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R.U.K.A.R.I.R.I | 魔法少女まこと☆マギカ 2nd step
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2013.03.18
魔法少女まどか☆マギカのスピンオフ作品としての2nd step。

目が見えない少女が希望をえがくとき……とは。


2013/03/18 文言修正

-2nd step-

「あはは……そうなんだ!」
結局、何もわからなかった。あれがあの時だけだったのか、以前からあったのか誰も知らない。一体何のための拘束で、一体何のための警報なのか……。
お母さんに聞いても知らないって答えが返って、お父さんに聞いてもわからないって答えが返ってきた。
「それでさ……」
なら先生に直接聞けば……?
 でも……知ってそうな先生本人に聞くわけにはいかなくて。
知ってても教えてくれないだろうし、八方塞がりだというやつに陥ってた。
自分で調べられればいいんだけど、それは叶わないことだし。
他人に協力をお願いする形でも、私には困難。
私が聞いても教えてくれないことをお母さんたちにならってのは、あんまり考えられない。
重要なしかも重大な病気なら、私にも当然伝えてくれるはず、教えてくれると思う。
でもまぁ、私が子供だからって理由で教えてくれないことはあるかもしれないけど、私はもうじき高校生にもなるんだから違う。違うって言いたかった。
「そうそう……」
拘束されてたということに関して思い当たるのは――。
寝相が悪いとか動かれるとか、検査に悪影響が出る可能性があるからかもしれない。
そもそも、子供の頃なんてじっとただ待ってるのなんて苦痛でしかなかったはずだし……。されるなら、今よりも昔な気がする。
でも成長に連れて、だんだん検査を耐えれるようになった。
だから、拘束するってことがわからない。
少なくとも起きてた頃……、小さい頃にそんなことをされた記憶なんてない。忘れてるってことはないだろうとは思う。
子供の頃だし、忘れてる可能性がない訳じゃない。
けど数年前のことなんて早々に忘れるなんて思えない。赤ちゃんの時のことを覚えてるかって言われれば、たしかにそれは覚えていないけど。
でもそれとこれは話が別。赤ちゃんと小さい頃に限っていえば。
皆が私に嘘をついてるって思わないけれど、もし仮に隠し事をお互いに共有してるなら、確かめる手段がないからわからない。
そういうこと、つまり隠してることが共通の隠し事だったなら、お母さんたちに調べてもらっても、結局は無駄。はぐらかされるだけだと思う。
人が話す言葉が嘘なのか本当なのか。もしかしたら、顔を見ればわかるかもしれないと安直な考えが浮かんだけど、『それは表情を見てもわかるもんじゃない』って、ユタカが前に話してくれたような気がする。
それなら、私は声だけで嘘かどうか確かめるなんて、余計無理に思えた。だから、嘘か本当かわからない。
でも、例外はあるみたい。読心術? そういうやつで。聞いたところによると口元を見て判断したり、身振り手振りを注意深く見たりしてなんとか。
だから、最初から私には無理ってこと。
魔法でもあれば何かわかるかもしれない。でもそんな便利なものがあれば……、目が見えるようになる奇跡が起こるはずだよ。でも、そんなのはない。
――起こらない。
「はぁ……それでね――」
