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R.U.K.A.R.I.R.I | さやかの想い
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2013.01.30
skype上で行われたまどマギSSコンペの参加作品
今回は自分で好きに決めていいということで、テーマは『想い』です。  
杏さやを書こうとしてたら、出来た作品です(いずれそちらも作る予定です)。
さやか×恭介ものです。


「はぁ……」
 冷たい注射器を何度も何度も肌へ刺しこむような――冬の季節。
 部屋の中から窓の外の世界を見て、また、この季節が来てしまったのかと、ついため息が出てしまう
 だって病室に行けば、寒さのせいなのか恭介が妙に冷たい。それも毎年、毎季節。
 もしかすると冬は関係ない……かもしれない。
 冬は寒いから、単純にそうあたしが勘違いしてるだけ。
 きっとあたしが理解してないだけで、秋でも春でももしかすると、恭介の奴は機嫌が悪いかもしれない。
「はふぅ……」
 恭介が冷たくなってしまう理由は簡単なこと――手の違和感からの不安……だと思う。
『身体は寒さを感じるのに、指先はおろか手のひらでさえ冷たさを感じないんだ』 恭介はそんなことをいつも決まりきったように言うんだ。寒い日は、特に病室の窓を開けて、動かない指ををまるで実感してるみたいだった。
 あたしにその感覚はわからない。
 お風呂に浸かろうとすれば、指先から、熱いと叫びたくなるほどの熱さを感じるし、乾燥してる場所ではビリっと痺れる静電気も感じる。そしてフリードリンク用のグラスに注がれてく飲み物の寒さを感じることが出来る。
 だって――あたしの肉体は刺激を感じちゃうから。
 だからこそ、恭介の痛みがあたしにはわからない。心の痛みも肉体の痛みも、恭介が何を考えてるのかもわからない。
「……」

 恭介と同じ事故にあえば――。
 でもあたしにはそんな度胸なんてない。ないって――わかっちゃったから。

 もしかしたら、同じ痛みを感じられたはずなのに、いざ道路に飛び出そうとして、その一歩が踏み出せなかった。膝が震えて、どうすることも出来なかった。頭で命令しても、どうしても指一つ動かすことが出来なかった。
 前に進めば、恭介と同じになれる……あと一歩前に飛び出せば、事故に遭うのに。
 でも、何分経ってもあたしは動けなかった。
 想いと幻聴、幻惑があたしを襲ってきたんだ。
 死んじゃえば、恭介にもう会えないかもしれない、仁美と二度と遊べなくなっちゃうかもしれない。
 白線の内からは車の走る音、学生の笑い声が聞こえ、どこからか匂ってくる美味しそうな甘い匂いに包まれてた。いわゆる生の幸せの匂いみたいのを感じた。
 白線の外は酷く歪んで見えた。蜃気楼みたいに揺れ動き、一寸先も見えない世界に変化してた。ピンク色の羽を生やした何かが、あたしを悲しそうに見てたような印象でさえ感じた。
 同じになりたいと思ったのに、生への恐怖があたしを現実へ引き戻してた。車にはねられても、引きづられても、踏まれても――恭介と同じにはなれないんだと。
 それが恐怖だと思った時には、余計に震えが強くなって気づいたら、あたしは部屋で泣いてた。ほんとはあの場所にいたときから泣いてたのかもしれない。
 だけど、あのときは確かに蜃気楼みたいな別の世界が見えたんだ。何かおかしな化け物たちがいて、ピンク色の何かが手に持った何かで戦ってるような蜃気楼。
 逃げ出したはずのあたしを、その何かが笑ってくれたような気がした。そのせいなのか余計になぜか涙がこぼれた。

 あの後部屋の中で、あたしは数えきれないくらい謝った。恭介に、お母さんたちに、みんなに謝った。
 それから何時間が経つとあたしは、どこか冷めてた。死んじゃったら、終わりなんだって。それでも何とかしてあげたい、変わってあげたい、一緒に感じたい。その気持ちだけはほんとのこと。
 でも、無理だった。
 そんなこと奇跡か魔法でしか、起こらない。起こせもしない。
 恭介の手は、あの事故から何年経っても治ることも進展することもなかった。
 もしかすると、現代の技術じゃ治らないのかもしれない。
 未来の技術なら、治せるかもしれない。
 でも、でも……。
 そのとき、あたしと恭介の関係はどうなってるんだろう。
 友だちでいられるのかな? も、もしかして、こ、恋人……!?
 未来のことはわからないけど、もし仮に治せるようになるならあたしが治してあげたい。医療の学校って、難しいって聞くしあたしには無理かもしれない。
 でも、恭介のためになんとかしてあげたい。あたしに出来るのはきっとそのくらい。
 勉強して、勉強して、勉強。
 あたしが出来るようになったら、恭介どんな顔するんだろう……?
 笑ってくれるかな? 褒めてくれるかな?
「ふふふ」
 ベッドの上から見える景色は、時が止まったかのように静かだった。蒼色の闇。街灯だけが照らす世界。
 何も変化がない景色だから、時間が止まってるって言われたら信じちゃうと思う。その空間だけでもいいから、恭介の手が動かないのかな?
「寒いなぁ……うぅ」
 ベッドの中に入ってから数分経ってるはずなのに、冷蔵庫に入れておいたかのようにひんやりとした感触を、パジャマ越しに感じてた。
 冬だからしょうがないんだろうけどさ。
 いくらなんでも寒すぎじゃないでしょうかね、神さま。
「だ、誰か……いるの?」
 
