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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】温泉という魔界
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2013.01.09
巴マミが誘う温泉のお話です。

2013年もよろしくお願いします。



「ねぇ、みんな温泉に行く気ないかしら? それも飛びきりの――」
いつものお茶会の席でマミさんが軽やかな口調で言った。唐突だったこともあり、
「お、温泉!? どういうことですか! マミさん」
 何だか叫び声に近くなっちゃって……。
「さやか、興奮しすぎじゃねーの?」
 杏子に冷やかされることになった。嬉しそうな声に受け取られたのかもしれない。確かに頬に火照りを感じるけど……でも、温泉だよ?
 だから、
「ち、違うって! ねぇ、まどか?」
 助けを求めるようにまどかを見る。でもそのまどかはちょうどケーキを頬張った後みたいで、嬉しそうな顔をいっぱい浮かべ、口には白いクリームを付けてた。
確かに美味しいんだけどさ。既にあたしのお皿にケーキがないのがまさにその証拠。
「♪~♫」
 呼ばれたことに気がつかないのか、幸せオーラ一杯。でも、あたしの視線を感じてかまどかは驚きの表情を一瞬見せると、
「そ、そう、なの? さ、さやかちゃん。わ、わたしも杏子ちゃんにな、納得かなぁーって? ねぇ? あれ、なんか違うのかな」
 見当違いな答えが返ってきて。おまけに戸惑うような表情を浮かべたもんだから、
「は、はいっ!? ま、まどかまでー?」
 よ、予想外の裏切りだぁ!
「何言ってるのよ、こいつはぁ!」
 だから、ゆっくりと近づいて……くすぐりの刑だぁー!
「にょ――!」
 まどかの可愛らしい悲鳴が聞こえ、
「や、やめて、さ、さ、さささやかちゃっん! そこは弱いんだってっ!」
 くすぐりによる拘束から逃れようと、こちらを振り返ろうとしてくる。
「ふふん、まどかの弱いところは知り尽くしていますからね。逃げても無駄なのだよ、まどかくん」
 でもそんなことさせるつもりもさらさらなく、腰をカードされれば、首筋を。首筋をガードされれば、脇下を――まさに逃げ場なし。
 もう何回、何十回もやってますからねぇ、コツがわかりきっちゃってますよ。
ってか、まどかパターン化してない? そんなんじゃ、さやかちゃんは騙しきれないぞっ! そうそうこうして、こすればさ――。
「くふふふふふふ……! や、やめてって――」
 予想通りの反応が返ってくる。だよねー。
「また、こいつらは……。それでマミ、温泉ってどういう意味なんだよ? アタシそんな金持ってないぞ?」
「杏子……?」
 まどかをくすぐる手を緩めると、
「かといって誰かにたかる気もない……しさ」
 ちょっと悲しそうな声で杏子が言葉を漏らしてた。その視線も窓の外の何かを羨ましそうに見てるのか、泳いでた。
あたしからは夕日の赤い空しか見えない。カラスでも飛んでいたのかな、それとも……流星群? いや、天気はまだ明るいからそもそも星なんか見えないか。
 それに――お金がない……か。
 確かに杏子って、アルバイト長続きしないし、お菓子にお金を使っちゃうから全然貯まらないって聞いたような……?
「あら、佐倉さん。あなたがそんなことを思ってたのなんて、意外だわ」
 そんな杏子に向かって、マミさんがそんなこと全てお見通しみたいに優しく微笑んでて。安心するような心に何か温もりを感じた。そうだよね、マミさんはそんなこと気にする人じゃない。
 杏子の気にし過ぎじゃない……?
