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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】決戦前夜
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2012.12.25
Skype上で行われたまどマギSSコンペ の参加作品、テーマは『普段書かないカップリング』です。
杏ほむ。いわゆる、ワルプルギスの夜の前のこと。


「この地点に出現するわ」
宙に浮かせた大きな見滝原の地図に、赤ペンで大きくはっきり丸を書き入れる。ここは確か河に面した大きな橋の近く。昔にまどかと歩いたこともある。楽しかった思い出を壊させないためにも、奴を早々に倒さなればならない。
ワルプルギスの夜を――。
「そしてここがこの街の避難場所となるはずの、位置」
 緑色でラインを引く。ここが絶対防衛線。ここを死守出来なければ、人的被害が増える一方。
 そして青色の二重丸――ここにまどかたちがいる。私が守らないといけない、そう約束したのだから。
絶対に……今度こそは守ってみせる……!
「ここから、こうやって真っ直ぐ奴は飛んでくる」
ワルプルギスの夜は橋の向こうからやってくる。それこそ旅行者のように堂々と観光するように。しかも周辺を手当たり次第壊しながらだから、たちが悪い。これが魔女の結界内の出来事なら、何も問題はないのだけど。
ワルプルギスの夜は、結界を作り出す必要もないくらいに強大な魔女。それこそ魔法少女が束にならなきゃ倒せないくらいに強い。
「それと――」
 他にも参考になるデータを空間描写する。
使い魔の種類、魔女の攻撃方法を統計的にまとめたものだ。ワルプルギスの夜の本体をいくら対策したしたとしても、使い魔が対処できなければ喰われてしまう。
それに――いかにデータが揃っていても、いかに魔法少女が束になっていても、覆すことが出来ないことがあった。
――対抗手段。
簡単にいえば、魔法少女か該当する兵器。
圧倒的火力があれば倒せるはず……、いや違うか、両方必要なのだ。どちらがかけたとしても、やられてしまっては何も意味はない。見滝原を守る魔法少女がいなくてはいけない。
そうしなければ、まどかが安全に暮らせない。
そのせいでまどかや、巴マミが何回犠牲になったのかわからない。いくらやり直しているとはいえ、まどか以外が死ぬのを見るのも、これで最後にしたい。
――誰も死なせたくない。
使い魔が大量に発生すると予測できる重要部分に赤いラインを増やすと、目の前に座っている赤髪の少女に提示する。私の貴重な戦力。
そして、兵器であり守るべき一人の彼女に。
「ふーん」
その様子が不服だったのか、退屈そうな声を杏子が漏らす。
そして私のデータを横目に、がさごそ音をたて、カップラーメンを取り出した。先ほどから口にしていた大量のシュークリームはもうなくなったらしい。
私の作戦に、
「何か……?」
問題でもあるというのか。これから、話すのは何度繰り返し、何度絶叫したかわからない最悪の魔女だというのに。
「どうしてさ――」
 杏子がカップラーメンにお湯を注ぐ。
「そんなことわかるんだよ? 見滝原にはワルプルギスの夜が来たなんて聞いたことないぜ? それにこれから来るなんて確証ないじゃん?」
 どこからか取り出したのか、お湯をカップラーメンに注ぎこちらを見ていた。
「そうね、根拠がなきゃ」
――ただの妄想ごと。そんなことはわかっている。
「あたしだって暇じゃないんだ。グリフシードをたらふく集めないといけないしさ」
 そうね、あなたってそういう人なのよね。
「だから、こうして宿を提供しているのでしょう?」
 無償の宿、そして無償の食料。破格の条件だろう。さらに魔女が現れる場所まで伝えるといういい物件。
「そんなんは――」
あまりにも杏子が真剣な顔をするのだから、
「じゃあそのカップラーメンはお預けね」
効果的一手に出る。立ち上がり、取り上げると意思表示する。暖かいカップラーメンの温もりが右手に伝わってくる。
「ま、待てよ。カップラーメンはダメだ。あたしのだ。だから、座れよな、な?」
焦る杏子を見て腰を下ろした。いえ、座ってあげたというべきなのかしら。こうして、話題を逸らしていえばそのうち、忘れることだろうし。
「そう――」
手に取ろうとしたカップラーメンはいつの間にか杏子の手に奪い返されていた。相変わらず、手が早いのね。
「でも、そんなことをいうのだから契約違反じゃないのかしら? それとも巴マミのところへ戻るのかしら?」
 これで杏子は……。
「うるせー! 誰がマミのところなんか戻るかよ! 頼まれたってあいつのとこなんか行くかよ! たださ、あたしはどうしてだか聞いてるだけだろ! 何もおかしなことなんか聞いちゃいないさ」
 予想通りに怒りをあらわにした。
「そうね」
 確かにおかしなことは聞いていない。そうおかしなことは聞いていない。
 でもこれは杏子にとって必要のないことだし、何も役に立つことなんてない。知っていたとしても、未来は変わってしまうのだから……。
 だけど――、私は変えたい。
 だから言葉にする。杏子に対する効果的な名前を――。
「美樹さやかが心配だから?」
「ち、ちげぇよ! あいつも関係ない! あたしが気になってるだけだって言ってるじゃんか!」
 だんだんと杏子の声のトーンが上がってきている気がする。
