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2012.11.11
影の魔女エルザマリアが人間から、魔法少女、魔女にまで至る物語を書いてみました。
オリジナル解釈です。



 寂れた教会の中で、二人の男女が祝福をあげようとしていた。
一人は髪の長い少女で、もう一人は短髪の少年だった。
祝言が挙げられるはずの教会には、それ以外の人物も人影すらない。それどころか、男女は花婿、花嫁姿ではなく破れが目立つ服を着ていた。
唯一あるのは、少女の頭にベール代わりの白い布――それも少女が毎日丹誠込め、作り上げたシルク素材のものだった。
そのベール代わりの白い布をめくり、二人は互いに愛の言葉を交わす。
――愛しています。結婚しよう。
そんな言葉だった。
誰も祝福してくれない、結婚指輪も何もない。それでも二人は幸せそうだった。これでいいのだと二人とも感じていた。誰もいない教会の中、ステンドグラスだけは祝福の声をあげ――、陽の光によって、七色に二人を輝かせる。少女はまるで光のドレスを纏っているかのように少年は見えた。
だから少年は綺麗だよと言葉をかけてから、
「さぁ――」
 少女の肩に手を置く。少女は恥ずかしながら頬を染め、目を閉じるとゆっくりと少年へと顎を上げる。――口を突き出すような姿勢となった。
 そして、少年がゆっくりと同じように目を閉じる。柔らかそうな少女の赤い唇に少年は心が踊っていくのを感じた。
 ――いよいよ、これで僕たちは結婚するんだ。
 そんな想いを胸に少女へ迫る。
だというのに、
「――それはできないな」
 それは中止された。幸せな空気がたったの一言で、不幸の兆しとして生まれ変わろうとしていた。
「なっ――」
 少年が振り向くとそこには、教会の扉の前に不幸を振りまいたものがいた。――黒い男。それも右手に長剣を握りしめ、左手を着した黒のローブによって隠しているものを。
「見つけたぞ……。こんな場所にいたとはな?」
 その言葉を機に、神聖な教会に相応しくない黒尽くめの同じ格好をした男が、一人、二人と次々に入ってくる。合計十人の黒のローブを着した男たちが、少年たちを囲うように帆を描くように近づいてくる。
「どうして、放っておいてくれないんだ!」
 少年が少女を守るように前に立つと叫び声をあげる。そして少年が何かないかと周囲を警戒する。少年たちには戦うための武器も身を守る盾もないのだ。焦る少年には何も見つからない。この身を圧迫するような――重い空気が近づくばかりだった。
空気は近づくと、
「それで戦争が終わるなら、誰もお前みたいな子供に用はないだろう――しかしな……戦争には、人がいるんだ」
 そう口元を歪ませて言う。禍々しいほどまでに嫌な表情だと少年は感じた。そして二度と見たくないと思っていたはずの表情だったと悔やんだ。
「ふざけるな、僕は――と一緒に行かせてもらう」
「行けると思うのか? お前の後ろの小娘がどうなるのか、わからないお前でもないだろう? 断れば――」
 その先はわかるだろうと微笑をあげる。それにつられて、周りの男達も小さくあれど冷たく笑い声をあげていた。
「くっ……!」
 少年は思い出していた。少年と少女を逃がしてくれた自分の姉、母、父がどのようにされたのかを。
父の前で――、母と姉が爪を一枚一枚剥がされ、毒々しい色をした薬を飲まされ、身動きが取れないよう鎖が手足の自由を封じ、熱を持った鉄が次々に打ち込まれ続けるのを。悲鳴という悲鳴で興奮し、熱い快感を得る男たちが次々に母と姉を獣のように貪り尽していく姿を。
母と姉が壊れていく、そんな状況の中少年たちはただ隠れ続け、最後に父が自らの首を掻っ切るのを目にした。母と姉も満足した男たちによって、息を止められたのも目にした。
少年たちに出来たのは声を殺し、涙することと、忘れないほどまでに歪んだ表情を持った男の姿を覚えることだけだった。それが今ここにあった。不幸の空気を漂わせるものとして。
だから、
「僕が行けば、彼女には何もしないんだな?」
 少年は諦めの声を上げた。少女の身体を男たちの好きにはさせたくない。そして、少女を殺されたくない。禍々しいほどに歪んだ男に触れさせたくない。
 死んでしまった家族を想い、涙する。結局何も変えることが出来なかった自分に、涙する。そして、唯一守れる少女のために、涙した。
 少女のためになら、死ねると一歩踏み出そうとすると、
「い、行かないでっ!」
 少女が少年の服を掴む。その手は震えていた。その振動が少年の心を揺さぶる。行きたくない、少女と離れたくないと。けれど少女のために――、少女のために後悔なんてしないと、
「――、やめてくれ。君だけは……、君だけは生きてくれ」
 振り返ることをせず、少女の願いを断ち切るようにその手を叩いた。
 その様子を男たちは楽しそうに見つめていた。早くしろと言わんばかりに。
「さようならだ」
 男たちが少年を囲い、どこにも逃げられないようにすると、その勢いに押されるがまま教会の入り口へと歩き始める。少年はそんなことをしても逃げないと声を零すが、男たちはやめようともしない。逆に勢いを強める一方だった。
「やめて――!」
 少女が叫び声をあげても、男たちはやめることはなく、ついには教会の入り口まで少年を運んでいってしまう。
「――! ここで待っていてくれ、僕は必ず生きて帰ってくる……! だから、祈って――」
 少年の声が途切れ、教会の入り口は閉ざされた。
 誰もいなくなった教会の中で、少女は倒れるようにして泣き崩れた。
 ――何分間、何時間のときを少女は泣き続けていたのだろうか。陽は疾うの昔に暮れていて、月明かりがステンドグラスを彩り始めようとしていた。
「祈り……」
 泣き続け、目から出すものがなくなった少女はステンドグラスを見上げる。そして、
「神様……、どうかお願いします。彼を返してください」
 膝をつき、両手を握り締めると祈りを始めた。
 少年の無事をただ願って――。