 それにね……今となっちゃ――ちょっとばかり遅いような気もするわけで。
「な、なんだよ。考えちゃいけないっていうのかよ、マミ」
「そうはいっていないけど……」
 杏子の何気ない一言で、マミさんまで悲しそうな顔を見せるもんだから、
「マミさんマミさん、杏子の顔を見てくださいよ。ほらほら」
 杏子の顔を指差してやった。
まどかはその瞬間――あたしから逃げ出してた。しかも――お皿を持ちながら。
食いしん坊だよね、まどか。杏子を見習ってるのかな? まさかね。
「わかりましたか?」
再び問う。
「? 何かおかしな所があるかしら」
「そうだぞ、さやか」と杏子が文句を垂れる。
 こいつはもう……! いちいち怒ってもしようがないので――。
「マミさん、もう日常となってるかもしれないですけど……、よーく見てくださいよ。それこそ穴をあけちゃってもいいと思いますよ。そうしたら、もしかするとわかるかもしれません、もとい反省するかもしれません」
「それって、一体どういう意味かしら? ねぇ?」
 まどか、杏子と助けを求めるようマミさんの目が泳いだ。もしかして、気がついてない? 近くにいすぎるとわからないとか? 確かに兄弟や親子なんかは近くにいると特徴的変化に気が付きにくいとか聞いたこともあるけどさ。
それってさつまり、二人がそんな感じってこと……? まさかね?
「さぁ……? さやかのいうことだしなぁ」
「もう! どうしてあたしのことに話が――」
 わかんないのかな? 脳内にさっき考えてたことがよぎりわかんないけど、イライラ感が増した。
それにあたしの問いの答えはもう半分出てるし、話題からずれてもいないってのが理由かもしれない! 
第一にあたしのことは今は関係ないでしょ、あたしは……別に。
「さやかはたまに何言ってるか、わかんない時があるからなぁ。マミあんまり気にしなくていいぞ。だってさやかだし」
「はぁ!? 何言ってるの杏子!」
 こいつは一体さっきから何を言ってるんだか! 根も葉もないことをマミさんに言わないでよ! 
だから自然とあたしは立ち上がっていて。
「何だよ、やる気か? いいぜ、いつでも相手になってやるよ。ヒヨッ子に負けるつもりなんてないしさ」
 それに対抗するためなのか、杏子がフォークをこちらへと向けて立ち上がった。こっちは何も武器を持ってないってのに……! 違うか……、
「あんた……! そういうのは人に向けちゃいけないって習わなかったの!」
 フォークは食べ物に使うものでしょ?
「喧嘩売ってきたのはお前だろ? さやか」
 杏子が指で綺麗にフォークを回してた。器用なもんだ。
 テーブル越しにお互いを睨めつける形となって、
「はぁ!? 違うし……。マミさんに杏子の顔を見るように言ってるだけでしょ? あんたには関係ないでしょ?」
 実際関係ないわけじゃないけど……。
「だから、それがわかんねーって言ってるんだろ? 気づけよさやか。アタシの顔なんか見ても何もわかんないさ。それこそ、金が湧いてくるわけじゃないじゃん」
 そりゃ、本人の顔は鏡を見なきゃわからないし、お金が生まれるわけじゃないけどさ。そんくらいあたしでもわかるし、誰もわかることだろうし。
それに……マミさんなら、わかるはずだし。少なくとも、
「……頭が悪いあんたにはね」
 わからないかもね。
「なんか言ったかさやか! すっごいイラッとしたぞ!」
 やば、声に出てた……!?
「さぁ、なんでしょうかね? ははは」
 口元をごまかしながら、ちょっと冷や汗なようなものを感じた。杏子を完全に怒らせちゃうと後で何をされるかわからないし……。
こないだなんかはメイド服のコスプレなんてものをさせられたし。それもわりときわどいやつを……。
「もう……! さやかちゃんも杏子ちゃんも落ち着いて……」
 落ち着いて食べれないからなのか、まどかが間に入ってきた。手にはケーキをついたフォークがある。ふわふわのスポンジが視界に入り、
「まどか、ケーキ落ちるからさ……まず落ち着こうよ」
 一番落ち着くことが必要な人に諭すと、気がついたまどかは急いで、お皿へとフォークを戻し再び間に入った。身長的に杏子の顔が見えるからあまり意味ない。
それも――イライラしてそうなピリピリした顔が……。
 杏子が舌打ちに似た音を堺に、マミさんが真剣な表情をこちらへと向けてきた。
「美樹さん、どういうことなの? 教えてもらってもいいかしら?」
 マミさんになら、答えないわけにはいかないので、ちょっと包み込みながら、
「そうですね、杏子のポジションといい、今日食べたケーキの数といいましょうか。そんなところなんですが……気がつきません?」
 伝えた。でも、わからないのか杏子とマミさんはお互い見合うと首を傾げてた。
「ほんと仲がいいですね――」
「そ、そんなことないからなさやか。絶対だぞ、絶対そんなことないからな!」
「佐倉さん、そんなに私のことが……」
 あー、もう。どうしてこの人達はこう話を変えたがるのだろうか。何かの計画? 誰かの陰謀?
