[PR] 一戸建て
R.U.K.A.R.I.R.I | 聖なる一日、そんな日がいつか
About Circle Board Twitter Link Circle work Mail RSS facebook google+    同人サークル『R.U.K.A.R.I.R.I』のHPです。
ブログ内人気記事

他ブログ及び本ブログ最新記事


2011.12.25
クリスマス用に書いてみましたが、クリスマスに関係無いような。そんな感じの内容となりました。



 ――それは、雪が降り始めた冬の空の出来事であった。

 鹿目家の前にできた雪道を親子連れが仲良さそうに歩いて行く。私はそれを見ながら耳をすましていた。
「タツヤは何が欲しいんだ?」
「うーん、うーんとね! うーん、オモチャ! おっきくて、ピカピカしてるの!」
 無邪な気な声の主は鹿目タツヤ、まどかの弟。
「そうか、そうか! うんうん、なるほどね……。じゃぁ、まどかは何か欲しいものあるかい? 洋服とかアクセサリーかい?」
 そして、質問しているのはおそらくまどかの父親だろう。
「うーん、そうだなぁ。うーん、考えてみる」
 まどかの声には特徴があり、誰としゃべっていても私にはわかる自信がある。だから、この声はまどかその本人だろう。何度も何度も聞いた優しく私を包み込んでくれる声。
 そのまどかを私は救うのだ。
(救う……、何から……?)
 思い出せない。でも、思い出せないことというのは確か重要ではないと聞いた気がする。だから、きっと小さいことなのだろう。それかもう終ってしまったのかもしれない。
 ――きっとそうだ。
「クリスマスまで時間がないから早めにね。ママのプレゼントはもう決めたんだ。これなんだけど、どう思う、まどか」
 紙のスレる音がする。おそらく何かの雑誌か何かを渡したのだろう。確か、前に父親を見かけた時何かの女性雑誌を真剣な顔をしながら本屋にいたのを思い出した。名前は忘れたけどそのときの本だと思う。さすがに映像まではわからないから、合っているか判断できない。
「うーん、すごくいいと思う! パパよくこんなの見つけたね!」
 まどかの笑みが思い浮かぶ。
「それはパパだからね」
「ははは」
 鹿目家の屋根でくつろいでいる私にそんな声が聞こえる。――家族団らんというのであろう。
まどかの母親はおそらく仕事のため、留守にしているのだろう。まどかにいつも忙しいそうにしているんだと聞いたことがある。まどかにとって、母親は良い意味でキャリアウーマンとしての目標値なのかもしれない。
「ふふ」
そう考えたら不思議と笑ってしまった。まだ、私はそういうふうに考えることができるのだと。
まどかを救う。
ただ、それだけを願って魔法少女になった私が、家族ということを考えるときがくるなんてね。
「私もママに何か用意しなきゃ、タツヤにもね!」
「姉ちゃ! 姉ちゃ!」
魔法少女だからこそ聞き取れると言ってもいいかもしれない。楽しいひとときという家族のふれあいを。
仮にそうでなければ、こんなところに座ることも寒さを耐える防寒具が必要である。
 ――今の私は魔法少女。そんなものは必要ない。あるのはこのソウルジェムという魔力の源、そしてすこしばかりの魔法の力。
「……クリスマスか」
 去年の私は何をやっていただろうか。
「……はぁ」
 吐く息はとても白く、ここにいるのだと実感させる。
「あっ!」
その息で思い出した。
そうだった――、私は病弱だったんだ。動くことすらたいへんで、学校にすらいけない状態だった。病院にいることなんて、思い出すことなんてないと思っていた。そんな私はクリスマスの日はベッドの上で一人死んでいるように眠っていた。彼女に会うまできっと私は生きていなかった。死んでいた。
 病院での確かな記憶がないのはきっと、変われたからだろう。思い出に蓋をするのではなく、そういう日々もあったんだと思えるようになったのは。
以前の私であれば、絶望に包まれ『どうして、私なんかが……』と深い念に囚われてしまう。人前に出るのが怖かった、人としゃべるのが怖かった。何もかもが怖かった。
だからこそ、彼女のような明るい人になりたかった。あの人のように強くなりたかった。
 変われたのは、まどかのおかげ。――鹿目まどか。
『えー? そんなことないよ。何かさ、燃え上がれーって感じでカッコいいと思うなぁ』
 暁美ほむらという自分の名前をそう考えたことなんてなかった。ほむらなんて名前は、私には不適切。そんなに強い意志を持っていない。
だけど、
『うん? そんなのもったいないよ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ』
 そうやって、まどかは私の名前を褒めてくれた。
だけど、だけどそれが私へのプレッシャーになって、私はアレに巻き込まれる形になった。
『無理だよ……私、何にもできない。人に迷惑ばっかり掛けて、恥かいて。どうしてなの……? 私、これからも、ずっとこのままなの?』
 と、私は死にたくなった。この世界にいたくないと思った。私って一体なんなのだろう。
そう考えていたら、その願いを叶えてくれる化物の世界に私は誘われるよう踏み入れていた。
 私が誘われたのは、魔女による不幸への誘い。私の絶望が魔女の元へと連れていった。――魔女の口づけ、それが私についていたのを知ったのはまどかに話を聞いてからだった。
その魔女から救ってくれたのが、巴マミと憧れを抱いた鹿目まどか。その人であった。
そのことによって、結果的に私は鹿目まどかの秘密を知ることになった。そのときの彼女は心強くてかっこいいと思った。恐怖心を持ちながらあんな化物に立ち向かっていくなんてと。
まどかに出会えたことが第一の理由とするならば、それが私が変われた二番目の理由かもしれない。
しかし、まどかはワルプルギスの夜の前に敗れ去った。巴マミの後を追うかのように。
だから、私はまどかを救うために魔法少女になった。
「あれ……?」
 さっきも同じ人が鹿目家の前を通り過ぎたような気がする……。それにさっきは思い出せなかったのに……? そう私はワルプルギスの夜から超えた未来に行くために戦っていたのだ。
 そんな大事なことを忘れていたのはなぜ……?
「いたっ」
 それの考えを否定するよう頭痛がした。
世界が一瞬回ったかのような錯覚までする。目をつぶって落ち着かせると、さっき見えた親子連れの姿はどこにもなかった。
「気のせいね」
 魔法少女の私が見間違えるわけがない。
 さて、私も準備をしなくては……。
 そう思いながら、私は鹿目家を後にした。長いこと座っていたせいか、私の座っていた部分にだけ雪が積もっていなかった。

