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R.U.K.A.R.I.R.I | 【まどかSS】H.N.Elly
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2012.11.16
ハコの魔女 H.N.Elly(Kirsten) エリーちゃんの物語を書いてみました。
オリジナル解釈です。

ハコの魔女。その性質は憧憬。筋金入りのひきこもり魔女。 憧れは全てガラスの中に閉じ込める。 閉じ込められた者はその心までも簡単に見透かされてしまうが 考えるより先に殴れば問題ない。(公式サイトより)



少女はゲームが好きだった。
「……うやーん」
例え唸り声を出し、困惑な表情をあげることになってもやめることが出来ない。むしろ快感のように喜びの声をあげていくばかり。
感情を震わせ、激情と化してしまうのだ。
今もまた、
「はふぅ」
と頬を紅潮させ、何か得体の知れないものをときめいてしまう。そしてコントローラーのボタンを押すことにただ興奮していく。ボタンを押すのが気持ちいい、手の感触もいいと叫び――無邪気な笑顔を見せる。
少女のゲーム好きは、好きどころか大好きというレベルに近い。まるで砂漠地帯のオアシスのように心の渇きを癒し、満たしていくのだ。
「えふぅ……はぁ……」
 甘い声を漏らす少女は肉体を潤わす自分の中の性欲、媚薬のような効果をゲームで得ていた。やればやるほどにとろりとした表情を見せ、子猫のように甘い声で鳴いていくのだった。
媚薬によって高まった身体を落ち着かせる行為を知らない少女は、だからこそやめることができなくなっていた。ゲームをやり続ければ、ずっと気持ち良い気分で、ずっと身体の奥底から気持ち良いでいられるから――。
「あっ……ダメ……だから」
少女は真っ白な部屋にいた。
光が差し込む窓なんてものはなく、あるのは外と部屋を繋ぐ扉。それ以外は白に統一されていた。一面の白紙世界。床と壁はもちろんのこと、あろうことか天井でさえも白い。電球も蛍光灯も存在しない。
それであるはずなのに、どこか部屋の中は明るかった。
部屋の中心に四角形の発光体があるからだ。
「うーん、ん?」
その光を放つ四角形の発光色であるモニターを少女は見つめる。そしてモニター、キーボード、コントローラーを行ったり来たりと視界を巡らせる。
たったそれだけのはずなのに、それはひどくおかしく見えた。
それは、それは……。
部屋の中にはそれしかなかったのだ。勉強机も、タンスも、洋服棚もない。
少女以外にこの部屋にあるのはゲームを遊ぶために必要であるモノ。たったそれだけだった。
まさに白い部屋なのだ。
白い箱庭があった。まるでドールハウスに人形とテレビしかない偽りの世界が。
そんな中、少女はひっきりなしに嬉しそうで、不満げに笑う。
少女のための部屋で、それ以外には共有しない、共用させない部屋だった。
だから少女にとって必要なことはゲーム。それ以外は不要。自分の欲望だけが満たされる世界を構築していたのだ。
「気持ち悪いのはいらない」
 はじめて白い部屋に入った時、少女はそう答えた。
白い部屋は、元々は日本家屋のように茶色の床、夜景が見える眺めの良い窓。他にも様々にあった。少女のためにと、たくさんの本やおもちゃもあった。
何かに少女は気持ち悪さを感じ、
「うっ……」
 と嘔吐までしてみせた。
 親は少し不安になったが、あなたのために用意したからと介護しようと手をのばす。少女は豹変したかのように、首を傾げて、
「いらない! いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない」
 窓を割り、本を破り、玩具を壊し、タンスを破壊する。そして、元々あったものを窓から放り投げるようにして、出してしまったのだ。
やがて少女に用意されたはずの部屋は『眩しい、空気が悪い』という少女の嫌悪感を満たすため、窓や蛍光灯を工事してまでなくした。窓がない方が、空気が悪い。健康に良くないよ。そんな意見も出た。それも少女の親の意見で、当然のことだった。しかしながら、
「はぁ? いらないに決まってるじゃん! あんたたち何なの? 私の何のつもりなの?」
まん丸に見開かれた眼光ともに発せられるその一言で、親は縮み上がった。それはまるで自分の心が見透かされたかのようも見え、恐怖とし、少女の願いをいとも簡単に叶えてしまうこととなったのだ。
