかってきた気がする。

実験3 2を踏まえた上でやることは
 何だか得した気分になったけど、そもそも――、
「はぁ……」
 時間遡行してしまえば、この大金は微塵も残らない。
 例え、これを繰り返し億万長者になったとしても意味がない。
 分厚くなった財布の中には、千円札が軽く二百枚を超える量が入っていた。
 中身をなくした財布を謎の球体に入れると、元々財布の置き場所にしていた場所に戻る現象が起きた。ご丁寧に元のお金が入った状態で。
「……」
 もうここまでくれば、大体この球体の正体は判断がつく。
 それを決定づけるのは最後の実験を行わなければならないが、これは実験しない。
 今度こそ、まどかを救うのだから――。

「くっあ!?」
 私は全身に伝わる痙攣ような痛みで目覚めた。
「……はぁ、……はぁ」
 目の前にあるのは、何度見たかわからない白い天井。シミの数でさえ覚えている場所。
 ――時間遡行で必ず見る病室だった。
「ごめんなさい……まどか」
 ……あなたをまた救えなかった。

「……」
 部屋の中で、私は特異物が何もなくなった空間を見つめていた。なくなったから、違和感があるのか。あるのが普通だったから、違和感がないのか。
 違和感というべきなのか――特に何も感じなかったのが違和感だった。
 なくなった事実はあるのに、何も感じない。
 疑問だけが私の中で渦巻いていた。
 あの球体は何であったのか、何で出現したのか、色々わからないことはある。
 でも、あの力だけは予測はできる。
 あれは私の能力――時間遡行魔法の具現化。
 そう考えるのが一番しっくりする答えだった。
 私が時間遡行をするとあれが現れる。あの中を私はいつも歩き続けていたんだ。
 そう結論づけるしかなかった。
 憶測しかもう言えなかった。

 だって――あの後何百回と時間遡行を繰り返しても……同じものは二度と現れなかったのだから。
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