この疑問を解決するために頼みをお願いできる、解決方法を唯一聞ける人。そういう人が両親の他に信用できる人物が一人だけいた。
でも、結果的にいえばそれは無理なことだった。聞く前から聞いても無駄だってわかってる。
無理な理由はすごく簡単な理由で、今の私たちにはどうしようも出来ない壁だった。
――そういう壊せない壁が私とユタカの間にはある。
壊すことも出来ず、よじ登って超えることのできない壁が――。
だって、ユタカに相談するわけにはいかない。それはユタカと話すには第三者を絶対に通すから。いくら信頼できるっていっても、直接話せないなら、それはもう信用できないレベル対象。
ユタカが『イエス』と言っても、その第三者が『ノー』といっちゃえばお終い。聞く前からわかってる。知ってたとしても、知らないって答えられるのが。
――それは正直辛かった。
信じてる人がみんな知らないって答えることが。
違うかな、皆が嘘を付いてるんじゃないかって思ってしまうことが……かな。
そんなのはいや。だから、ユタカだけは私の仲間でいて欲しかった。
だから……聞かないことを選んだ。
「うん」
現に今こうして、私の問いに答えてくれてるのは吐息が激しい男。名前は忘れたけど、ユタカいわく『見た目が気持ち悪い人』らしい。気持ち悪い見た目って感覚が私にはわからないけど、きっと化物みたいな身体つきなのかもしれない。
確かに息遣いが耳に残って、耳障りがそのたびにするような気もする。今もこうして耳に入ってくるし。
当然だけど、その会話をした時は、仲介に入ってくれてたのは第三者でなくて、お母さんだった。
今はそれを担当してくれたお母さんはいない。なんだか先生と話したいことがあるみたいで、私はここに一人残されてた。
そこにちょうどというのか、通りかかったユタカが話しかけてくれてたのだった。
とはいっても、お母さんと同じように規定の回数分肩を叩いてくれたからわかったものの、そのまま隣に座られたら誰だかわからなかったかもしれない。
話しかけないで肩を叩いてくるのはユタカしか知らない。基本的に法律か何かわからないけど、私の身体を触る時や、何かの手伝いをしてくれる時は必ず声をかけるようになってるみたいだし。
だから、普通の人は声をかけてくる。声をかけないで触ってくるのは変質者や犯罪者だけ……だから、注意しなさいって言われたことがある。
そんな中――ユタカだけは特別だった。
現に今までユタカ以外に触られたことない。それにユタカはその後、手を繋いでくれるから余計に誰だか分かる。手の感触も温もりも確かにユタカのもの。
信頼できるものだった。
「……という感じでさ」
 今もこうして私の言葉に解釈してくれるかのように手を握り続けてくれる。ユタカの手の温もりと小ささが今の私には心地いい。
言葉が直接伝わらなくてもこうやって人を感じられて私は嬉しかった。
「あ、二人共ごめんな。ちょっと、俺ぇトイレ行ってくるからさ。すまぅね。すぐ戻るよ」
 話の腰を折るようにそう声をかけて、第三者役は足音をしっかりとたてながら歩いていったみたい。歩いた音が遠ざかっていく。
 ユタカの声が聞こえなくなるけど、構わず私は言葉を続けることにした。ユタカは黙って聞いてくれると思うから。
それにどう思ってるかなんて手をつないでる限り、多少ならわかるから。
「行っちゃったね。まぁ、私が話してたから続きを言うとね……」
 声を作りながらも、私は家でお父さんに病院のことを聞いた時のことを思い出していた。