 そんなとき、一瞬窓辺に誰かが立ってる気がした――白いネコのような物体が……。

『ボクと契約して、魔法少女になってよ』
 そんなことを言う変な生物との遭遇から、あたしの学校生活は変化し続けてた。
 魔法少女で実際の先輩である巴マミ先輩――マミさん。
 そしてクラスメイトで同じく魔法少女だった佐倉杏子――杏子。
 二人にくっついて、魔女って化け物との戦いを見たんだけど――映画でも見てるような感じだった。変な声をあげる使い魔ってのをやっつけ、その親玉の魔女を倒してく――そんな映画。
でも、実際に傷つく二人の姿を見て、映画じゃなくリアルのことなんだって、頭がうまく回らなくても理解できた。これが魔法少女の戦いなんだって――実感させられもした。
あのとき感じた寒気も、気持ち悪さもほんとのことで、願いごとをすればしなくちゃいけないこと――みたい。
 それが魔法少女――願いごとを叶えるもらう代わりに魔女と戦う契約。
 その契約はいわゆる代償があるものだった。
 その契約をした魔法少女が全世界にいて、人の知らない場所で、人の安全を守り続けてるって話。
 映画とか漫画のヒーローみたいな人たちがいっぱいいるんだってさ。
実際、目にするまでは信じられない話だった。
喋る変な生物も何かの玩具なのかもしれないって、疑ってたし……。あたしも願えば、そういうヒーローみたいなことをし続ける仲間になるってことなんだけど――何度も二人の戦闘を見ればみてくほど、
「……」
 あたしは悩み続ける結果となってる。
 願えばさ、恭介の手は治るかもしれないけど、あたしが頑張ろうとしてきたことが全て無駄になっちゃうし、何も努力しないで恭介の手を治してもほんとに意味があるのかわからない。
 あたしが一生懸命勉強して恭介の手を治しても、意味があるのかって言われたら何も答えられない。もしかしたら、あたしの勉強が直接的に関係するかもわからないから。それに頑張って勉強しても治らないこともあるから。
 そしたら意味があるのかなんてさ、わからなくなっちゃう。
「はぁ……」
それに恭介を治してあげたいのは、あたしが勝手に思ってるだけだし……。
あたしが治してあげれば、恭介は何か感じてくれるかもしれない。でも、願いごとだったらどうなっちゃうんだろう? もしかすると、気付かないでどっかに行っちゃうかもしれない。
あたしは結局恭介に何をして欲しいんだろう……?
どこにも行かないでって、願うのがほんとのこと?
こ、恋人になってって、願うのがほんとのこと?
「どうしよ……」
 マミさんは悩むだけ悩みなさいっていうし、杏子のやつは、願いごとは自分だけのために使えって言うし……。
 模範解答を求めてたわけじゃないんだけどさ、ほんとどうしたらいいのかわからない。
 あたしだけの願いってのは、理解してるんだけど……わからない。
 たった一つの正解があたしにはわからない。
 だから、
「ねぇ、キュゥべぇ」
 机にいる変な生物こと――キュゥべぇに声をかける。
「うん、なんだい? 改まって」
「えっとさ――」
 頬をかきつつも疑問に感じてることを聞こうと思ったら――、
「お菓子は黒砂糖ものじゃなきゃだめとか、そんなしょうもない理由でもらえるものを断ったりしないよ。ボクはもらえるものはなんでももらうからね」
 何か別の言葉を返された。そんなことを考えたわけじゃないのにさ。
「ち、違うよ。お、お菓子の話じゃないよ」
「そうかい? さやかはいつもお菓子の話と、あの男の子の話が多いような気がしたからね」
「きょ、恭介は関係ないでしょ!?」
 確かに恭介のことで悩んでたけどさ。そうじゃないんだ。
「うーん、じゃぁなんなんだい? ボクに答えられるものは決まっているからね。そういうものであれば、答えることが出来るよ」
「そう? じゃぁさ――」
 仮に願いごとが逆のことだったら、どうなんだろうって。
「もし、もしもだよ。願いごとがさ……」
「魔法少女になる決心がついたのかい?」
