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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】視線の先に
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2013.02.17
バレンタインデーが近いということもあり、甘いモノをと書いていましたが
何かほろ苦いような甘さになった気がします。
杏さやで体育の授業の出来事。


 春はもうすぐそこまで迫ってるっていうのにさ、どうしてこんなにも寒いんだろう。気温が足りませんよ、お天道様。
 確かに一年間のうち一番寒くなるのは、二月過ぎぐらいって話は聞いたことあるけどさ……。
寒いって事実は、十二月でも一月でも何も変わらなくて。
そもそも、春っていつから? それにしても、
「寒すぎじゃない?」
 走る前のあたしは、そんなことを思ってたんだけどね。今となっちゃ風が火照った身体を優しく撫でるようで、気持ちいい冷たさって思うんだよ。音楽室から駄々漏れしてる何かの音楽も進行曲のようでさらにいいしね。
 ってかさ、冬も春も対して変わらない気もするよ。
「はっ……、ふぅ……」
男子は体育館でバトミントン……だっけ? 確かそんなこと言ってた気がする。
女子は何で……マラソンなのか! 男女差別じゃぁ! って思ったんだけどさ、男子はそういえば先週走ってたんだよね。
今週は女子の番! ってことなのかな。そういった意味じゃ、男女差別じゃないんだろうけど……。
仮にそういう理由だったとしてもさ、不満はやっぱり出るみたいで。
体育の授業が始まった時、死刑宣告されたような暗い表情をみんなしてたのが記憶に新しい。
逆に表情一つ変えなかったやつもいたけど……。あいつはそもそも聞いてたかさえわかんないし……。まぁそれでこそ、ほむらなんだろうけど。
例外のほむら以外じゃぁ、逆にみんなに驚かれたのは杏子だった。声に出すくらい一人だけ喜んでた。『杏子ちゃん、走るの好きなの?』と不思議がられてたね。
声に出さなかった分、ほむらはそもそもみんなに気づかれてすらいないように思えたよ。そもそもあいつは存在感薄いか……?
まぁあたしといたしましては喜ぶまではいかないんだけどさ……、別に走ることに抵抗なんてないって感じ?
走るのって風をきる感じがして、すっごく気持ちいいような気がするしね。
それはまぁ――走りはじめてからの感想か……。
肌寒いでしょって、言われれば確かにある。寒さがなくなるわけじゃない。登下校でも、何してても感じるものだし……。
「ふぅ……ふぉ……」
 気持ちいいってのは、きっと今――風をきって走ってる影響が強いんだろうね。実体験こそがほにゃららだよ。服が薄着だからというのもあってか、余計に。熱の通りがいいのかもしれない。
それはまぁ……体操服なのだから、そういう何か特別な仕組みがあるのかも知れない。確か水着だと空気を吐き出すように穴が空いてたり、ポケットのような大きな口があるものがあるようだし。
きっと何か似てる機能が何かあるんじゃないのかなぁ。あたしには検討つかないけどね。
グラウンドの白線に沿って、走るだけの授業。簡単なものだよね。先生は腕時計を見ながら、なにしてるのかここからじゃ、わかんない。グラウンドを周る度に後ろから見るんだけど、やっぱわかんなかった。
もしかすると、走りって実はサボる口実なのかな? まさかね……?
あたしの目にいつも見えるのは、
「はぁ……、はっ……」
息が白いという、あたしの息ぐらい。走り始めてからずっと変わらない。薄く透明で、ほんとは白じゃない二酸化炭素混じりの空気。
生きてるって、証拠の源。ここに確かにいるって、主張。
「ふぅ……」
息が白いのは冬だからというよりは、きっと気温が低いからなのかな。
冬って言っても、夏はあっという間に過ぎて、秋があったのかさえわかんないくらいにすぐ寒くなったから、はっきりしない。雪も何度か降った気がする。
それに何度も寒いって思ったし、何度も寒いって言った気がするよ。
体育が始まる前もまだ当然のように寒かった。外に出た瞬間ぶるって震えたくらい。先生の話が信じられないくらいにね!
でもまぁ……、最初はほんとに寒かったけど、身体が暖まればそんな気配すら見せなくなった。
暖かくはないんだけどさ……。
「なぁ、さやか」
「んっ? 何よ杏子」
あたしと並走してた杏子がつまらなそうな顔をしながら、
「アタシたちどうして走ってんだ?」
よくわからないことを言い始めた。何をこいつは考えてるんだろうか……。
「体育の授業だからでしょ?」
当然でしょ? それ以外に何があるっていうの?
