[PR] 一戸建て
R.U.K.A.R.I.R.I | 無料誌(仮)予定のサンプル。
About Circle Board Twitter Link Circle work Mail RSS facebook google+    同人サークル『R.U.K.A.R.I.R.I』のHPです。
ブログ内人気記事

他ブログ及び本ブログ最新記事


2012.07.22
2012/07/22 更新しました。

コミケ82で無料誌として、配ろうかなぁと思っているもののサンプル。
でも、配るかまだ不明です。

次回新刊用のサンプルは配布しようとは思っています。


「……ふぅ」
今日の晩御飯何を作ろうかなと思考を巡らせながら、私はキーボードのキーをリズムよく叩いていた。特徴あるプラスチック音、その音がフロア内に響く。
深いため息をはくと、目元に一度手を触れてから窓の外を見つめた。隣のビルがはっきりと見え、パソコンの前に座ったスーツ姿の社会人と思われる人物たちが同じように動いている。これだけ見るとロボットみたい。
無表情で、ただ単純にボタンを押すだけの――。
「……もうこんな時間か」
フロアの窓から見える外は、赤い空――。夕暮れが濃い青色の闇へと徐々に変貌しつつあった。時間も時間だし日も落ちる頃合いだからか。十階建てビルの九階から見える景色であっても、外で見る景色と何も変わらない。そんな印象を受けた。
壁に備え付けられていた時計は一七時十分前を示していた。秒針が時を秒ごとに動く。あとちょっとで今日の業務は終わりを告げる。となれば考えることは決まっている。――晩御飯。
「……」
今日の晩御飯当番は私。まどかに美味しいって言われるものにしたいけど、まどかは何を食べても『美味しい』と答えてくれるので、作るこちらとしては難しいものがあった。表情で中々判断できない。
「これでよし」
全ての数値が入力されているのを再度確認して、決定キーを押す。パソコンがそれに応答し、実行ダイアログが動き始める。以前入力ミスしたことで膨大なデータの全部最初から打ち直したことは記憶にまだ新しい。――打ち間違いの原因は分かっている。それは単に他のことをよく考えているから。集中してキーボードを叩けば、間違えることは恐らくないだろう。
――でも、まどかのことを考えない時間なんてない。
だから、まどかのせいじゃない。私の確認ミス。決定キーを押す前に再度、確認すればいいだけ。私がいけないだけなのだから。
実行ダイアログが終わりを告げようとし、
「あっ……」
その結果として、データ計算の結果がディスプレイに表示される。目をいくら配っても数値は変わらない。
「……」
どうやら、今月も無事に黒字らしい。ただ、パソコンのディスプレイ画面の一項目だけは……、赤い数値――マイナスであった。
そのデータを辿ると、――暁美ほむら。
私の名前が見えた。
逆に一番高いのは、杏子さやか両名によるユニット『杏さや』での売上だった。
「はぁ……」
売上が低い理由は分かっている。私ができる仕事が少ないから……。それにその受け持った仕事自体も予想以下の売上しか得られていないから。
だから、売上が……マイナスになっていた。挽回しようと試みてもあんまり成果が出ていない。悔しさを感じても感じるだけで何も変わらない。変化が仮にあったとしても、発芽した芽がやっと出てきたようなほんの僅かな変化。その芽が成長すればいいのだけど、それは今も叶っていない。
「……」
杏さやは仕事が増える一方で。差が広まるばかりだ。私が仕事を終えれば、二、三つ先へ進んでいく。
パソコンのディスプレイ画面から再び目を離し、フロア内を観察する。誰もいないフロアを――。パソコンの稼働音と空調を管理するエアコンの動作音だけが耳に入る。それ以外は何も音がしない。私以外の人がこのフロア内には存在しないから。
さやかと杏子は朝からグラビア撮影で、カバンすら席に置いていない。確か直帰すると聞いていた。そのうち、このビルの下層にある居住区部分に帰ってくるだろう。
だから、待っていてもここには戻って来ない。まどかは確かお金持ちのペットたちの散歩業務。朝起きた時、そう聞いた。その記憶通り、確かに予定表代わりのホワイトボードに『散歩楽しみ』と書いてある。さやかと杏子は『グ・ラ・ビ・ア』と。
――私は……、私は何も書いていない。
最近はこういったデータ入力か総務関係の雑務っぽい仕事しか行なっていない。でも、こういう仕事も大切なこと……のはず、そう自分に言い聞かせる。まどかは『ほむらちゃんにすごくあってるよ』とこんな私に言ってくれた。
でも……、みんなが頑張る中、私はただ一人だけ貢献できていない。その事実だけは変えたかった。これはそのせめてもの罪滅ぼし。そう自分に言い聞かせて、呪印のように自分に刻み付ける。
「……」
私と違って、さやかと杏子はいわばこの会社の看板アイドルだった。よく人気の雑誌表紙のグラビアを担当していた。それは巴マミも同じでグラビア界でその名を轟かしていて。
「……グラビアなんて」
自分の身体を見つめなおす。成長することのなかった肉体だけが視界に入るだけだった。成長は中学を卒業すると同時に止まった。魔法少女はそもそも成長するのかわからない。でも、巴マミやさやかたちは若干ながらの成長を外見だけでも判断できる。特に巴マミは胸の成長がよくわかる。
「はぁ……」
元々この会社はグラビア撮影など、つまり誰かが被写体になる仕事なんてなかった。窓掃除、ごみ拾い、人探し、ペットの散歩、ガーデニングとどちらかといえばなんでも屋。――そういった部類の仕事をしていた。いつからかグラビア関係の仕事が多くなった。確かそのことについて一度巴マミに聞いたことがある。お金が簡単で、しかも多く入る。そういう理由らしい。仕事を取ってくるのが巴マミのため、私たちは何も言わなかった。
それは……、巴マミは営業職であると共にこの会社の社長でもあるから。何も言えなかったともいうのかもしれない。巴マミがこの会社を起ち上げたのは簡単な理由だった。
――佐倉杏子のため。
それはまともな生活をしていない杏子の生活を正すのと、距離が開いてしまったマミと杏子の溝をうめるため。
……なのだと思う。
はじめは拒否反応を返していた杏子だけど、さやかが手を掴み引っ張りこむことにより、徐々にさやかに導かれるようにして、仕事をこなしていった。それの恩恵なのか、一年足らずで人気の人物。そこに君臨していた。
これがキュゥべぇによるものなのかなんなのかわからない。だけど、巴マミが会社を作ってから不思議と魔女はその数を減らし、しまいには出現しなくなった。インキュベーターのエントロピーの回収方法が変わったのだろうか? 仲の良い巴マミなら何か知っているかもしれない。でも、鹿目まどかが死ぬ世界はもうなくなってしまったから、私はそのことに関しては特に気にしていなかった。まどかとずっと一緒にいられるのなら理由なんてどうでもいいから。
「……?」
不意に私の思考を遮るように電話の呼び鈴が鳴り始めた。定時とされている十七時まであと数分しかないのに――。少し苛立ちを覚えるが出ないわけにはいかなかった。
――ここには私しかいないのだから。一度深呼吸すると、
「はい、株式会社ティロ・フィナーレです。巴ですか……? 少々お待ちください」
自分でも不思議に思える。なんていう営業声――。録音したら、笑ってしまうかもしれない。
受話器を置き予定表を覗くと、在室という文字のクリップが貼ってあった。なら、社長室だろうと私は席を立った。