 少女は何日間も祈り続けた。食べることも寝ることもせず、ただ少年の無事を祈り、戦争の終結を願い、少年の生還を望んだ。
 願う度に少女の肉体は痛み続けた。空腹による、腹痛。栄養失調による、頭痛。身体中が悲鳴をあげていた。
 それでも少女は祈ることをやめようとしない。祈ることを続けようとただ天に願う。
「あっ――」
 それなのに少女の身体が一度大きく揺れ始めると、
「がふぅ……!」
 床へと叩きつけられた。動かそうにも身体はピクリともせず、視界の色がもはやなくなりつつあった。ステンドグラスのカラーがモノクロへと見え始め、
「ごめんな……あい。あなたのためにもう祈れない……」
 嘆くよう声をこぼした。その目には泣くことはもうやめようとしたはずなのに、うっすらと涙の粒が浮かび始める。
――まだ泣けるんだと想うと視界の色が消えた。
少女の視界は、白と黒の世界へと変わり果てたのだった。
「ねぇ君には――」
意識が朦朧とした少女の耳に幻聴のような不思議な音が入る。
「何か願いごとがあるのかい?」
 誰もいない教会であるはずなのに、少女の耳にはっきりとした声が聞こえたのだ。
 そして、少女の目にその姿が目に入った。
 白い生き物だった。少女が生まれてこの方一度も見たことがない生き物の姿。
 それは天使にも、悪魔にも見えた。少女にとって、もはやそれはどちらでもよかった。幻覚の一種、そう感じていた。だからなのか、
「――がいつ帰ってきてもいいように、この場に……ずっといたい」
 不思議と願いごとを、口にしていた。
――祈れないくらいなら死んだほうがまし。
そう幻覚に願いを告げる。
「君の願いは――」
 その幻聴が聞こえ終わる前に、――少女の意識は消えた。


「んっ――、あれ……?」
 少女は気がつくと、身体の痛みも空腹感もなくなっていることに驚きを得ていた。あんなにも痛かったのに、あんなにもお腹が空いていたのに。
 身体が――、軽かったのだ。
「あっ」
 ――そうか神様が願いごとを叶えてくれたんだ。
「――。ありがとう」
 少年に感謝をし、少女は神へと祈りを捧げることを再開するのだった。
 教会が壊れ、何もないただの丘になっても少女はその場でただ祈り続けていた。それが少年との約束であり、願いであったから。こうしていれば、少年といつか再開できる、そんな気持ちがあったから。
いつまでも少年を待っていられると嬉しさだけがあった。
 けれど――何も嬉しいことだけではなかった。
 少女がいる丘を侵食してくるものがいたのだ。それもあろうことか少女の肉体に触れようと企むもの。
物音に気づき、振り返り見えたのは、少年を連れ去った男の姿だった。声を荒げ、両手を少女へとまさに襲いかかろうとしていた。
「ひっ――」
 少女が恐怖に悲鳴を上げ、目を閉じると、
「ぐががが」
 男の悲鳴と何かの砕ける音が聞こえ、仕舞いには何も聞こえなくなった。静かになったことを不思議に思い、少女が目を開けるとそこにはちぎれた衣服と、黒い――影だけがあった。
「……?」
 少女はそれ以来、振り返ることをやめた。少年が帰ってくるまで振り返ることをせず、ただ祈りを捧げようと決めた。だから、誰かが声をかけてくれても、殺意のような人間の視線を感じても無視した。
 断末魔が聞こえると、不思議ともう誰かの声も視線もしないのだ。
少女はそれに満足し、悲鳴は安心感得るための感情となった。
祈りが叶っているのだと少女は、笑った。


 そして――、誰もいない真っ白な世界に少女はいつの間にかいた。
 何もない空間だった。
 あるのは少女と少年を待ち続ける丘だけだった。
 時より、少女の祈りを邪魔するものたちが紛れ込んだ。
しかしながら、それは一瞬にしてまた静寂へと戻る。少女が願えば、邪魔をする者たちは消え去るのだから。
 ――少女が少年を待つ世界。
 それも長くは続かなかった。
 何もない空間に青髪の少女が紛れ込んできたのだ。
少女はいつものように祈りを捧げ、青髪の少女をこの空間から排除しようとした。だというのに、青髪の少女は一向に空間から排除できない。それどころか、徐々に少女が祈りをあげる場所へと近づきつつある。
 少女は苦悩の声を上げ、祈りを一掃強くする。
 影が生まれ、青髪の少女へと迫る。効果はまるでなく、少女へ依然として接近を許すことになる。
 少女が肩を掴まれたと思った時には、既に痛みを感じていた。斬り裂かれているという痛みだった。何度も何度もそれは少女の背中を襲う。
 それでも少女は祈った。祈り続けていた。
 そして、
「ごめん……なさい」
 少女はただひたすらに謝り続けた。
 少年のために祈れなくて――ごめんなさいと。
 
 消えゆく意識の中で、少女が振り返れば少年の面影に似た少女の姿が――、見えた。
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