 その事を思い出したのは理由があった。
病院の検査について、聞いた時のお父さんの声質がいつもとどこか違ったから、それに気になることも言ってたから。
 本当だったら、そのことについてもユタカに話せれば話したい。意見を何でもいいから貰いたい。
でも、私とユタカの間に誰かが入ってしまう問題を考えればどうしようもない。
あれは確かどうしようかなって考えながら、過ごしてた時期だった――。

「ほい……ほいっと」
 私はいつものように朝起きると手すりを使って、部屋の扉を開け洗面所で顔を洗ってた。着替えはどうしようかな、着替えるのめんどくさいし……、とそう思いつつ。
いつも同じ道だから、私の目の代わりとなる手すりは最近使っていなかったから。今日は久しぶりに触ったとも言える。まぁ、特にこれといって使った意味なんてない。
ただなんとなく今日は使いたかった。ただそれだけ。
身体が覚えてる場所ではある程度、手すりなしでも移動できるようにはなってたし、実際手すりを使わず移動していたりする。というよりよくやってる。
その度にお母さんはやめなさいってよく注意してくるけど。だからその代わりじゃないけど、白杖だけは手放したことない。私の生命の次に大切な白杖。
今もこうして私のすぐ近くに感じられるよう足元に立てかけてある。
近くに置き過ぎて動いた瞬間に何度も落としたことがあるので、お母さんからは『分かる位置に置けばいいのよ、何もすぐ隣に置かなくても……』って、呆れるように注意されたこともある。
 そうは言われても私にとってはなくちゃならないもだから、そうしたくなかった。
唯一小さい頃から使ってる私が理解できるものだから。それに白杖は仮に倒れてしまっても、怖いけど屈んで手探りで探し出せる。
第一に私が白状を手放す場所なんてほとんど決まってるようなものだから、安全だと思う。変な場所じゃ絶対手放さないし。
――思ってるだけで本当は何か危ないものが落ちてるかもしれない。
だけど、そんなことは私にとって白杖を失うことより危険じゃないって思ってる。
「ふぅ……!」
 顔を洗った私は、居間へ向かった。そこでいつものようにテレビの声でも聞こうって思ったから。
 だけど、入り口付近まで近づくと、その場所は先約がいるようで人の空気を感じた。お母さんかな? と思った時には声をかけられてた。
「真か? おはよう」
その声の主はお父さんだった。
いかにも眠たそうな声。現実に眠いのだろう。
お母さんが『お父さんは仕事の山場で眠る時間が少ないのよ』と言ってたような?
確かにお父さんの気配を最近感じてなかった。
最近はお母さんの気配しかこの家で感じてなかった。
「今日はお休みなの?」
そう言って、私は手探りでいつもの場所にあるテーブルに手をついた。そして椅子を引いて、腰掛けた。
手を伸ばせばいつもと同じようにその感触が私の右手を支配する。
――リモコン。
プラスチィックとゴムのくっついたような物体というもの。ユタカが言ってたけど、何でも世界中には何百種類ものリモコンがあって、それぞれ機能が違うらしい。
何でも今じゃぁリモコンで操作できるらしい。
そうは聞いてても――私はこの決まった位置にあるテレビのリモコンぐらいしか触ったことがない。
エアコンのリモコンを一度触ったことがあるけど、すっごく寒くなって困惑した覚えがある。リモコンに何かの文字が書かれてて、その気温通りに部屋が暖かくなったり寒くなったりするらしい。その説明を聞いた時、なるほどなぁって思った。
私はテレビのチャンネルを変えるようにリモコンの同じボタンを押し続けてたから、寒くなったのも理解できた。
それ以来、私は触れなくなったもとい私が触れない位置にお母さんが隠してしまうようになった。確かあの時お母さんの悲鳴を聞いた気がする。
「あぁ、とはいっても夜にはまた戻らないといけないからな。いわゆる午前休みってものさ」
お父さんの大体の位置がわかった。声の位置からしてきっとテレビの近くのソファー。
たぶん――お父さんの定位置。いつもそこから声が聞こえてくる。
「寝なくて大丈夫なの?」
 確かお父さんはパソコンを使って、何かの図面を書く仕事をしてるって聞いた気がする。仕事名は……なんだっけな。
「寝たら起きれない気がしてな、あとはそうだな。たまには真たちの顔を見ておきたいと思ったからさ」
 視線を感じる。とても暖かい――温もりに包まれる感覚がする。
「そっか」
 その視線は外を歩いてる時に感じるまるで非難してくるような視線と違って心地よかった。だから少しニヤついてしまう。
「なんか楽しいことでもあったか?」
「べっつにぃー、何もないよ。お父さんこそ何してる?」
「僕かい? あぁ、資料を見なおしているんだよ。とても大事なね」
「資料? 会社の?」
「まぁ、似たようなもんだよ」
「ふーん」
 資料か。どんなことが書いてあるんだろう。国語って授業は文字だけのものらしい。私は聞いてるだけなのでよくわからなかったけど、そういう色んなことが書いてあるのだとは思う。
「そういえばさ、お母さんにも聞いたんだけど……」
 お母さんに聞いたように、病院と目について確認しようと思った。
「うん? 病院のことかい?」
「そうだけど、どうしてわかったの?」
「いやさ、お母さんに相談されてな」
 相談……? 相談されるようなことなの? 
だって、病院で拘束されたり警戒音がなったりなんて病院の異常さのような気がするけど……?
「それなら話が早いね。お父さんは何か知らないの?」
お父さんが唸る声がする。もしかして考えてる……の?
「あれのことかな? いや、あれは違うか。ん? あ、あぁ、知らない。うん、知らない」
 言い直した声が明らかに裏返ってた。お父さんが吃るのなんて生まれてはじめて聞いたし。
「あれって、なんなの?」
「あれなんて言ったか? 気のせいだろ? そう気のせいだろ」
 近づいてくる床の軋む音とともに、コップがテーブルに置かれる音がした。
「父さん、ちょっと買い物があるからちょっと留守番頼むな。お母さんもそのうち帰ってくるから」
 その声とともに衣服の擦れる音が居間の入り口へ向かってくのが耳に入ってきた。
「えぇ!? ちょっと待ってよ」
 その行動は何か知ってて逃げ出すかのように思えて、居間を出ていったお父さんを追おうと立ち上がる私に、
「……サンプルは十分なはずだから、先生大丈夫なんだよな……」
 という声が玄関のある方から聞こえてきて、私はまた椅子に座り直して首を捻ることになった。
 ――サンプル……?
 玄関が閉まる音が一度だけすると、居間は静寂へと――変貌してた。