☓ ☓ ☓

「……はぁ」
社長室は私たち“普通の従業員”の活動するフロアにはなかった。一つ上のフロアにある。そのため、こうして階段を登る必要があった。厳密にいえば、登る必要はこれっぽっちもない。どこにでもあるビルなどの建物にあるエレベーターがこのビルにも備え付けられているから。――乗れば、自分の好きなフロアへ自由に移動できる乗り物。
だから、社長室に行くのにそのエレベーターを使えばいいのだろうけど、経費削減するために私は使わないと勝手に決めていた。必要ないものは削っていけば、その分節約になる。それに魔法少女は多少動いても疲れない。
――でも、エレベーターに電源が入っている限り、この行動に意味はないのだろうけど。
突然の来客も当然あるから、電源を落とすわけにもいかない。来客って言っても、大体はスポンサーや記者ぐらい。あとはメール連絡か、電話連絡がほとんどで実際に会うことは少ない。ほとんどないってくらいかもしれない。
社長室と書かれたプレートの扉を叩く。木製の特徴ある音が響いた。
「……いるんでしょ?」
中に聞こえるかわからない小声が出た。どうせ、ここには誰もいない。声を出せば自然と聞こえるだろうという判断だ。まぁ、ノックをした時点で誰かが来たという事実は伝わっているはず。そうしたら、誰か来たのかを監視カメラを通して、社長室にあるモニターで確認すればいいだけだし。まぁ、寝ていたり何か“意識を取られる”ことをしていたりしない限りわからないはずがない。
――ここのフロアは社長室へ入るための扉しかないから。
あとは壁という廊下。一面白に塗られた壁にたくさんの絵と杏子とさやかの肖像画なんかが飾ってある。普通の社長室とそれだけで違うと言い切れる。セキュリティが強い部屋ともいうのかもしれないがおそらく違うだろう。意味合い的には社長室とは名ばかりの一人暮らしの部屋。それが妥当なところ。ちなみにこのビルの一階には大きな巴マミとキュウべぇの肖像画が飾ってある。誰が見るんだろうとは思う。私ならまどかの肖像画を飾るのに。
まぁ、偉い人は高いところに行きたがる。お山の大将というやつね。きっとそういうこともあるのだろうけど、
「いるわよ、入って大丈夫よ」
電子音で扉のロックが外れるのを確認すると、部屋に足を踏み入れる。
――甘い砂糖の匂いがまず私を襲った。
「はぁ……」
 そして、紅茶のハーブの匂いが鼻を刺激する。
――見覚えがある部屋。そう錯覚する人が必ずいるはず。
それは昔訪れたことのある巴マミの部屋に似た空間が、目の前に現れているから。何も知らない人が目隠されてこの場に連れてこられたら、あそこの部屋のことを思い出すのかもしれない。とはいっても、あのマンションの部屋はもうない。取り壊しというより、契約の期限? というので取り壊されてしまったからだ。だから、思い出すだけで違う場所と認識するはず。
「あら、暁美さん何かようかしら?」
 巴マミがカップを片手にこちらに微笑んでくる。
「あなたにようがあるとしたら、もう決まっているんじゃないの? この時間帯なら主に仕事の話よ」
 社長室にかけられている時計は十五時を少し過ぎていた。
「そうね、そうかもしれないわ。でも、この時間に電話してくるなんて面倒くさそうな話なのかしら?」
 苛立っているような、笑っているようなそんな声量で巴マミは答える。
「さぁ、そこまでは聞いていないわ。だから、電話に出てちょうだい」
 私の仕事は、巴マミに電話が来たことを伝えて出させること。それ以外のことは、優先事項が低い。
「そうね。でも、いちいちここまで暁美さん登ってくるの大変じゃない?」
何を言っているのだろうと思う。こういう設計でこのビルを作り上げたのは巴マミだというのに。魔法通話が出来れば一番早い伝達方法だというのに、この空間は魔法通話が遮断されている。キュウべぇの力が何らか働いているからだと思う。電話にしたって、特殊な設計をしているのかこうして口頭で伝えなければ出ることすらできない。