「ちょ、ちょっとまって! まだ、決めたわけじゃないんだから。質問がさ……あって」
「そうなのかい? そういえばまだ喋り途中だったね。続けてよ」
 キュゥべぇの尻尾が左右にリズムよく揺れてた。それを見ながら、あたしは意識を集中させて、一息吸う。
「うんとさ、願いごとが仮に違った願いごとでも大丈夫なの……かな?」
 そして思い切って言葉を綴った。
「違った願い? 君が言っていることがよくわからないけど、願いごとであれば、エントロピーを凌駕する限りなんでも出来るよ。そうだね、君が以前言っていた恋人にしたいとか、お金持ちになりたい、空を飛んでみたいなんてことは造作もないことだね――」
 キュゥべぇがテーブルから、三回転してベッドの上へと飛ぶと言葉を続ける。
「まぁ、魔法少女になってしまえば、空をとぶことができる魔法少女もいるからあまり願いごととしてはいい願いごととはいえないね」
 いい願いごと……。やっぱり、あたしが思った願いごとはそういうものとは違うのかな。
「恭介と同じ痛みを感じたいの――。キュゥべぇ出来るの?」
 治すことが出来るのなら、きっと出来るはず……。
「もちろんだよ。だけど、おすすめしないなぁ。そんなのもったいないじゃないか。一度しか叶わない願いごとを、痛みって概念で塗りつぶしちゃうなんてさ」
 当然のような反応を返された。やっぱ、出来るんだ。でも、おすすめしない理由がわからない。恭介と同じになれるのに、なんでだろうか?
「さやか、君は痛みを感じることが出来るのかい?」
「それは……出来るでしょ?」
 当然でしょ、痛覚ってのが人にはあるんだからさ。
「そうだね。じゃぁ、マミにもお願いされているから試してあげるよ」
 何をだろうと疑問が浮かぶあたしに、
「君に全死を願った少女の痛みをあげよう」
 キュゥべぇがそんなことを言った。ぜん、し? どういう意味だろう? 
 その疑問が突如として、阻害され、
「ぐぁ……ぃ……!」
あたしは椅子の上から木製の床へと、いつの間にか叩きつけられてた。不思議と落下音も痛みも何もしなかった。違和感は現実となって、
「いぎぃ……が……!」
 呼吸が出来なかった。それどころか身体がうんともすんともしない。いつしか視界も音も消えてた。
「ぎっ……ぃ……!?」
 ただ、苦しいって気持ちだけがあたしの中で渦巻いてくだけだった。
『動けないだろう? 呼吸も出来やしない。いずれ脳まで死んでしまうだろうね』
「えぐぅ……」
 キュゥべぇの声だけが聞こえた。魔法の力なのか。でも、あたしには回答する方法がわからない。
「や……げぇ!」
 死んじゃうって、死の世界が垣間見えたとき、
「げほっ、おぇ……はぁはぁ……っ」
 視界がフェードインするかのようにしてまぶしい光を放って、やがて視界の中にベッドの姿をゆっくりと捉え、冷たい床の触覚をあたしに与えた。
「はぁ……はぁ……!」
新鮮な空気があたしの中を駆け巡ってく。
「わかるかいさやか? 痛みを願えば永遠に君を戒めるんだよ。ボクとしてはエントロピーを凌駕する願いなら何でもいいんだけど、どうだい? 苦しいだろう?」
「こ、これに何の……」
意味があるわけ? 伝えようとした言葉は口にできなかった。
「痛みの願いはおすすめできないってことだよ――」
「で、でも、恭介は感じてるんだよね?」
やっと落ち着きかかった呼吸であたしは、そう口にした。
「それはどうだろうね。ボクはあの少年ではないからね。それは君も同じだろう?」
「わ、わかってる」
 恭介の痛みがどんなものなのか、あたしにはわからない。でも、キュゥべぇに願えば白線の内に簡単に入れるってことでしょ?
「そうなのかい、じゃぁまた来るよ。マミがそろそろ出かけるようだしね」
 キュゥべぇがテーブルの上にまた戻り、背中を見せる。
「ま、待って!」
 あたしの声は虚しく、キュゥべぇの姿はどこにもなくなってた。
 
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