 サンプル、確かに玄関へ向かったお父さんがそうつぶやいてた。
あれは精神状態や肉体的疲労からの何気ないつぶやきだったのかもしれない。
あの後は確か私は居間で寝ちゃってお母さんに起こされて、回答が結局ナニも得られなかった。それでこうしてる。
「またね、ユタカ!」
結局、トイレに行った先生は帰って来なかった。
お母さんが戻ってくる方が早かった。それでユタカとの会話はお開きになった。

「ふぅー、ご馳走様でした」
 食後のジュースはやっぱり美味しいなって、考えてた私に、
「今度の休みに、……旅行に行こうと思うんだけど」
 久々の家族三人での夕食。
それが済んだ頃を見計うかのように――、お母さんがうれしそうな声をもらした。
「旅行……?」
 ジュースの甘い感覚に支配ながら、私はその言葉を確かめるよう復唱する。久々に聞いた気がする。――旅行って言葉を。
「そうそう、お母さんたちしばらく行っていなかったからね。それにお父さんの仕事も一区切りついて落ち着いたことだし、ぼちぼちねぇって。真も今度は一緒に行かない?」
 旅行かぁ、確かに最近お母さんたち行ってなかったなぁ。お父さんの仕事が忙しかったのもあるんだろうけど。旅行かぁ。
「うーん」
 考える素振りを、指を眉毛に当てて演じてそれっぽい声を出す。その質問の回答は考えるまでもなく決まってた。
 いつも同じことを言う私だから、お母さんたちも本当は期待してないだろうし。だからなのか、今まで感じてた暖かい視線が崩れ、居心地が悪くなるような悲しい視線を感じ始めてた。
 その視線は耐え切れないので、
「私は……いいや!」
 と精一杯の明るい声で答えた。顔は出来るだけ笑うよう意識して――。
 旅行となれば、それこそ知らない土地を歩くことになる。それは新しい刺激を得られるから、出来るだけ体験した方がいいって先生が言ってくれたこともあるけど……、私はそうだとは思わない。
 だって刺激ってやっぱ悪いこともあるから、というかそっちの方が多い気がする。
私が住んでる都市部はバリアフリー化が進んでて、どこにいっても段差がほぼなくて至るところに点字や音声案内がある。
旅行に行ってしまえば、そういうものがない可能性がある。というかたぶんない。行ったことがないから確かなことはわからないけど。
 そういうこともあって、幼い頃にバリアフリー化が進んでるここの街に引っ越してきたという話だし。病院の技術も最先端が進んでて、私の目が治る可能性が最も高い場所でもあるって聞いた。
「知らない場所はやっぱり怖いし、できることなら家にいたい」
 それは引きこもりたいという意思表示なのかもしれない。だけど、外が怖いのは本当のこと。
何かを隠してるかもしれないから怖くなった病院を除けば、安心していられる場所はここ――、自分が住んでる家だけしかない。
 お母さんたちは旅行するのが趣味だった。それは私が生まれてからも結構な間隔で行ってた記憶があった。
「真がそういうなら“仕方ないね”。うん、仕方がない」
 仕方ない。そうなのだろう。私は今まで両親の旅行についてったことがない。いつも居残りで家に残ってた。
そうすると幼い頃は親戚の人が私の世話をする感じ。さすがにもっと幼い……、本当に小さい頃は何度も連れて行ったみたい。
物心つき始めた頃、小学四年生くらいかそれくらいの頃から私は自分の意志で行かないって告げた。当然、お母さんたちはすっごく反対したけど最終的に折れてくれた。
だから、私はあれ以来付いていってない。
お母さんたちもお母さんたちで、諦めることなく何度も誘ってくれているけど、私の答えはいつも――行かないだった。
「仕方ないよね」
 お父さんに便乗するかのごとくその言葉を借りる。
 修学旅行というのもそういえば学校行事であったみたいだけど、結局それすら行っていない。
まぁ、学校行ってない人間が旅行だけ付いてくるってのは、何かが変な気がする。
 今は昔に比べてある程度のことができる。家具の置き場所や電子レンジ(音声入力ができる)だって、わかるから簡単な料理? みたいなことはできる。
だからこそ、親戚の人が来ることがここ数年なくなってきてた。
「そうか、そうだね」
 お母さんの残念な感じな声のトーンが聞こえる。
「まぁ、それがいいかもな!」
 私以上に明るい元気な声ではっきりとお父さんがそう言った。
ついてこないのが嬉しいの? それとも暗い雰囲気へ変わりつつあった空気を少しでも変えようって言ったのかな? もしかして自分に言い聞かせるために言ったの?
 どういう考えを持って言ったのかわからないけど何か少し疑問に思った。
「うん」
その私を優しい視線が先ほどと同じように飛んでくるのを感じて、考えるのをやめた。
 その後の空気は活気がないものだった。病院で感じる何か暗い空気が部屋の中を充満させてるようですごく息苦しかった。
 特にお父さんからの――、視線が……。