☓ ☓ ☓

 まどかにクリスマスパーティーに来ない? と誘われたのでクリスマスプレゼントを探しにデパートまで足を運んでみた。誘われるまでもなく、まどかにはクリスマスプレゼントを渡すつもりでいたのでどうやって渡そうかと考える手間がこれでなくなった。とはいっても、本当であれば二人だけでパーティーがしたいとも思う。余分な人はいらない。けど、まどかがそれを望むならば仕方ないと割り切ることにした。
次がきっとあると思うから。
相変わらず、ここは混んでいてカップルやら女子学生やら、家族連れが多くいる。クリスマス前なのだから仕方ないといえば、仕方ないのかもしれない。親子連れは子供のプレゼント、カップルたちはお互いの欲しいものを探るような観察デート、女子学生はいつものこと。私もその中の一人かと思うと、少し笑ってしまった。
外見上では同じ人間か……。周りの人から見ればそうかもしれない。だけど、そうじゃない。私は魔法少女、もう人間ですらない。怪物のようなもの。
と考えを改めとりあえず、まどかに似合いそうな服を検討しようと衣服店に入ると、
「あら、杏子何してる……の?」
 予想外の人物を予想外の場所で発見した。杏子以外の女性客もいるようで……、とはいっても大半は学生服を来た女子学生。私も学校帰りであったため学生服、対して杏子は私服姿であった。――杏子は学校を休んで……。
(うっ!)
 一瞬頭痛を感じた。この前と同じ痛みだった。違和感があるが
「げっ! ほ、ほむら! なんでこんな所にいるんだよ!」
 杏子の目が泳ぎだして変な声を出すものだから、忘れてしまうことにした。時計を見たり、他の客を見たりと杏子の目は面白い動きをしていた。
「こんなところって……、いや、別にここは衣服店よ。それも、お お が たのね」
 語尾を強調するかのように大きな声でいった。
「わっ、わっ、わ! 大きな声で言うなよ! ア、アタ、タシはな」
 杏子は何かを隠そうと両腕を上下に振る。怪しいと思った時にはその場所へと近づいていた。それも堂々と杏子に見せるようあえて大きく進む。
「な、なんだよ? お前、あっち見てればいいだろ? こっちはさ……! あたしが見ててやるからさ」
 その私を見て、思った予想通りの動きをする杏子に一瞬だけ笑みをこぼすと
「別に私がどこをいつみてもいいのでわ? そういうお店でしょ。あなたも知ってるとは思うけど……ほら」
 一瞬だけ、他の客を見るようにして杏子の視界をずらして杏子の肩に手を置く。
「えっ」
 そして、とびっきりの笑顔をしたと思うと
「あっ! あー」
 金切り声をあげる杏子をどけた。
『全く他の客に迷惑だわ』とつぶやくと、杏子によって隠されていた衣装があらわになった。
――それは綺麗に装飾された白いワンピース姿。純白の衣装であった。それに一瞬だけ心が引かれると思った。
なるほどなぁと。
まどかもこういう服をきたら、きっと聖女のように可愛いだろうなと思わず笑みがこぼれそうになるのを我慢すると
「ふーん」
 杏子と交互にそれを比較するように見た。
「はぁ……どうせ、似合わねぇとか思ったんだよな。わかってる、わかってるよ! いえよ、はやくいえよ! もったいぶらず言いやがれ!」
 目を閉じると杏子は悲しそうにため息をはいた。そんなことはないと思う。元々杏子は教会の人間だ。
 こういう清楚な服装の方が普段のボーイッシュなものよりかはあうのではないかと思う。あくまでも私の主観での話なので、他の人がどう思うかはわからない。が、美樹さやかぐらいならいいと言ってくれるんじゃないだろうか。
 そう、教会の人間のはずだ……。だから、何かがおかしいと感じるのだけど依然として何かを思い出そうとすると頭痛がした。
「……別にそうは思わないわ。十分似合うんじゃないの? こうしたら、余計に……」
 そういって、目を開けようとしていた杏子の背後を取ると髪を縛っていたリボンを解いた。
「あ、ばか! やめろよ!」
 杏子はそれを隠すように陳列されていた服を一瞬にして髪の上にのせる。顔は少し赤みを帯びていた。
「隠すくらいなら、こなきゃよかったのに」
 見下した目で杏子を睨みつける。
「うっせぇ! はぁ……はぁ。いいだろう、別に何でも……だってさ、さやかがさぁ」
 杏子が愚痴をこぼすかのように語尾が小さくなっていくのを感じた。だから煽るように
「どうせ、美樹さやかにでも誘われたんでしょ。クリスマス、お前暇だろ? あたしとパーティーしようよ……みたいな」
 と微笑んだ。
「うっ……!」
 その一言で杏子の赤みかかった顔は、茹で上がったカニのように全身真っ赤に染まりあげた。
「まぁ、あなたは話を聞いていないとは思うけど、そこには巴マミ、まどか、あたしがいるから、美樹さやかに勝手なことはできないわよ」
「し、しねぇよ! 誰がそんなことすんだよ! アタシがか? え、アタシがさやかを……!」
「ほら、買いましょ。きっと、美樹さやかも喜ぶわ……」
 湯気が出そうなくらい赤くなった杏子の耳元で何度も囁くと
「さやかが、喜ぶなら……仕方ねぇな。あいつのためじゃないんだからな! 別にアタシが欲しいから買うわけだぞ! あいつに言うなよ!」
 と突如としてガッツポーズした杏子はワンピースを手にしてレジへと向かった。
 見せるなら、何も変わらないじゃないと言わないでおいた。どうせ、見せる当日もこんな感じでまともにさやかと会話をしないそう予測した。
 杏子のことはおいておいて、自分の買い物をしようと店を後にした。