少女への恐れから扉を白く塗りたぐり、空模様の壁紙をも白く染め直した。
白い部屋が生まれたのは、六歳の誕生日のこと。
こうして――ゲームをするだけの部屋が生まれた。
少女は感謝することもせず、あたかも当然のようにただ、
「ふーん」
と鼻息混じりに笑う。
そしていつの日から、親と娘の会話はぴたりと無くなった。
少女にとって、ノンプレイヤーキャラクターとして親を――。
親にとって、仕えるべきご主人様として娘を――。
そんな風にお互いを思い始めたのだ。
「あふふっ」
楽しそうな声を少女がまた漏らす。
少女は何事よりもプレイする時間を生きがいとしていた。
寝る時間も削り、食べる時間も削り続ける。不規則な生活の影響、栄養バランスの欠如。様々な理由が重なり、一二歳という成長期にも関わらず、背丈は100cmにもならなかった。成長が止まりつつあったのだ。
それを良しとも、悪しとも思わない少女はただゲームをプレイするのみ。それ以外を何も望まなかった。
キーボードをブラインドタッチして、モニターの中でその操作通りにキャラクターが喋る。少女のキャラクターに対して、返事が帰ってくる。その返事に対してまた少女が返事を入力する。
ゲームの中で特に少女が心を奪われたのはMMOと呼ばれるオンラインゲームだった。今はその画面がモニターに表示されており、特定の条件で出現するボスを倒し終えたところだった。
『エリーさん――ありがとう』
 チャットがその話題でうめつくされていく。二十人ものプレイヤーキャラクターたちが同じ言葉を発言していたのだ。
「はぁ……はぁ……」
 と息を乱しながら、少女はチャットを返す。
『別に普通のことだよ』
 少女はその中でもランカーと呼ばれるトップレベルに属するプレイヤーの一人。このゲームで知らない人は、いないくらいまで有名であった。そのキャラクターとパーティを組んだら、認められ、栄光にすらなると言われるぐらいであった。
それには理由があった。当然のようにトップレベルな装備を持っていた。ドロップ率がほぼゼロのはずの装備を全て持っている、そしてその装備を扱える技量もあった。しかしそれ以上に噂になることがあったのだ。
『エリー』と呼ばれるキャラクターがオフラインにならないのだ。つまり、二十四時間オンラインで居続けていた。動き続けているのだ。
当然常時オンラインでいることはありえないとプレイヤーたちは思い、寝落ちと呼ばれる、プレイ途中に寝てしまう行動に思われて、嘘に見えた。
当然のことだ。
寝ない人間はいない、ましてや毎日いや常時プレイし続けるのは不可能なのだ。食べる時間、遊ぶ時間、寝る時間、学校の時間。生きる上には様々なことに時間をとられてしまうのだから。
「あーあー、何でみんな寝ちゃうんだろ? やめたら面白くないのに」
少女はログアウトしていくフレンドに不満を垂らす。ありがとうと言った人たちは一人、また一人と消えていく。
その様子を見て、少女の中である考えが渦巻いていく。
どうしてやめてしまうのかと苦痛を感じる。ヤル気がないのかとさえ感じるぐらい、ある種の怒りを得ていたのだった。
だけど、
「ま、いっか」
少女はゲームのコントローラーを握りなおすと、操作を再開する。
「――役に立たないし」
いつものことだと諦めた。誰もついてこれないなら、置いていくしかないと。
「普通はおちないもんでしょ、もう」
ぼそぼそと部屋で呟く少女を見守る人がいた。
メイド服を着たその女は無表情のまま、話しかけられるのを待っていた。目には包帯を巻き、口にはマスクをして、その背中には一枚だけの部屋の色と同じ、白い翼があった。
でも、はっきりと少女を見つめていた。視界が封じられているはずなのにそこに少女いるのがわかっているかのように、顔を向けていた。
「……」
それが少女の母親と言ったら、誰が信じるだろうか。白い部屋の模様のように微動だにしない。ただ見つめるだけの存在のことを。
母親に話しているつもりなのか、はたまた独り言なのか、
「そういえば、しばらく移動してなかったなぁ。そろそろ強い奴をPKしたいなぁ。みんなすぐ死んじゃうんだもんな。面白くないよ――あの娘にしよう」
 画面に現れたピンク色の少女にときめき、少女が笑った。
「今度は壊れないようにしなきゃ」

少女を乗せた白い部屋はやがてハトのような羽を生やすと、
次の遊び相手を探しに旅立つのだった。
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