 それから数日が経ち、その出発の期日となった。
 それを見送るために、玄関前に置いてある私専用の椅子に座ると、外履きを履こうとしてる擦れる音を聞いていた。
そして、玄関が開く音がして、
「いってらっしゃい!」
 と出来るだけ明るい声で言った。
だって、やっぱり一人っきりは寂しいし、不安になる。行って欲しくないけど、ついて行きたくもない。だから何も言えなかった。
「行ってきます。病院にはきちんと行くのよ? お母さんたちいなくても、きちんと出来るわよね?」
「大丈夫だよ、お母さん心配しなくても。私もう15歳だよ」
「そうだったわね。なら、もう安心よね」
「あぁ、そうだな。じゃぁ、行ってくるから留守を頼むぞ」
「うん、行ってらっしゃい!」
 玄関が閉まる音ともに優しい視線が遮断され、お父さんとお母さんは駅へと向かったのだと感じ、居間に戻ってテレビの声を聞くことにした。
「うーん」
 お父さんがなぜ嬉しそうな声であの夕食の時「それがいいかも」って言ったのが気になりながらも、私は居間の扉を閉めた。
そして、いつのもの席へと座って、テレビのリモコンを取ろうと手を伸ばす。
「どうしようか」
 適当なチャンネルに合わせると、『久々に一人の時間が取れるのかぁ』と考え始めてた。
「うーん」
そうして、何も答えが出ないまま、しばらくして私に強い睡魔が襲うと、いつの間にか眠ってた。

「ん……、寝ちゃってたのか……」
 テーブルに置いてある時計のスイッチを押すと『午後4時です』と時を告げた。
「上でラジオでも聞こうかな」
 そう思って、居間から廊下へと出た瞬間足元に違和感を覚えた。
「あれ……何か……濡れて……る?」
 なんだろうとしゃがむと居間と廊下の境目の周辺に、何かが零れたような水の感触があった。ねっとりとしておらず、水に近いような感触。
いいや、後で拭こう。
 そう思って、濡れるのにも気を止めずそのまま私の部屋へと向かった。
どうせ、私しかこの家にはいないのだから――。
私の足元で、水音だけが響き渡った。
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