 それにどこか頬も赤くなりつつあるように見える。
「じゃぁ、こうするしかないのかしらね?」
 私は時間を止め、以前から予定していたことをした。いわゆる、杏子対策。
「あれ……どうしてあたしのカップラーメンをお前が持ってるんだ?」
 カップラーメンを奪い取ったのだ。
 そして、それをゆっくりと傾け中身を捨てようとする。
 杏子の慌てる顔が見え、更に傾け中身が落ち始めたところで時を再び止める。
 後は練習通りにするだけだ。
 何十、何百と練習した。
 人に決して誇れない技能、こぼれていくラーメンの汁を元の状態に戻す。
 ――たったそれだけのスキル。
「おい食べ物を粗末に――、ってあれ……?」
 杏子が口を開け唖然としていた。当然だと思う。
 こぼれたものがこぼれておらず、元のままなのだから。マジックみたいなものだ。私たちが……、マジックなんていうのはおかしいのかもしれないけど、何も知らない人にとっては超常現象と何も変わらないだろう。
それは魔法少女だって――例外はない。
「お前さ、カップラーメンひっくり返したよな?」
 杏子の声のトーンが下がっていくのがわかる。
「さぁ……? そんなことあったかしら?」
 だから、こちらはただひたすらに低いテンションで答える。
「いや、明らかにひっくり返したじゃん! あたしからひったくってさ……! そもそもどうやってひったくったのかさえわからねぇ」
「気のせいよ。カップラーメンはそこにあるでしょ?」
 時を止めれば、同じ場所に戻すのも問題ない。
「あれ、ほむらが持ってなかったっけ……? あたしの気のせい……か? いや確かに見たはずだ……。おかしいな……おかしいぞ……」
「そう、気のせいよ。少しは落ち着いたかしら?」
 言葉を繰り返すことで、言霊として彼女に入れ込む。
「そうだな……。なんかどっと疲れた気がする。やっぱ疲れてるのかなぁ……、幻惑を見るなんてあたしらしくもないしさ……」
「そろそろ時間じゃないかしら? それの」
「おっ、そうだなそろそろ三分たったな」
 待ってましたと言わんばかりに杏子が笑顔を見せる。
 相変わらず、食べることが好きなのね。こないだは、別の種類のカップラーメンを食べていた気がする。味噌味だったか。今回はとんこつ味。
「ワルプルギスの夜を倒したら、私はこの街を出るわ。後はあなたの好きにすればいい」
 ゆっくりと宙に浮かしたものを束ねていく。必要になった時にまた、開けばいい。
「前もそう言ってたけど、いいのか? 本気で戦ったら、ほむらがたぶん勝つぞ?」
 何を言うのだろうか、
「そんなことはないわ」
 私は知っているだけで、強くなんかない。
「私がすべきことはもうそれ以外にないから……、邪魔者は去るだけよ」
 魔法少女じゃないまどかは、私が側にいたら魔法少女にいずれなってしまうかもしれない。でも、杏子がいればきっとならない。美樹さやかもいる。
「ふーん……じゃあ、なんでそんなにさ。辛そうな顔してるのさ?」
「何を――」
言っているのだろうか。軽く自分の顔をなで確認する。
なんもヘンテコもない、いつもの顔の感覚。
何かあるとすれば、眼鏡がないくらい。私がまだ人間だった頃の、抜け殻。
赤い――眼鏡。
「はは、そういう意味じゃねーよ。もっと深い顔だよ」
杏子が笑いながら、そう言う。声のトーンもどこか高い。彼女らしい声というリズムさえある。
だからこそ、私は落ち着きながら、
「深い顔?」
と言葉を発した。
杏子の放った言葉には聞き覚えも、想像さえつかない。そもそも表情をかえたつもりも、乱したつもりもない。
わからない私をしょうがないと一蹴するように、
「心だよ」
静かに杏子が答えをだした。
「心……?」
顔という話じゃなかったのか、と思ったが、
「どういう意味なの?」
杏子は深呼吸するかのように大きく息を吸う。そして目を閉じ、息を吐き出しながら、
「嘘つき」
声を放った。確かに言葉を発していた。
「えっ?」
しかも聞き慣れない言葉を。
――嘘つき。
「一体――」
 なんのことだろうか。わけがわからない。
「何……?」
 戸惑う私を気遣ってか、カップラーメンをテーブルに置くと、
「ウソさ、あたしの。ほむらっていつも気を張り詰めすぎてる感じがしてさ。もう少しフランクしてもいいじゃん? それに――」
杏子がわらった。そして、それにと言葉を続け、
「まぁ……あんたの好きな通りにやればいいさ、大体――」
真剣顔を向けてくる。何に対して真っ直ぐに進む視線を持っていた。
「そういう関係だろ。あたしたち。利害の一致、たったそれだけの関係」
「そうね」
 杏子は、嘘つきということ自体嘘だというけど……、なぜか胸が傷んだ。胸の奥、ずっと我慢している部分が痙攣しているようだった。
でも、耐えるしかない。
ウソをついているのは確かなことで、嘘つきなのは私なのだから。杏子は気がついていないようだけど、的を射ている。
「じゃぁ、手はず通りにお願いするわ」
「あぁ、わかった」
 私は杏子を部屋に一人残すと、部屋を出た。このままとどまっていたら、何かが壊れてしまう。そんな気がしたから。
 まどかを救えればいい。
 たったそれだけなのに、それ以上のことを望んじゃいけないのに――、私の願いは杏子の言葉で変質してしまいそうだった。
「……あなたもそうなの?」
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