「あー、なんかもうどうでもよくなってきた……」
 額に右手を添えると思わず呟いてしまった。
「何だよ、やっぱりさやかの気のせいじゃん」
「そうなの? 美樹さん」
「はい、違いますけど、もうそれでいいです」
 いつかきっと気がつくこともあるだろうし……。
 ふぅと声に現れるくらいのため息をつくと、腰を下ろした。杏子はいつの間にか座ってて、ケーキを頬張ってた。
 それだよ、それ。気が付かないのかな? もう、今日で五個目なのに――。温泉のチケットなんか関係ないくらいにケーキ食べてるよね? 
ねぇ、杏子さん……?
「それでね……」
 全員の顔を見渡したマミさんがちょっと照れながら、『これなんだけど』と手渡してきたのは聞いたこともない場所の温泉旅館名のチケット。
“印九米太”……? なんて読むのこれ……。地名すら書いてないし。本当に温泉? そもそも旅館なのかホテルなのか、何の施設なのかわからない。まさか山の奥地とかはない……よね?
「……?」
 まどかも読めないのか、こっちを見てきた。あたしもわからないと視線を送ると、
「マミさん、これってどこなんですか……?」
 疑問を口にする。チケットを持ってる人ならわかってるって思うし。
「実は、このマンションの屋上の施設なのこれ」
「うぇ!?」「えっ!?」「はぁ?」
 驚きの声が全員から漏れた。
ってか、何で杏子まで疑問形なの?
 一番驚いた声が大きかった気がするし……。
「マミ、アタシこんな場所知らねーぞ。はじめてきた時だって、なかったろ? いや、そこまで確認したわけじゃねーから確かなことはわかんないけどさ、聞いたことすらない。そんな施設ができたら、普通わかるじゃん?」
 杏子が目をまん丸にして、マミさんに近寄りはじめて、チケットを押し付けてくる。胸元に押し付けてるって言ったほうが早いかもしれない。
「それはそうよ。この施設、最近出来たの」
「「はい?」」
 ドヤ顔で一体この人は、何を言ってるのだろうか? チケットを押し付けてた杏子でさえ、動きをやめ元の場所に戻るくらいだ。
「一体、どういう……ことだよ?」
 杏子の言うとおり一体どういうことなの?
マミさんだからおかしなことは言わないと思うんだけど……。
でも、目玉焼きになんか変な料理名をいちいちつけたり、ただの丸い食器に名前がついてたりするけど、関係ない……よね?
「あのね、不思議なことと思うけど、これキュゥべぇがくれたの」
「へぇ……」
 あのキュゥべぇなら何もない空間に作っちゃうような気もするしと、他にも色々気になるところはあったけど、お茶会はそれでお開きとなった。
 あのキュゥべぇならとマミさんの言葉以上に説得力があったのは本人に直接は言えないなと、あたしは心の中でそっと思ったのでした。
 
そしてあたしたちは一度各自家に戻って、マミさんの部屋に集合。それぞれ着替えやら、温泉に行くための準備のため。杏子とマミさんは必要ないけどね。
それでまどかは途中でほむらをどこからか拾って連れてきた。この二人ほんといつから仲良くなったのかわからないくらい、いつも一緒にいるけど。
まさかね? 
あとあと手をつないじゃったりもしてるけど、ほんとに仲いいね。それによく二人だけで出かけてるみたいだけど。わりとあたしからの誘いも断る機会も増えてるし、なにしてるんだろうか? 
まぁ、その分こっちは杏子と一緒にいる機会が増えてるから――関係ないことだよね?
「ここよ」
 その声に止まると、そこには、
「何もないじゃないですか」
 マンションの屋上ということもあって、そっけないコンクリートの床と人が落ちないように鉄の金網が四方八方を塞いでいるだけだった。手っ取り早くいえば殺風景。夜にきたら、景色は綺麗かもしれないけど、まだ空は赤い。もう少しで夜景が見れるかも?
 でも、そもそも立入禁止って屋上に出る扉に貼ってあった気がするけど……? 