☓ ☓ ☓

 クリスマスパーティーの場所は、巴マミの部屋であった。当然といえば当然かも知れない。いつもお茶会をここでしていることだし、さやかの部屋、まどかの部屋はちょっとものが多すぎてパーティー向きじゃない。
 まぁ、私の部屋は論外。逆に何も置いてないのが不向き。
 だから、それをこうして、杏子を先導するように前を歩いていた。
「遅いわ。なんでそこまでこそこそするのかしら?」
「うっせー!」
 遠くの方から声がする。おそらく電信柱の後ろにでも隠れているのだろう。そもそも、防寒具に包まれているのだから普通の人は何も感じないだろう。
 白いワンピースの上から暖かそうなコートを羽織っている。足元まで長いコートだ。パッと見だと、コートしか見えない。というか、私にはそうとしか見えないのだから、他の人もきっとそうだろう。だから、こうやってこそこそする必要性はどこにもないと言っているのにもかかわらず、こうして何十分もここまで来るのにかかった。
「早く来なさい。どうせ皆に見られるのだから」
 来てきた以上、それは事実。
杏子に対して私はパーティー用の衣装が特に決まらなかったので、魔法少女の服装にした。パーティー向きなのかは置いておいて、動きやすく尚且つオシャレだと私は思っている。だからこその、私だけの服なのだから。
 でも、一つだけ気になったのは杏子が私の『魔法少女服を見たことがない』ってことだ。『洒落てるな』と、一言言われただけだ。杏子が魔法少女じゃない世界なのだろうか?
 それとも……、頭痛が来る前に考えを改めた。考えていても仕方ない。
 歩みを止めて、後ろを振り返ると
「わ、わかってるよ! 行けばいんだろいけば!」
 まだ、後ろの方からノタノタとゆっくり歩いている杏子が目に入った。
 巴マミのマンションまで後数分ってところで何をしているのだろうと思う。まどかに早く会いたいってのもあるが、はやくこの杏子の姿を皆に見せたいとも思っている。
 空を見ると、こないだと同じように雪が降っていた。ホワイトクリスマスというやつであろう。
「ふふふ」
「なんで、笑うんだよ」
 いつの間にか走ってきて近くにいた杏子がそうぼやいた。
「別にあなたのことを笑ったわけじゃないわ」
「じゃぁ、なんだよ」
「こうやって、笑って過ごせる日がくるなんてって、思っただけよ」
「ははは、ばっかじゃねーの。お前詩人かよ。人間好きなときに好きなことすればいいんだよ」
 笑った杏子は手袋をした手で、私の肩を叩いた。少しイラッとしたので、
「へぇ、じゃぁコート脱いでいく?」
 と笑い返した。
「い、いやいやいやいやいやいやいや! 寒いだろ!」
 杏子が手を激しく左右に振った。顔に焦りが見える。
「寒いだけなのかしら? なら、いいじゃない。もう何十分も歩いていきたのだし、身体も温まってきたでしょう?」
 付き合ってきたんだからそれくらいは、と思ってしまう。
「おい、嫌味か、嫌味なのかよ」
 横目で寂しそうな表情を見せる。
「大丈夫そうだから、先行くわ」
 私の後ろを慌てて走ってきた。

☓ ☓ ☓

そうして、巴マミの部屋にはいる前にコートを奪うと急に大人しくなった杏子が顔を赤くしながら部屋に入っていった。
 杏子のワンピース姿は好評でみんな評価していた。
 ただ一点だけ、疑問に思ったことは杏子のときもそうだったが、私の魔法少女服を誰も知らなかった。そういえば、キュゥベぇに会った記憶がない……。
それに足りない何かを考えると頭痛がする。これはまさかそういうことなのだろうか。
「ん? どうかしたのほむら? 顔がひきつってるけど?」