「まぁ、そうなんだけどさ……。なんかあれじゃん?」
「なんかって何よ」
「暇だなぁって、別にこんなことしててもさ、疲れないし」
グラウンドの白線に沿って、曲がる。砂埃が直線のトラック以上に舞った。
「それはあたしたちが魔法……であるからでしょ」
「それもそうなんだけどさ、意味あんのかなぁって思うじゃん?」
確かにあたしたちに限って言えば、意味があるのかわかんない。でもそこに意味を求めちゃダメな気がする。あたしたちは魔法少女である前に、見滝原の学生で、なにより女の子なのだから。
それはそれとして――走りたくないなら方法はある。
「じゃぁさ、ほむらのやつみたいにさ……見学してみる?」
それはそれで暇だなと杏子はため息をつく。
それはそうだろう。ここから見えるほむらの姿は明らかに暇そうだし。何を考えてるのかわからないけど、陰湿そうな無表情で空を見上げてるし。
ジャージ姿だし、体育座りだし、何より見学だから文句は言えない。
心臓の病気らしいのだけど、
「あいつも同じだから走ればいいのに」
同じことを思ってたらしく杏子がそう話す。
ほむらもあたしたちと同じ魔法少女。願い事が何なのかあたしにはわかんないし、わかりたくもないけど……走れないわけじゃない。
あいつはあぁしていつも一人で誰とも関わらず、誰とも触れず、必要ある時だけ――あたしたちと戦うだけ。
寂しいとか思ったりしないのだろうか……? あたしだったら、絶対耐え切れない。弱気になっちゃう気がする。
だけど、魔獣空間を走るあいつはそんな気配すら見せない。ある意味で、芯がぶれないっていうのかもしれない。一人でも大丈夫だからって、語りかけてくる気さえするよ。
ほんとのことは結局わかんない。ほむらとは魔獣が出た時にしか、しゃべらないし……。
「はぁはぅ――あとちょっとね……!」
グラウンドのコーナーを抜けて、最後の直線トラックに入った。
「なら、早く終わらそうぜ?」
杏子が速度をあげたのを感じる。
「はぁふぅ……そうね」
 にやける杏子の顔を横目で見て、あたしも速度を上げた。
「はぁはぁ……これで終わりっ!」
スタート地点でありゴール地点である白線を超えて、ノルマは無事終わり。走り終えたら、自由にしていいんだっけ……?
「はぁ……そっか」
他の娘が走る姿が見え、邪魔にならないようトラックの端っこで、
「疲れなくたって、疲れる気がするんだよね」
一休みしようとしゃがみ込もうとしたあたしを、
「うっ――!?」
突如として全身を駆け巡る衝撃がきて、声が自然と漏れた。
「さやかぁ……、火照った身体をマッサージしてやるよ! 先生も言ってたろ?」
「そ、そういう意味じゃない、で、いっ――」
ゴールしてからいつになく静かだった杏子が、いつの間にか後ろに回りこんでて、あたしの脇腹を触ってきてた。
「な、何すんのよ!」
 くすぐったいでしょって言う前に、あいつの手はいたるところをくすぐりはじめて、
「えっ、いいだろ? 減るもんじゃないんだし……!」
「ば、場所と、と、時をっあぅ!」
それが段々と上に行くのを感じて、
「や、やめてよ、もう!」
杏子の手を振り払うとして、何か違和感がした。
――昔あたしが誰かにこうしてたような喪失感のようなものが。
「痛いなぁ、もうさやかはすぐそうやってさ――」
手には杏子の手を叩いた確かな感触があるのに、なぜか全身に流れる血みたいに痺れが全身に広がってく。痛いっていうよりも、冬の冷たさのような凍てつく震えのようなものが――。
「さ、さやか……?」
「えっ、何よ?」
何で――驚いた顔してこっち見てるの?
「何で泣いてん……だ?」
「嘘っ……!?」
 ――ほんとだ。
いつから流れてたのか、頬に触れるとその感触があった。
冷たく火照った身体でも流れる涙が――。
「あ、あれ……!?」
悲しくもなんともないのにどうしてか涙が溢れ出てくる。
「お、おかしいな! ゴールしちゃったから感極まってってやつ? さ、さやかちゃんは、う、うぶな少女だ、だから!」
いつも隣にいてくれたような、いつも笑いかけてくれたような、かけがえのない人がいなくなった気がする。
「お前、じ、自分でいうなよ……」
 心配そうな表情を杏子が見せたから、
「いや……さ、な、何でもないんだよ」
出来る限りの笑顔を見せてあげた。
でも――心の中は、なぜだか穴が空いてしまったかのように寂しかった。
杏子じゃなくて、昔誰かが隣にいたようなそんな気がする。
そんなことなんて、絶対ないはずなのに……。
ありえないことは、ありえないって理解してるはずなのに、
「ぅ……!」
 ――ダメだった。
笑っても、笑っても瞳から頬へと涙がこぼれ落ちてくる。
 仁美が走り終える前に止めなきゃって思うのに、止まらない。
 他の娘たちから、へんな娘って思われちゃうかもしれないのに、防げない。
「仕方ないな……さやかは」
「えっ、杏……子?」
 気がつけば――抱きしめられてた杏子のやつに。
「わ、わかんねーけどさ、何かこうするのが一番いいって思ってさ……。これで寒くないだろ……?」
「うん、暖かい……」
 わかんない喪失感を埋めてくれるような温もりが杏子から伝わってくる。どくんどくんって胸の鼓動も聞こえてきそうだった。
「あ、ありがとう」
「へっ、見てらんないからな、さやかはっ!」
「そ、それってどういう意味よ!」
 杏子を吹き飛ばし、睨みつける。
「ほら、いつものさやかに戻ったろ?」
「ほんとだ……」
 いつの間にか、流れてた涙は止まってた。止まらないって思ってたのに……どうして?
「あはは、馬鹿みたい――えっ」
 強い視線を感じて、その場所を振り向けば、
「……?」
いつの間に見てたのか。
ほむらがあたしを見て――微笑んでた。
――とても優しい目で。
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