禁止区域に足を踏み入れるんだというドキドキ感は期待を裏切られ、屋上に出ても何もない。後ろを見ても、左を見ても、右を見ても、やっぱり見た目なんか変わらないし、そんな施設見つからない。匂いすらない。
そのため『ほんとにあるの?』という疑問はやっぱりあたし以外にも浮かんだようで。
「巴マミ、あなたの妄想に付き合う時間はないのだけど。ワタシはともかくまどかの時間を奪うのは許せないわ。突き落とすわよ? それも千回くらい。そうね、それくらいが妥当なところだわ」
 無表情でほむらが威嚇してた。相変わらず口が悪い。誰に対しても同じ口調な気がする。よくまどかは耐え切れるもんだよ。
「ほむらのやつはちょっと言いすぎですけど、何もないように見えますが、大丈夫なんですか、マミさん」
 ほむらのやつをたてるわけじゃないけど……さ。
「えぇ、任せてもらっても構わないわ。それこそ、泥船に乗るような感覚でね♪」
「それって……」
『沈没しますよね?』とは言えなかった。自信満々で笑顔一杯だから、言いづらかった。
「そうだぞ、マミのいうことなら絶対だ。泥船乗ろうじゃん」
 杏子は気がついてないのかなぁ。
「はっはは、それでどうするんですか。マミさん」
 マミさんの隣に移動したまどかがチケットを見せる。
「このチケットにはそもそも……、その――温泉旅館の場所すら書いてないように見えるのですが」
 鋭い指摘だった。
「それはね――」
 嬉しそうな声をマミさんが出すと、まどかの持つチケットと同じ温泉のチケットを胸元から取り出した。この場合文字通り、胸の間からなぜそこから出したのはおいておいて。
そのチケットを右手に持ち、天にかざすように上へと向けると突如として、回り出した。ぐるぐるとバレリーナのように――。ゆっくりとスカートが遠心力で持ち上がってく。
「ちょ、ちょっとマミさん?」
 知らない人がみたら不審者にしか見えない。止めようと近づく間もなく、マミさんは自分で止まり、
「こうして、こうよ」
 あたしたちが入ってきた屋上の扉を閉めるとチケットを御札のようにドアノブに貼り付けた。接着剤でもついてたのかと思うくらいにべったりと、マミさんの手から離れても、ドアノブから離れない。
「皆もやってみて」
 こちらを振り返るマミさんは笑顔で。
「これって、回る必要があるのかしら」
「ないだろ、マミの趣味だろ」
「杏子ちゃん、そんなこといっちゃだめだよ」
 チケットが張り付くことよりも、回ることになんか皆目がいってるみたいだけど、そこがおかしいところなのか……?
「ないわ。でも回ったほうが入れる感じがしないかしら……?」
 またまた嬉しそうな笑顔が振りまかれて。
「……もう何も言わないわ」
 ため息混じりのほむらがマミさんのチケットに、自分のチケットを貼り付けたのを目にした通りに、あたし、杏子、まどかがそれぞれ貼ってった。紙が紙とくっつくのを目にするのは何かおかしい気がする。
これも魔法の力なのかな?
 となるとやっぱり、マミさんの回転に意味が……? 疑問の解決が終わらぬまま、
「これで全員かしら?」
 マミさんの声が聞こえ、全員が頷いた。五人だけのはずだし……ね?
「じゃぁ、いくわよ」
 マミさんがチケット五枚重なったドアノブをひねり回し、開けた途端。
「ま、眩しい」
 扉の隙間から光が刺激として入ってきた。腕を条件反射して視界を遮ってしばらくすると――。
「皆、そろそろ目を開けても大丈夫だわ」
 マミさんの自信満々の声が聞こえた。来たことあるのかな?
「いらっしゃいませ」
 目を開けて一番最初に聞こえたのはその一声だった。その声のした場所には女将さんっぽい人が立ってた。しかもすぐ目の前。店員さんだろうか?
 これってもしかすると……。
「ワープ……?」
 そう――そうとしか考えられない。
あたしたちはいつの間にかホテルのロビーのような場所に立ってた。ただ、和風というのか畳張りの床、浴衣を来た店員という感じだった。他にも何に使うかわからない竹筒のような細長い棒が、至るところで伸びてた。
ってことは、ホテルってか旅館なのかな……?