 正面に座っている美樹さやかがじろじろとこちらを見る。
「えぇ、なんでもないわ美樹さやか」
「おいおい、フルネーム読みかよ。いつもみたいにさやかでいいよ。いや、さやかさんでもいいよ」
 美樹さやかがそういって、笑みをこぼす。
 ――おかしい。何かがおかしい。私がおかしいと感じてることがおかしいのか……? 
美樹さやかは私のことをほむらって呼ばないし、私も美樹さやかをさやかって呼んだりしない。何がおかしいのかを確かめるよう魔法でリボルバーをみんなから見えないところで召喚した。
頭にあるこの違和感が真実であれば、こうする以外にないであろう。
それは私にとって苦痛以外のなにものではないが、こういう手段をとるやつのことを知っている。
――魔女だ。
「ほむらちゃんは何もいらないの?」
 まどかが笑いながらいう。
「それはね……」
答えるより先に引き金を引いた。それと同時に私の声は書き消された。銃声音という単発的かつ短絡的な音によって。
「ほ、ほむらちゃん? い、痛いよ」
まどかが苦痛の表情と戸惑いの表情を浮かべる。この表情を何度見たことだろうか、これを見るたびに私の心が砕けにそうになる。だけど、続けるしかなかった。私の撃った銃弾はまどかの右肩を貫いていた。まどかはそこから流れる血を止めるべく手で押さえようとしている。――躊躇することは許されない。
それと同時に一瞬だけノイズのようなものが視界を遮った気がする。――それは確信を実感する変化だと思う。
「お、おいお前やめろよ!」
杏子が私の動きを止めるべく右手を押さえようとするが構わず、杏子を撃った。それも確実に動きを止めるため頭を狙った。
視界がぶれた。テレビの砂嵐をみるように画面が切り替わっていくのを感じる。
その視界が元に戻ると、当然のように杏子は倒れて血が川のように流れ始め、身体は痙攣を始めていた。おそらく、生きてはいないだろう。――この世界での佐倉杏子は。
「ば、ばかやろう! なんで、撃つんだよ!」
美樹さやかが席をたち、こちらに歩いてこようとしたので足を狙い、トリガーをためらいもなくひいた。私の視界がノイズのようなものが一瞬また先ほどと同じように走った。
やっぱり、そうなのかと。
「い、いた!」
撃たれた場所を抑え込みながらうずくまっている美樹さやか。彼女も杏子と同じで魔法少女ではないのであろう。だからこそ、痛みを軽減することも癒しの力で回復することもできないだろう。
席を立った私は周りを確認するよう見つめ直した。
まどかは肩の痛みに耐え、さやかも足の痛みに耐え、杏子は死んだ。巴マミは恐怖のあまりか気絶しているようだった。
ノイズが一層強くなった。視界がぶれ始めている。――これがおそらく正解なのだろう。
「まどか、ごめんね。悪くなかったよ、こうしてみんなと楽しくクリスマスパーティーが出来て。私は、私はね、身体が弱かった。何も出来ないくらい。だから、こんなパーティーに呼ばれることすらなかった」
 見下すようまどかのようなものに話す。
 もうわかっていた。これはまどかじゃない何かなんだってことが。
「じゃあどうして、こんなことするの? みんな殺しちゃって、ほむらちゃんは殺人者になりたかったの?」
 まどかのようなものは真剣な顔を私にする。私が好きだったあの娘と同じ顔を向ける。
「ううん。違うよ、私がなりたかったのはたったひとつ。正義の味方、それもただ一人を救うだけの」
 そう鹿目まどか。ここじゃない、ほんとうの世界の。
「そう……なの?」
「だから、それまでお休みなさい。偽者さん」
 リボルバーを押し付けるようにしてまどかの頭をリボルバーの弾で貫いた。