「……なら、魔法通話ができるように結界を解いてくれない? それか普通に電話回線を引いてくれるだけでもスピードが変わるわ」
 いくら仕事をお願いしてくる相手だとしても待たせるのはビジネスとしていけない。
「ふふふ。それはだめよ。ねぇキュウべぇ」
 そう巴マミが言うと、机の上に座っている白い生命体に声をかけた。
「そうだね。万が一という言葉があるかもしれないからね」
その問いに答えるよう白い生命体“キュウべぇ”がこちらを見る。
「万が一って……? 仕事以外に大事なことなの? 営業時間を過ぎたらそれでも構わないわ。でも、それ以外は仕事に集中するべきじゃない?」
 なんで社長である巴マミに、一般社員扱いの私が講義しているんだろう……。頭がいたい。
「そうね。いろいろあるのよ。暁美さんにもそのうちわかる日が来ると思うわ。当然というか必然的にね、そのときはわたしのいったことが正しかったということがわかると思うわ」
わかりたくもないが適当に頷く。問題はそこじゃない。
「いいから、出てくれる。社長でしょ、それにご指名を受けている」
 きつい言葉とともにガンを飛ばす。
「仕方ないわね。キュウべぇ、お願いできるかしら?」
「お安いご用だよ」
キュウべぇが飛び上がると、電話が置かれた丸いテーブルへと着地する。そうして、受話器を右手で叩くとそれが舞い、うまい具合に巴マミの頭上へと飛んだ。
「さすがね、キュウべぇ」
 そういって、巴マミが掴み取ると受話器を耳にかけた。
「はぁ……」
 普通に取れないのかなこの人は。――曲芸。きっと、街道でやったらお金を貰えるんじゃないのかと毎回思う。
「……?」
 いつのまにか巴マミの目の前にあるテーブルへと戻っていたキュウべぇがこちらを見ていた。
「何でもない」
「はい……はい……」
 社長室に巴マミの受け答えする声が響き渡る。時より聞こえるのはグラビアやら、写真撮影やら、動画撮影といったこと。話を聞く限りではまた同じような仕事が来たのかと……。なら、私の仕事も変わりないものねと窓から空を見た。――もう完全に真っ暗。
「はい、わかりました。では、後日担当のものを送りますので。はい、失礼致します」
 一度髪の毛に触れると、
「今度あるグラビア撮影の話だったわ」
受話器をおいた巴マミがそういう。
「暁美さん代わりに行ってもらえるかしら?」
「――えっ?」
 説明を終えた巴マミが唐突に何かを言った気がする。とてもありえない言葉を。
「私が……行くの?」
 ありえないと思った。マイナスの私なんかよりよっぽど他の人を当てたほうがいいはずなのに。
「そう、暁美さんがよ」
 巴マミが笑いかける。私に行けと告げる。
「え、それは何かの冗談とかそういうものじゃなくて? 本当のことなの?」
「あら、そんなにわたしのことが信用出来ない? わたしはあなたに行って欲しいのよ。美樹さんでも佐倉さんでも鹿目さんでもなく、あなたに」
 巴マミが念を押すかのように一言一言大切に私へと伝えてくる。温かい気持ちをうっすらと感じる。私を信じて、私にチャンスをくれているんだと。
「わかったわ」
 そう返事を返すと、巴マミは詳しいスケジュールを説明しだした。
スポンサーサイト
関連記事
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...



この記事へのトラックバックURL

この記事にトラックバックする (FC2ブログユーザー)


この記事へのトラックバック

コミケ82で無料誌として、配ろうかなぁと思っているもののサンプル。でも、配るかまだ不明です。次回新刊用のサンプルは配布しようとは思っています。
まとめwoネタ速neo at 2012.07.10 01:28
この記事へのコメント


管理者にだけ表示を許可する
 




他ブログ情報

ブログパーツ