 確かテレビで見たことある温泉旅館がこういう内装だったかなぁと記憶がぼやけてく。だからこそ助力が欲しくなり、
「これって、マミさん」
 誘ってくれた本人にまた問う。
「言ったでしょ? じゃぁ、行こう」
 答えが返ってくる前にマミさんが行ってしまった。しかもなぜか先導するかのように受付で何かをし始めてる。
「行っちゃった……」
だからこそ、残されたメンバーは頭に疑問を浮かべるしかない。はっきりいえば、混乱。まさにそれだった。
 でも、受付から戻ってきたマミさんにお金を請求されるがままに支払いを済ますと女湯という暖簾をくぐり、ついに中へ入った。
 ちなみに払ったお金は、一円だった。使ったチケットが1円になるものだったとかなんとか。でも、それって店員がわかってるのか怪しいところだと思うんだよね?
 どうやって入ってきたのかもあたしには定かじゃないし。

「なに……これ?」
 あまり深く考えないようにしようと思った途端これだった。
「そういうものなのでしょう。共同温泉ではある場所もあるのよ。混浴も同じだわ」
「そうだよ、さやかちゃん。知らなかった?」
 既に着替え中のまどかとほむらが慌てた素振りもない口調で答えた。そうなんだ……。でもほむらは無視するにしても、何でまどかが知ってるわけ?
「でも、これってさ――スクール水着だよね?」
 そう、あたしの手元には水色のスクール水着が握られてた。それもなぜか名前すらかいてある。しかもひらがな。名前なんて書いた覚えも、言ったつもりもないのに……?
「だって、おかしくない?」
 個人情報漏洩とか、そんなんじゃ?
「まぁ、いいじゃねーか。温泉入れば何も関係ないだろ?」
「それはそうだけどさ……、うわぁ」
 振り返れば、後ろで着替えてた杏子が既に紺色のスクール水着を身に着けてた。
 ――さくらという名札付きの。
「な、なんだよ、何かへんか?」
「い、いや別に」
 可愛いとか一瞬だけ、思ったけど……。言いたくなかった。悔しいってのが一番の理由。
――ほんと綺麗なふとももを持ちやがって!
「まだ、服脱いでないのさやかだけだぞ? マミなんかはほら、あそこ」
 杏子が指差す場所を見れば、マミさんは既に温泉ロードに乗り込もうと扉の前でスタンバってた。マミさんは黄色のスクール水着か……。何か色には理由あるのかな?
でもまぁちらちらとこちらを見てくるから……、
「待たせちゃ悪いもんね……」
 急いで来てた服を脱いで、赤いスクール水着を躊躇なく身につけた。服を畳終わると、
「じゃぁ、さやか行こうぜ」
 杏子に手を引かれるがままにマミさんの元へと到着。
「これで全員かしら?」
「えぇ、あなたが早すぎのだけが異様だったけど、特におかしなところは今のところないわ」
「ほむらちゃんの口調だと、なんかあるみたいに聞こえるよ?」
「そうよ、ここはいわば魔界。何があるかわからないわ。だから、ワタシから一時も離れちゃだめよ、まどか。いい?」
「いいけど……?」
 まどかがこちらを見てきた。助けて欲しいのかな? じゃぁ――、
「まぁ、ほむらのことはおいておいてさ、中に入っちゃいましょうぜ!」
「うわ……やっぱ、なんだかんだいって、温泉入りたかったんじゃん」
「うっさいわ、杏子!」
 杏子の何気ない一言で、思わず温泉の扉から視線を外す。
「じゃぁ、開けるわよ」
 マミさんの期待に満ちた声と共にほむらがいう魔界の扉が開かれた。そこから漏れてきたのであろう生暖かい風で、あたしは扉の奥先へと視線を戻した。
 そして全員躊躇することなく、
「へぇ、意外に普通……」
 マミさんを先頭にほむらいわく魔界に足を踏み入れたわけだけど。さっきまで赤い空だったのが、青い空に変わってるのが窓から見え、おそらく露天風呂に続くのだろう、外への扉と、サウナ室。そして、洗い場と。白い煙と、温泉独自のこの硫黄の香りがした。
どこを見ても――。
「普通の温泉旅館みたいだね」
 そうだよね? まどかも同意見みたい。