☓ ☓ ☓

 何語にも言えない魔女の雄叫びが聞こえる。苦しみながら叫び声を上げているようであった。
 頭痛もノイズももう何も感じない。
 ――ここが本当の私の戦場。
「これがあなたの望みなの……インキュベーター」
 崩壊していく魔女の結界の外に赤い目が2つ光っている。その後ろで魔女が紙切れのようにぐずれていった。
「どうかな。ボクは魔法少女が魔女を倒すのを見届けるだけだよ。どちらが倒れたとしてもボクにとっては何も問題ない。君たち人間が滅んだとしてもね」
 無表情をこちらに向ける。敵意も何もない。
「これが、幻惑の魔女……。佐倉杏子の絶望だということなの?」
 周辺にはもう結界はなく、さきほどまで一緒にいた人物は誰もいない。そう誰も、もう残っていない。
「もうこの世界にはワルプルギスの夜を止める存在はただ一人もいない。暁美ほむら、君が何かをしようとしてもあれには勝つことすらできない。生き残ることすらできないだろう。ただ、一つ可能性があったまどかはこのざまだからね」
 まどか……。かつて、鹿目まどかと呼ばれた人物がインキュベーターの目の前にぐったりと倒れていた。おそらく死んでいる。
「まどか……」
 きっと、私と同じように幻惑の力にかかり、その力に耐え切れず殺されてしまったのだろう。
「幻惑の魔法がいかに強力なのかがわかったものだね。ということは鹿目まどか。彼女が魔女になったとき、この世界はおそらく一瞬にして滅びる定めになるだろうね」
 そう言うキュゥベぇの足元には、佐倉杏子が眠るよう倒れていた。美樹さやかと抱き合うようにして。
「あなたたちはまどかを欲しがっていたじゃない。助けようとはしなかったの?」
 怒りを向けても無駄とわかっていても、声を出す以外に気持ちを抑えきれなかった。
「もちろんしたよ。でもね、それ以上に幻惑の力が上だったんだ。対処はできたよ、それはまどかじゃなくて君の方だったけどね。暁美ほむら」
「なっ!?」
 まさかとは、思っていた。疑うことをしなかったわけじゃない。
 だけど、それは最悪としかいえなかった。
「前兆はあったろう? あれが最低限ボクたちに出来たことさ」
「ふふ、あはははははは」
 笑うしかなかった。笑うしか……。

 私はそういって、この世界と別れた。

 ――クリスマスなんて、いつ私にくるのだろうか
スポンサーサイト
関連記事
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...



この記事へのトラックバックURL

この記事にトラックバックする (FC2ブログユーザー)


この記事へのトラックバック
この記事へのコメント


管理者にだけ表示を許可する
 




他ブログ情報

ブログパーツ