「そう。考えすぎだったのかしら」
 逆に残念がるのはほむらだった。あんだけ言ってものね。
「ほむらももうちっと、余裕を見せろよな。疲れんじゃん、そんなの」
「適所では脱いてるわ。散々なほどに……ね」
「ははは……」
 まどかなぜかほむらの声に赤面してるけど、何でだろう。

 洗い場にてしっかりと身体を洗い、いざ温泉へ! いつも以上に念入りに洗っちゃったし、期待が上がっちゃいますね。それに何かやっと入れるんだと思うと、ドキドキが増してきて――。
「楽しみね?」
 マミさんの嬉しそうな声を先頭に、次々と室内に設置されてある大きな温泉の中へゆっくりと身を入れた。
「なかなか、あったか――」
 念願の温泉だーと、入ってまではよかったんだけど、すぐに、
「こ、これって!?」
 身体に異変を感じた。痛いという感じではなくて、熱いって感じでもなくて、逆に冷めていくようなそんな感じが全身からしたのだ。いわば、鳥肌がずっと痙攣のように広がってくみたいだった。
「な、なんだこれ!?」
「えっ、これは!?」
「やっぱり……」
 近くから聞こえる皆の声も異変を感じてる声で、
「め、めまいが……!?」
 のぼせたのか思うくらいに、くらくらと頭の中が回り始めて――。
「えっ――」
 一瞬気を失ったかと思うと、あたしを襲ってきた感覚は不思議となぜか全て消え去ってた。逆にそんなのがあったのがおかしいくらい冷静でいられて、温泉が暖かいと感じられた。
 それは――入った瞬間の感覚だった。
 なら、さっきまでの感覚は一体何のだろうか?
「これって、どぅぃぅことぉ――、うえっ?」
な、なにこれ、口調がおかしい。うまく口を回せない。酔っぱらいみたいに思った言葉がでない。
「にゃんにゃの?」
「ちやかぁか、ちぃっこいなぁ」
「だぁれ……?」
 幼い声が聞こえ振り返ると杏子らしき人物がいた。確かにその場所に入ってたのは杏子だったはず。その証拠にスクール水着の名札は『さくら』のまま――でも、その杏子らしき人物は幼稚園児ぐらいまでに若返ってた。杏子のいう『ちっこい』自分の姿を確認すると、あたし自身も同様になぜだか若返ってた。
「そ、そうぃうあんたもちっちじゃない」
何かがおかしい。やっぱり、思った言葉が出ない?
「マァミにゃん、どうちてそうにゃんよ?」
「まーちゃんもやえばいいんだよ」
「え、だぁれ……?」
 声がした正面に向き直ると、おかしな人物がお互いにお湯をかけあってた。そしてそれに飽きたのか泳ぎ始めてる。
 おかしな人物は黄色い娘と、ピンクの娘。よく見る二人に似てた。
「まどかっと、マミにゃん?」
 えっ、なにこれ? やっぱ口調が変。
「あたちもやるぅー!」
 二人の後を追いかけてくちび杏子。
「なに……これ?」
 意味がわからない。どうして、若返ってるの? そういう効果? それにしても効果抜群過ぎでしょ……。入浴しただけで効果が現れるなんて。
「どうやら、外見だけでなく内面まで子供になってしまったようね」
振り返ればいつの間にか、ほむらが隣に立ってた。ただどういうわけか髪の毛がいつものロングじゃなくて、ショートカットになってるけど、
「だったら、どうちてあんただけなのぅ?」
 それ以外は元のまんまだった。もしかすると、胸も小さくなってるのかもしれないけど、はっきりとはわからない。
 でも、
「ずりゅいよ」
理不尽だ。えこひいきだ。どうして、ほむら以外ちっちゃくなっちゃったの?
「……お姉ちゃん、誰?」
「……しらないひとぅ?」
「おばさんじゃん?」
いつのまにか子供集団にほむらが囲まれた。
「これは……もちかちて……」
 精神までまさか子供に!?
「ほむぅだよ、ちらないのか?」
「うん、みぃたことないお」
 子供となったまどかに見覚えはないらしい。
「うぇ……!?」
 ほむらがいつのまにか氷山の一角のように全身を凍結させてた。何かショックなこととかあったのか、急にトイレいくたくなったとか?
「まどか……まどか…まどか…まどか……まどか…まどか…」
 えっ……、何かぼやき始めちゃったけど、大丈夫? 普段と何か態度おかしくない?
「やぁ――」 
そしてそんな混乱するあたしたちへと声が届いた。
「楽しんでいるかい? ボクが作った服と温泉は満足しうるものだろう?」
それは温泉の白い煙でシルエット姿だった。でも、それはよく知ってる影で、
「あぁまたかぁ……」
頭痛がしそうだった。
「あたりまえのことよ、あいつがかかわればこんなこと普通だわ」
 ほむらがキュゥべぇのシルエットを両指で指差す。ほむらって、こんな娘だったっけ?
「いちゅのまにふっかちゅしたの!? いっか。でみょにゃんで、あんたはちっちしてないの?」
 そうだよ。キュゥべぇが原因なのはわかったけど、ほむらだけ若返らないのが変。それにあたしと同じ肉体だけが子供に若返ってるわけじゃないし……。
「そうね、あなたの場合は馬鹿だからだろうけど、ワタシの場合は――」
 ほむらの左手にはいつの間にか丸い灰色の物体が出現していた。
「これのおかげかしら?」
「ふーん。ってか誰が馬鹿だって!」
 だいたいほむらと歳なんて変わらないし、成績だってほとんど一緒だろうに! 成績だけでいえば、それこそまどかは平均点ぐらいだし……ね。
「そっ。気がついていないだけなら構わないわ」
「はぁ? 意味わかんない!」
「美樹さやかが救いようのない馬鹿でも、テストの点数がいいのがありえないクズでも、まどかと帰り道が一緒でむかつくようなことがあっても、関係ないわ」
「ちょ……っと!」
 言いすぎじゃない!? それに最後のだけなんかおかしくない?
「それぇで――さっきから何をちゃがしてるの?」
 ほむらは皆が子供化してからただ一人だけ、何かを探すように歩きまわり顔を左右に動かしてた。
「そこにいるシルエットの本体。そこにいるはずもないから」
 その割にあんた、両手で指さしてじゃん。
「あいかわらず君の直感には驚きだよ。確かにボクはここにいない。あるのは思念体とだけ言っておこうかな」
「そこね」
 声が聞こえるといつ取り出したのか、ほむらが銃をぶっぱなしてた。いないといったシルエット、まさにその場所だった。
「「きゃ!?」」「うぉ……!?」
 ほら、こんなところでそんなの撃つから子供が怖がってるじゃん。
「それで解除法は? さもないと」
甲高い音がすると、煙のなから現れたのはキュゥべえ。ただし足元が焦げていた。白いスクール水着が異様なまでに一致してるほむらの一撃は確かに当たってた。直感なのだろうか?
「驚いたよ、まさか思念体の状態だったボクに攻撃を当てるなんてね」
「いいから、早く」
「ったく、君はいつだってそう、暴力で解決しようと……、わかったよ。ボクも意味なく身体に穴を空けられたくないしね」
 ほむらがサイトを合わしてく。子供たちは警戒し始め、耳を両手で抑えはじめた。
「だからそう焦らないで欲しいのだけど? 君たちはなぜその水着を着たんだい? そしてなぜ温泉に来たのだい?」
「なるほどね……、そういうこと」
「どうぃうの?」
「ゆっくり入れ。つまりそういうことよ」
 そうして、ほむらは肩まで温泉に浸かり始めると、まどかを捕まえて隣に座らせたのであった。ちょっと涙目になってるまどかに躊躇するような感じもしたけどやめなかった。逆になんか口元が緩んでるようにも見えた。
 ほむらのいうことを信じ、あたしもマミさんと杏子を耐久競争と称し、肩まで浸かさせることに成功した。
 そしてほむらの言うとおりゆっくり、三十分経過し始めた頃から、
「お、おぉ……」
子供だった身体がみるみるうちに元の姿に戻ってく。もとい、歳をとってく。
しばらくして、全員が元の肉体まで成長するとそのあとは、普通の温泉巡りとなった。ほむらは警戒を怠らなかったけど、二度目は怒らなかった。

終わってみれば、杏子に今度またスクール水着を見せてもらおうかなと思うあたしでした。
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